• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2016年11月19日

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その11)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第2章 ミッドシップの特長と狙い】


3.ミッドシップの特長

(つづき)

 次の特長は、ボディ・デザインの自由度が高いことだろう。
ノーズからシート後方へとエンジンを移したミッドシップでは、ノーズのデザインが比較的自由だ。
しかし、荷室、スペア・タイヤ、ラジエターといったノーズ形状を制約するものはあるわけで、ミッドシップだからといってノーズ形状を全く自由にデザインできるわけではない。
この点に関してもミッドシップのデザインは、FFやFRに比べて洗練されていないともいえる。

 ノーズ・デザインは空力特性にも大きく影響する。
デザインの自由度が高いミッドシップでは、空力特性に関しても設計の自由度が高いわけである。
例えばグループCカー(レーシングスポーツカー)のような極端に低いノーズを採用することも不可能ではない。
これとフロアーの整流を組み合わせることでダウンフォースを得ることも可能だろう。
ミッドシップではその性格上ハイパワー・エンジンが搭載されることが多いわけだが、それは最高速の向上に直結するので、優れた空力特性が求められる。
その際、空力特性を比較的自由に設計できるメリットは大きい。


 一方、居住性は犠牲にされやすい。

 まず車室の広さであるが、これはFF・FRに比べてかなり狭くなる。
完全な2シーターとして前席を徹底的に改良するか、汎用性を求めて2by2とするか、判断に迷うところだ。

 次に視界であるが、シートが前進しノーズが低くなるとFFやFRとは異質の視界が得られる。
目から入る情報はクルマの性格を決めるものとして重要だ。
情報の入り方が異なるミッドシップでは、それだけでレーシングカーに近いフィーリングを味わえる。
これは、ミッドシップの質感や付加価値を考える上で大切な項目である。
理想論を言えば、シート、ダッシュ、メーター、フロント・ウインド等は運転という仕事を最優先したものであってほしい。
いたずらにミッドシップらしさを求めたデザインは好ましくない。
前進したシートは、足とタイヤ・ハウスの干渉という問題を持ち出してしまう。ある程度のトレッドの広さは必要になるだろう。

 音や振動の問題は、ミッドシップだからといって特別ではない。
FF・FRで培われた技術で充分に防げる。
ミッドシップといえども、騒音や振動が大きくてもかまわないという時代はすでに終わっている。

 それは乗心地というもうひとつの居住性についてもいえるだろう。
いずれにしてもミッドシップの居住性の向上は今後の大きな課題だ。

 経済性はどうだろうか。

 2シーターのコンパクトなミッドシップは、都市交通の混雑の解消に役に立つ、軽量であれば燃費も良く省エネルギーになるという、新しいミッドシップの見方も成り立つだろう。
クルマの乗車率は2名をおそらく超えていないだろうから、2シーターというコンセプトには、現代という時代に合った面もある。
それはミッドシップの本来的な進み方とは異なるかもしれない。

 しかし、時代とともに変化するクルマは、経済性からミッドシップに移行しないとはいえないだろう。
ミッドシップに経済性が求められるならば、ライトウェイトなミッドシップはそれに応えられるポテンシャルを持っている。
あるいは比較論でいえば、中型のスポーツカーとしても、クルマ全体のバランスや空力特性から、FRのスポーツカーに比べて経済性が悪いとはいえず、むしろ向上できる可能性を持っているという見方も可能だ。
スポーツカーにも現在以上に経済性が求められるようになれば、ミッドシップの存在価値はさらに高まるだろう。

 付加価値も大切な要素だ。
付加価値が高いということもミッドシップの特長として見逃せない。
性能には直接関係しないが、将来的な展開を考えるとき、ミッドシップの付加価値の高さは重要になってくる。
物の価値は複雑な要素が絡み合って決まる。
例えば希少性や性能の高さも価値になる。
ミッドシップではこれらに加えて、実用性を犠牲にするという贅沢さや無駄さが大きな価値となっていることにも注目したい。

 自動車産業が廉価なクルマを大量生産することで成り立つ一方で、将来的にはこれに付加価値の高いクルマの生産も重要な経営上の戦略となると考えられるからだ。

ブログ一覧 | 書籍 | 日記
Posted at 2016/11/19 21:25:10

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

マイジャグV爆裂
花樹海さん

本日のプチキリ番&ミラー番♬
ブクチャンさん

2025.08.20 今日のポタ& ...
osatan2000さん

以前から起きていた謎の漏電現象を解 ...
エイジングさん

セレナでミラー番 ゲット❗️
こみかれさん

アマビエもいいけど 日本は、疫病・ ...
kz0901さん

この記事へのコメント

コメントはありません。

プロフィール

「@サカビー 短い間でしたが、都田オフミ楽しかったです。またいつかどこかでご縁があれば♪」
何シテル?   07/13 13:10
メカニズム解説とか、技術的な話題が大好きです。 ホンダ ビート(若葉色メタリック)はボデーがコチンコチンで脚は柔らかめで峠寄りの街乗り仕様です。 ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

リンク・クリップ

[引越し前の作業]フロントブレーキ更新 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/06/19 12:33:09
カウルトップシール代替品交換作業 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2023/07/03 15:14:09
ホンダ純正 ラジエーターキャップカバー 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2023/05/22 20:47:07

愛車一覧

ホンダ ビート 若葉メタびぃ (ホンダ ビート)
ボデー色は、ホンダ他車種設定カラーであるリーフグリーンメタリック(GY21M)です。 ...
ホンダ フリード ふりーど (ホンダ フリード)
家族車ですが、納車整備にて フロントロアアームバー  ・CUSCO 386 475 A ...
ビモータ bb1  supermono ビービーワン (ビモータ bb1 supermono)
なぜか、2台目のビモータ BB1 BIPOST(二人乗り)です。 1台目は、納車2週 ...
ホンダ モンキーR フルカウル赤婆茶猿 (ホンダ モンキーR)
壱号機の変身後 (2024/10/28更新) デイトナ製 バーチャル・ステア・モンキー ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation