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2017年01月02日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その25)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】




8.スタイリングと空力特性

 フロントからエンジンやミッションを取り除けること、スポーツカーとしての色合いが強くまたレイアウト上からも2シーターとなることなどから、ミッドシップではFFやFRとは全く違ったスタイリングが可能となる。
特にノーズ・デザインの自由度は高い。

 ノーズは低くウェッジの効いたデザインが可能だ。
しかし、クローズドのレーシングマシーンとは異なり冷却系をサイドに置けないので、ラジエターの配置によってデザインは制約される。
またスペアタイヤの収納やラゲッジスペースも設けるとなると、さらに自由度は低くなる。

 シートがフロント寄りにレイアウトされると、ノーズからフロント・ウインドウ、ルーフにかけてのデザインがFFやFRとはいっそう異なったものになる。
特に直列6気筒などの長いエンジンを搭載するFRのスポーツカーやGTとは全く異なったデザインになる。
ノーズからルーフにかけてのミッドシップのデザインは、それを近年のレーシングマシーンに似せることも可能であり、デザインに対する楽しさは倍加するだろう。

 低いフードは、そこから続くウエストラインも低いものにする。
シート位置を低く(つまり前後に長く)全高も低くすることによって、さらにミッドシップはレーシングマシーンのフォルムに近づくだろう。

 エンジンのメンテナンスを考えると、リア・デッキは前後方向に長くならざるをえない。
FF、FRであればこの部分のスペースはトランクにのみ割けばよいのだが、ミッドシップではさらにエンジン用のフードとしてのリア・デッキが必要になる。

 この制約によってリア・ウインドウは垂直に近い傾斜を要求される。
ノッチバックの極端な形にならざるを得ないわけだ。
これを嫌ってクーペ的なリア・ウインドウを採用すると、エンジン・ルーム上方と車室との仕切りがなくなってしまう。
そこで仕切りのためのガラスを垂直にはめ込むとなると、リアは2重のガラスとなり後方視界が悪化してしまう。
一般的にはリア・ウインドウは垂直とし、その両サイドにフィン状のリア・ピラーを設けて側面から緩いノッチバックとなるようにしている。
ミッドシップではリア・ウインドウの処理が今後の課題になりそうだ。

 低いノーズと短いルーフ、鋭く切れ込んだリア・ウインドウ、長いリア・デッキは、フロントおよびリアの揚力を低減させるには有効だ。
揚力を少なくするには、ミッドシップは適したレイアウトである。

 一方、ルーフからリア・デッキにかけての気流はサイドからの回り込みもあり、乱れやすい。
これは空気抵抗の増大につながる。
リアの処理はデザイン上ばかりか空力特性的にも課題である。
空気抵抗の低減は、FFやFRも苦労したように、ミッドシップにおいても大きなターゲットである。



 ミッドシップで大きな問題となる空力特性は横風安定性であろう。
重心と空気力による横力中心(風力中心)とのずれ、ヨーイングの慣性モーメント、オーバーステア傾向など、ミッドシップが横風を受けたときの安定性では解決すべき問題が多い。
FFやFRとは異なり、ミッドシップでは空気抵抗の低減よりも横風安定性を良好にするために研究・開発を進める必要があるかもしれない。
Posted at 2017/01/02 14:52:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記
2017年01月02日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その24)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】




7.加速時のトラクションとブレーキ性能

 駆動力を確実に路面に伝えるには、駆動輪の荷重を大きくすればよい。
それは静的に大きくすると同時に動的にも大きくするのがよい。

 静的に駆動輪の荷重を大きくするには、重心を駆動輪サイドに移せばよい。
FFではフロントを重く、FRやRRではリアを重くする。
この点に関していえばフロント・ヘビーのFFとリア・ヘビーのRRは駆動力の伝達効率が良く、FRは悪いことになる。

