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2016年11月06日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その2)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第1章 ミッドシップの世界】

ミッドシップといえどもクルマのひとつの形態にすぎない。
過大な期待を抱くのは危険かもしれない。
しかし、ミッドシップが創り出す世界にはロマンがある。
ミッドシップがこれまでに創り出してきたロマン派、ミッドシップにある種のイメージを与えている。
それに私たちは憧れる部分もあるだろう。

ミッドシップと聞いたときにぞくぞくするような感覚を味わうのは、そんなことによるのかもしれない。
ミッドシップが創り出す世界について知ることは、クルマの楽しさを知ることにつながると思う。
コンペティション・カーからファン・ツー・ドライブまで、ミッドシップの世界をのぞいてみようと思う。



1.レーシングカー

 ミッドシップの代表はレーシングカーであろう。
Dr.ルンプラーがトロプフェンワーゲン(Tropfen-wagen)で先駆としてのミッドシップを完成させ、Dr.ポルシェがアウトウニオンでミッドシップを進化させ、グランプリの世界は次第にミッドシップで満たされていった。
そして現在、レース専用のマシーンはほとんどすべてミッドシップである。
レーシングカーは、ミッドシップの利点を最大限に生かしているクルマだということもできるだろう。

 これからレーシングカーを設計しようとするとき、FF、FR、RRといったレイアウトをわざわざ検討するデザイナーはいないだろう。
設計図に最初の線を引くときから、彼の頭にはそれがミッドシップのレイアウトであることが分かっている。
しかし、改めて「なぜレーシングタイプはミッドシップなのだろうか」と考えてみるのは、ミッドシップとレーシングカーの両方を知る上で楽しい作業に違いない。

 まずレーシングカーに要求される性能や特性について考えてみたい。
レースという競技のあり方から考えると、決められた距離を短時間で故障することなく走りきることがレーシングカーには求められる。
その段階では、レーシングカーがミッドシップでなければならない理由は明確ではない。
そこで、もう少し具体的に求められていることを考えてみる。
決められた距離を短時間で走るということは、平均時速が高いことである。
さらに考える範囲を狭くすると、1周数kmのサーキットをラップするスピードが高いことだ。

 ところでサーキットはだいたい走りにくくできているものだ。
コーナーには高速のものから180度鋭角ターンのヘアピンカーブ、あるいは右、左と連続したS字などがあり、進入時には必ずといっていいほどブレーキングが強いられる。
1周の間には、ブレーキング、コーナリング、加速を連続して何度も行う必要がある。
したがってレーシングカーは、止まる、曲がる、加速するといった基本的な性能が高くなければならない。

 一方、このような要求に応えるためにはマシーンの重量バランスが優れている必要があり(止まる、曲がる)、慣性モーメントが小さくなければならず(曲がる)、トラクションに優れたサスペンション(加速する)でなければならない。

 このように考えてみると、3章で解明するミッドシップの特性が上記の要求性能を得るために最適のものであることが分かる。
さらにエンジンが搭載されていないフロント部分は低くすることができ、良好な視界が得られるといったソフト面でのミッドシップの良さも生かされることになる。

 レーシングカー・イコール・ミッドシップという図式を証明するために、消去法を使うのもいいかもしれない。

 例えばFRはどうだろうか。
これはフロント・ヘビーであるためにアンダーステアが強く、プロペラシャフトのために着座位置が高くなり、ボンネットが高く前方視界が悪い。
また強大なパワーを路面に伝えるにはリアの重量が軽すぎて不適当だ。


FFでは、加速時の荷重移動でトラクションが不足し、ステアリングの応答性も問題になる。
RRはリア・ヘビーでオーバーステアであり、ホイールベースに対してレイアウトがうまくいかないといった問題がある。

ミッドシップ以外のレイアウトは、レーシングカーを設計するにあたっては、検討する必要性がまったくないということになりそうだ。

では逆にF1を例にして、ここではどのようにミッドシップの利点を生かしているか見てみよう。

まず注目したいのは、500馬力から700馬力という大きなパワーを伝える技術である。
これはリアの荷重とタイヤに負うところが大きい。
単にパワーを伝えるだけを考えるならば、駆動輪の荷重を多くすればよい。
例えば極端にホイールベースを長くし、エンジン、ガソリンタンク、ドライバーを後方にレイアウトする方法だ。
これはドラッグスターに見ることができる。
F1ではエンジン、トランスミッション、デフが一体となってシャシー中央に置かれている。
重量配分は前30%、後70%から、前40%、後60%の間にある。
操縦安定性を損なわない範囲で、リア荷重を大きくしている。
また、巨大なリア・タイヤもパワーを伝えるのに必要だ。
さらにエアロダイナミクスにまで注意してみると、リア・ウイングがフロントに比べて大きなことに気づく。
これもレイアウトが変わり、重量配分が変化するとまた違ったものになるだろう。

