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2017年01月02日

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その19)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】


2.重量配分による違い

 重量配分は、クルマのステア特性に大きく影響する。
前後のタイヤ性能が同じで等しいスリップアングルであるとすると、コーナリング中のクルマの力のバランスは次のようになる。


①フロント・ヘビーの場合
 ホイールベースの中心よりも重心点が前にある場合では、重心点まわりの力(モーメント)は、クルマをコーナー外側に向けるように働く。
したがってアンダーステアとなる。
ドライバーはこのようなクルマの動きを知ると、ステアリングをさらに切り込むことで一定半径の旋回を保とうとする。
コーナリング限界より手前のコーナリング・スピードであると、フロント・タイヤのスリップアングルが大きくなる。
旋回半径が同一であっても、この状態はアンダーステアだ。
アンダーステアの度合は、重心点が前にあるほど強い。

 重心点が前寄りであると前後の重量配分は前で重くなる。
一般的なFR車ではその割合は前60%、後40%だ。これに対してFF車では前64%、後36%程度である。
FRに比べて重量配分が前寄り、つまりフロント・ヘビーのFFはアンダーステアが強いことになる。
4%の差というとわずかの違いのようであるが、ステア特性に及ぼす重量配分の影響は想像以上に大きく、数%の違いでクルマの性格はがらりと変わる。

 最大スリップアングルが必要なコーナリング、すなわち限界コーナリングでは、さらにスリップアングルを増大することでステア特性を変化させることはできない。
したがってこの場合では、重量配分によってステア特性がほぼ決まってくる。



②前50%、後50%の場合
 重心点がホイールベースの中心にある場合だ。
このときにはクルマを回転(ヨーイング)させようとするモーメントはゼロとなり、ニュートラルステアになる。
最も好ましい重量配分といえよう。
この理想的な重量配分は、ミッドシップよりもFR車の方がむしろ実現の可能性が高い。
例えばロータリー・エンジンのコンパクトさを生かしてエンジンをできるだけ運転席に近づけて搭載したサバンナRX-7や、ミッションをリア・アクスルに置くトランス・アクスルを採用するポルシェ928などが、50/50の重量配分を達成させている。

 先のフロント・ヘビーの場合では、限界コーナリングでクルマのバランスを保とうとすると、リアに比べてグリップ力の大きいタイヤをフロントに装着する必要がある。
駆動によってグリップ力の一部を食われてしまうFF車では、さらにこれが顕著だ。
FFをレース用に仕立てる場合には、タイヤ・サイズはフロントで大きくする必要がある。

 一方、FRは駆動力をリアで負担するために、フロントが重いとはいいつつもフロント・タイヤは駆動力から解放されており、そのために横方向のグリップ力を奪われることがないのでバランスは保ちやすい。
高性能エンジンを搭載したFR車では、駆動力を吸収するためにリア・タイヤのサイズアップが必要になる。
駆動力を考慮すると、50/50の重量配分のクルマであっても、エンジン出力が大きい場合にはリア・タイヤのサイズを大きくする必要がある。



③リア・ヘビーの場合
 ミッドシップやRRの場合がこれに相当する。
力のバランスで、クルマをコーナーの内側に向けようとするモーメントが生まれるためにオーバーステア特性になる。
これをニュートラルステアに近づけるには、リア・タイヤのサイズをフロントよりも大きくする必要がある。
特に高性能エンジンを搭載する場合ではFRに比べてさらに大きなリア・タイヤが必要だ。



 ミッドシップでは、リア・ヘビーになることでリア・タイヤの荷重が大きくトラクションでは有利だが、ステア特性や安定性では不利になりやすい。
FR車におけるフロント・ミッドシップやトランス・アクスルと同様に、ミッドシップでも数%のオーダーの細かな重量配分の是正が必要だろう。
そして、この問題はレイアウト設計に引き継がれるわけであり、レイアウトは操縦安定性とスペース効率の矛盾の谷間でいっそうむずかしくなる。ミッドシップに可能性があるのは、FRやFFのように洗練されればずっと高い性能を持つだろうと充分に推測されるからである。
裏返せば、現代のミッドシップには未完成の部分が多いということだ。

 例えばミッドシップの古典的な例としてフォーミュラカーを考えると、狭いスペースの中に実に効率良く必要なパーツを収納しつつ、そのレイアウトによって細かな重量配分の調整がなされていることがわかる。

 ラジエター、バッテリー、消火器、燃料タンク、シート位置、オイルタンク等のレイアウトを重量配分という視点からながめてみるのはとても興味深い。
また重要な点は、レイアウトの際にはタイヤの特性が十分に考慮されているということであり、逆にそのシーズンに使われるタイヤはマシーンの重量配分を充分に考慮した上で設計されるということだ。

 FFやFRと同様にあるいはそれ以上に、ミッドシップでは重量配分との兼ね合いでタイヤ特性が重要になる。
ミッドシップ専用のタイヤも出現するだろう。

 ミッドシップ用のタイヤが、FFやFR以上にシビアな設計がなされるというのは、重量配分によってオーバーステアな特性を持つからである。
この特性は直進安定性を悪化させやすく、クルマのスタビリティは低下する。
市販乗用車として最も重要な性能であるスタビリティの低下こそ、ミッドシップの大きな欠点だろう。
そして、その基本特性はミッドシップの重量配分によって与えられている点に注意したい。
この点に注目しないと、ミッドシップのサスペンションも空力特性も理解できないことになる。
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Posted at 2017/01/02 14:05:47

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