 動的には、加速時の荷重移動を利用することになる。
荷重移動はフロントからリアへと加速時には起こる。
フロントの荷重は少なくなり、リアの荷重は多くなる。
したがってこの場合では、FFは駆動力の伝達は悪く、FRとRRは良くなる。

 ミッドシップは静的にも動的にもRRの次に駆動力の伝達効率に優れている。



 さらに荷重移動の過渡特性を考えてみよう。
これは荷重移動がどれくらい速く起こるかということで、加速した瞬間からリアの荷重がふえるまでの非常に短時間の荷重移動の変化である。

 これには、ピッチングの慣性モーメント、スプリング/ショックアブソーバーのセッティングが影響する。
スプリング/ショックアブソーバーを同一とすると、前後の荷重移動はピッチングの慣性モーメントが小さいほど速い。
すなわち過渡特性が優れている。
したがってこの慣性モーメントの小さなミッドシップは、加速した瞬間の駆動力の伝達効率に優れていることになる。
0-400m加速のスタート時やコーナーからの急激な加速時には有利な特性である。

 つけ加えておくと、この過渡特性にはリア・サスペンションのアンチスクォート特性も影響する。

 パワーウェイトレシオの小さなレーシングマシーンでは、一般車に比べて少ない駆動輪荷重で大きなパワーを伝えなければならない。
また加速の良否はダイレクトにラップタイムに影響する。
ミッドシップがレーシングマシーンの主流となる理由のひとつが、ミッドシップのトラクションの良さである。

 一方、制動力は4輪で負担できる。制動時にはできる限り4輪の荷重が均一であることが望ましい。
ブレーキング時には荷重はリアからフロントへと移り、フロント荷重が増すのでリア・ヘビーなミッドシップは、FF、FRよりも制動能力を向上させやすい。



 ブレーキングのノーズタイプ、加速時のスクォート(リアの沈み込み)には、スプリングやショックアブソーバーの特性の他に重心高さ、ホイールベースも関係するが、ピッチングの慣性モーメントの大きさも見逃せない。
これが小さいミッドシップでは、過渡的なピッチングが少なくブレーキングから加速へと連続的な動きが必要なコーナリングでは、良好な操縦性を期待できる。

 コーナリング特性ばかりではなく、加速やブレーキまたその連続的な状態において、ミッドシップは高い性能を示す。
速く走ることに関しては、FF、FR、RRに比べて高いポテンシャルを持っているといえるだろう。
Posted at 2017/01/02 14:47:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記
2017年01月02日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その23)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】




6.ミッドシップとサスペンション/ステアリング

 ミッドシップのサスペンションやステアリングは、今まで述べてきたミッドシップの特性、そしてそれに伴うタイヤ特性を考慮に入れて設計されることになる。
シャープさを失うことなくリアのグリップの高いサスペンションが求められるだろう。

 サスペンションの形式としては、ミッドシップの特性を活かす意味で前後ともダブルウィッシュボーン式が使われる。
特に、低いノーズ形状を可能にするためには、フロントにはダブルウィッシュボーンが適している。
一方、ミッドシップのオーバーステア傾向を考えるとリアには性能の高いサスペンションが求められるので、フロントがダブルウィッシュボーンであれば必然的にリアもダブルウィッシュボーンとなる。

 横置きエンジンでは、リアにダブルウィッシュボーンを採用しにくい。
スペース的な理由からである。
この場合、リアにマクファーソン・ストラット式を採用するのであれば、フロントにもストラット式が望ましい。
また、ストラット式であればFF、FRとのパーツの共通化も図れ、コストダウンできる。

 コンプライアンスは、ミッドシップといえども乗心地と操縦性のバランスを取る意味で重要だ。
前後方向のコンプライアンスは大きく横方向に小さなものが要求される。
コンプライアンスが大きくしかもアライメント変化の小さなダブルウィッシュボーンという新たな技術開発が必要だ。
また、これまでのFR以上にトーアウト方向の変化の少ないリア・サスペンションが必要である。
その意味からもミッドシップにセミ・トレーリングアームは不向きだ。