ガソリンタンクはクラッシュに対して最も安全なシャシー中央に置かれている。
この方式ではホイールベースが長くなりがちだが、ミッドシップならではのレイアウトだ。

シートはそのガソリンタンクの前方である。
最近ではシート位置が以前に比べてずっと前方になった。
クラッシュに対する安全性とリア・タイヤのスライドのセンシングに不利だという意見もあるが、前者はフレーム構造の改良で問題が少なくなっている。
後者は実際にはほとんど影響ないようである。

ラジエターやオイルクーラーは、シャシー中央両サイドにレイアウトされることが多い。
エンジンからの配管は短く効率よくまとめられるわけだ。

エンジン、ミッション/デフ、ガソリンタンク、オイルタンク、ラジエター、オイルクーラー、シート(つまりドライバーの体重)といった重量物をほぼシャシー中央に集中してレイアウトすることによって、F1は適正な重量配分を得られると同時に、慣性モーメントも小さくすることが可能になっている。
これもDr.ルンプラーのトロプフェンワーゲン以来、多くの設計者の努力によって熟成されたものである。
かつてのアウトウニオンA~Dタイプは敏感すぎる操縦性で名手ベルント・ローゼマイヤーやタツィオ・ヌヴォラーリさえも悩ましたわけだが、ミッドシップの持つ多くのメリットhアタイヤの進歩や操縦安定性技術の進歩によって今やレーシングカーになくてはならないものになってきている。

同じことは乗用のミッドシップ・スポーツカーにもいえるのではないだろうか。
ミッドシップ・スポーツカーがより廉価となり多くの人たちに愛されるようになるには、さらに改良の努力が必要であり、それはまた可能だということだ。
Posted at 2016/11/06 15:19:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記
2016年11月05日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その1)

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その1)不定期に内容紹介していく第1回。

今年の春、高校を卒業した長女に書籍 丸々1冊分のテキスト入力を、アルバイトとして与えたのだが、ダラダラしているうちに、大学進学前の時間は過ぎ去り、予定の2/5しか入力してくれなかった。orz

少し自分でも追加入力して、ようやく1/2のところまできたので、
第1部である、
”ミッドシップの理論的考察” 
の部分を何回かに分けて、アップしようと思います。(第1章~第3章まで)



ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



まえがき

自動車の歴史の中で、ミッドシップ・エンジン車の流れは、どちらかというとそれほど目立ったものではなかった。
自動車の駆動方式には大別して5つのタイプがあるが、少なくとも生産車の分野では、前エンジン・後輪駆動(FR)、前エンジン・前輪駆動(FF)(そしてかつては後エンジン・後輪駆動(RR))が主流をなしており、ミッドシップ・エンジン・タイプが市販生産車にあらわれるのは、ようやく1960年代後半になってからのことである。

だが、レーシングカーの分野では、60年代の初頭から、このレイアウトは主流になる。
いや、この形式以外は考えられないといってもよいくらいだ。
このようなレーシング・タイプとロード・カーとの極端な分極化は、現代の自動車社会のひとつの特長といってもよい。
かつてはこのふたつのジャンルに属するクルマの間には常に目に見えぬ交流があったのだが、最近ではその両者のギャップは広がるばかりのようにさえ思える。

しかし、その溝をわずかに埋める存在といえるのが、ミッドシップ・エンジン・スポーツ/GTタイプであり、その点きわめて貴重な意味を持つといえる。

ミッドシップ・タイプの歴史は、比較的新しいものだが、その間には自動車技術史上の重要な人物が何人もその発展に参加して興味深いドラマを織りなしている。

それは自動車の歴史の中でも、際立って実り多い分野といってよいのかもしれない。

というのも、ミッドシップ・エンジン車は、純粋に“走る機械”として自動車を考える場合、理論的に最も合理的なレイアウトを示しているからにほかならない。
現代のミッドシップ・エンジン車のそのような理論的、機能的側面については、本書の前半部で舘内端氏が取り上げられている。

それがミッドシップ・エンジン・タイプの理解の手掛りとなるはずである。

折口 透
Posted at 2016/11/05 22:45:10 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記

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「@てぇかむ#低燃費化 さん 記事の内容だと、今回の極小さな部材追加での燃費に対する効果については触れていなくて、部材取り外して突起構造の空気抵抗等による摩耗とかを確認し、再び単品での効果が持続的であるか?みたいな、材質選定といった初期的な確認なんですね。」
何シテル?   01/25 12:54
メカニズム解説とか、技術的な話題が大好きです。 ホンダ ビート(若葉色メタリック)はボデーがコチンコチンで脚は柔らかめで峠寄りの街乗り仕様です。 ...
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