 ミッドシップの特性を生かすには、ロール剛性を高くする必要がある。
しかし、乗心地とのバランスがあるためサスペンション・スプリングの強化には限界があるので、スタビライザーがいっそう強化されることになるだろう。

 ショックアブソーバーも当然強化されることになるだろうだろうが、前後バランスではFFやFRと異なったものとなる。



 スプリング、スタビライザー、ショックアブソーバーの最終的な熟成はFF、FRとは異なり、従来からの手法は通用しないだろう。
シャープなターンインを生かしつつ、そこからしっかりとリアがグリップするようなセッティングが求められる。

 スペースを考えたサスペンション設計の自由度からいえば、エンジンやトランスミッションおよび補器類から解放されるフロントは、サスペンション形式の選択やジオメトリー設計で比較的自由だ。

 ステアリング・システムには、ラック&ピニオン式がやはり求められるだろう。
重量配分と慣性モーメントを考えると、ミッドシップでは同じラック&ピニオンでもFF、FRに比べてシャープさは増す。

 フロントが軽いために、ミッドシップの操舵力や保舵力は小さい。
したがって、ギア比が小さくできる、パワーステアリングの必要がない、キャスター角を増大できるといったメリットがある。
ダイレクト感があり、シャープなステアリングが可能だ。
これは、ミッドシップの大きな利点である。
また、ミッドシップのドライビングの魅力も、優れたステアリング系からくるものが大きい。
Posted at 2017/01/02 14:41:54 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記
2017年01月02日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その22)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】



5.ミッドシップとタイヤ特性

 乗心地とグリップ力のバランスは、ミッドシップ用のタイヤといえども求められる。
特別なタイヤがミッドシップに必要だということではないが、シャシー特性とのバランスでいえば、より高性能なタイヤの方がミッドシップには適するだろう。
特に過渡応答性に優れたタイヤが求められる。

 ミッドシップに求められるタイヤ特性は、先の①~⑦をタイヤを中心に考えることでその糸口が求められる。
その前に、タイヤの過渡応答性について説明しておこう。

 タイヤは弾性体であるために、スリップアングルが与えられてからコーナリングフォースを発生するまでに、時間的な遅れを持つ。
この遅れが小さいほど過渡応答性が優れていることになる。これをクルマの動きからいえば、ステアリングを切ってからタイヤにコーナリングフォースが発生するまでの状態でありこの状態が短時間で終わるほどクルマはシャープに感じられるわけだ。
先の例でいえば①→③にあたる。

 さて、ドライバーはそれまでの経験から、コーナー半径、車速等に応じてステアリングを切る。
このとき過渡応答性の悪いタイヤであると、ステアリングを切ったにもかかわらずクルマが向きを変えようとする兆候が現われない空白の時間が長い。
するとドライバーの頭の中のフィードバック回路はステアリングの切り角に修正を求める。
ドライバーはこの命令に従って切り角を増す。
そのとき急激にコーナリングフォースが発生したとすると、クルマはいきなりヨーイングを起こす。
それがミッドシップであれば、ヨーイングの角速度は速い。
クルマはコーナーの内側に向かって急速に切り込んでいくことになる。

 ここまでのクルマの動きからいえることは、過渡応答性が悪くコーナリングパワーの大きなフロント・タイヤはミッドシップには不向きだということになる。
慣性モーメントが小さく、重心が後ろ寄りのミッドシップでは、コーナリングパワーが必要以上に大きなフロント・タイヤでは不要であるばかりか、ミッドシップのクセを強めることにもなりかねない。

 ヨーイングが生じると、リア・タイヤにスリップアングルが与えられる。
リア・タイヤは自身の過渡応答性に従いながら、少し遅れてコーナリングフォースを発生する。
この場合、上記の例のようにヨーイングが急激でクルマは激しく内側に切り込んでいったとすると、リア・タイヤがコーナリングフォースを発生する前にスピンに至ることもあり得る。
したがってミッドシップではリア・タイヤにも過渡応答性に優れた特性が求められることになる。



 ところで過渡応答性は、バイアスよりもラジアルの方が、また偏平率が大きなものより小さなものの方が悪いという傾向がある。
60%あるいは50%の偏平率のいわゆる高性能ラジアルタイヤは、ミッドシップの出現によってまた新たな対応が迫られないとはいえないだろう。

 以上は、ミッドシップの慣性モーメントとタイヤ特性との関係である。
次に、重量配分との関係を考えてみよう。

 ミッドシップの重量配分は後ろ寄りであり、これはFFやFRとは全く逆である。
リア・タイヤはフロントに比べて思い車重を支えながら、駆動力も負担しなければならない。

 タイヤのグリップ力には限りがあり、コーナリングフォースとして使えるグリップ力は駆動力の伝達のために使われたグリップ力をトータルのグリップ力から差し引いた残りである。
FFであると、駆動力によるコーナリングフォースの低下と重い前輪荷重のためにアンダーステアな傾向が強まる。
FRでは駆動力はリア・タイヤが負担するので、フロント・タイヤ:思い前輪荷重、リア・タイヤ:駆動力によるコーナリングフォースの低下という組み合わせのため、パワーオンの状態ではニュートラルステアに近くなる。

 一方、ミッドシップでは思い後輪荷重と駆動力の負担の両方によってリア・タイヤの負荷は大きく、コーナリングに対するリア・タイヤのグリップ力は不足気味になる。
したがってステア特性はオーバーステア気味だ。
さらに急激なヨーイングが発生しやすいので、ターンインからミドル・オブ・コーナーそしてアウト・オブ・コーナーまでオーバーステアな状態が続くことになりやすい。

 ところで、重量配分との関係で前提条件としていたことは、前後タイヤが同一サイズ、同一グリップ力ということだった。
これは、FFとFRがほとんどの現在のバリエーション分布を考えると当然のことである。
そしてFF、FRともにフロント・ヘビーであるために前後とも同じタイヤでもアンダーステアな傾向にありクルマのスタビリティは高く、このようなタイヤの組み合わせでも問題はなかった。



 しかし、ミッドシップでは前後同一タイヤであるとオーバーステア傾向となるためクルマのスタビリティ=安定性は損なわれやすい。
したがってミッドシップでは前後で異なるサイズのタイヤを装着する必要性が高い。

 例えばRRで300馬力という高出力なエンジンを搭載するポルシェ930ターボのタイヤは、フロントが205/55VR16、リアが225/50VR16と前後で異なるサイズだ。
一方FRのポルシェ928Sでは300馬力のパワーに対して前後とも225/50VR16で同一サイズである。
RRとFRを重量配分だけで一概に結論づけられないが、このバランスからいえばミッドシップでもフロントに比べてサイズの大きいリア・タイヤを採用するのは、それほど異質なことではない。

 FF車の増加とともに、そのクセを少なくすべくFF車専用タイヤが創られたように、ミッドシップがより大衆的なクルマとなりつつあることを考えると、ミッドシップ専用のタイヤが不必要だとはいえないだろう。
Posted at 2017/01/02 14:29:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記
2017年01月02日 イイね!

書籍 ”ミッドシップスポーツカー” (その21)

ミッドシップスポーツカー

館内 端 ・ 折口 透

株式会社グランプリ出版

1984年1月17日 初版発行



◆第1部 ミッドシップの理論的考察

ミッドシップの理論的考察  舘内 端

【第3章 ミッドシップの特性】



4.慣性モーメントとクルマの動き


 慣性モーメントは回転運動の慣性であるわけだから、回転を始めたり止めたりするときに問題になる。
一定回転で運動している場合には問題にならない。

 慣性モーメントの大きな物体、例えば思いフライホイールを回転させようとすると、大きな力が必要だ。
自転車の車輪と自動車の車輪との比較でもいいだろう。
ジャッキアップした自動車の車輪を回転させようとすると、自転車の車輪の場合よりもずっと大きな力を必要とする。
また、回転を止めようとするときにも慣性モーメントの大きな物体の方が大きな力を必要とする。

 一定回転数に達するまでの時間を考えてもいいだろう。
同じ回転力を与えても、慣性モーメントの大きな物体では、回転はなかなか速くならない。
慣性モーメントの小さな物体は短時間で回転が速くなる。
ターボチャージャーのコンプレッサー/タービンを考えてみると分かるだろう。
大型のそれは回転が上昇するのに時間がかかるため、ターボ・ラグが大きい。

 慣性モーメントの大小は、回転を始めたり止めたりする過渡状態で問題になることをもう一度確認しておこう。

 次にクルマが曲がるときのことを考えてみよう。
クルマの動きを論じる場合、一般的にはすでに曲がっていて連続したコーナリング状態にあるときの様子を考えている。
しかし、ヨーイングの慣性モーメントが問題になるのは、直進状態から一定のコーナリングに至るまでの過渡状態においてである。
先の例で言えば、コーナーにアプローチするターンインの状態においてだ。

 過渡状態のクルマの動きを詳しく見てみると、次のようになる。
①ステアリングを切る。
②フロント・タイヤに舵角が与えられる、
③フロント・タイヤにコーナリングフォースが発生する、
④クルマにヨーイングが発生する、
⑤リア・タイヤにスリップアングルがつく、
⑥リア・タイヤがコーナリングフォースを発生する、
⑦リア・タイヤのコーナリングフォースによってヨーイングが収束し始める。
一定のコーナリングでは、フロントとリアのタイヤ両方がコーナリングフォースを発生しているが、過渡状態の初期ではリア・タイヤはコーナリングフォースを発生しておらず、終期においてはじめてコーナリングフォースを発生する点に注意したい。

 ①から⑦までの動きにはすべて時間がかかる。
巨視的には①→⑦は一瞬の出来事であり①と同時に⑦の状態になるように見えるが、微視的には①→②、②→③、③→④……の変化にほんのわずかではあるが時間を必要とする。
①→②にはステアリング系の剛性が関係する。
剛性が低いほどステアリング・ホイールの動きがタイヤに伝わるのに時間がかかる。
②→③ではタイヤ特性が問題になる。
例えばラジアルタイヤはコーナリングフォース、コーナリングパワーともにバイアスタイヤよりも大きいが、舵角が与えられてからコーナリングフォースが発生するまでに必要な時間は長い。

 慣性モーメントが関係するのは③→④である。
慣性モーメントが大きいと、フロント・タイヤにコーナリングフォースが発生してからクルマが一定のヨーイング角速度を持つに至るまでに時間がかかる。
クルマをフライホイール、コーナリングフォースをフライホイールを回そうとする回転力と考えてもいいだろう。

 慣性モーメントの小さいミッドシップは、ステアリングを切ってからクルマの向きが変わるのに短い時間ですむわけであり、これがミッドシップのシャープさにつながる。

 さらにミッドシップで注目しなければならないのは⑥→⑦である。
⑥→⑦は回転しているフライホイールの動きを止めることと似ている。
慣性モーメントが大きいとヨーイングの収束は遅くなる。
あるいは勢いがつくと止められずスピンに至る場合もある。
RRが振り回されるようにしてスピンしてしまうのは、この状態にあたるだろう。ミッドシップでは慣性モーメントが小さいので、ヨーイングの収束も容易でありかつ早い。



 クルマの動きのシャープさというのは、動き出しがシャープなだけでは得られず、動きが止まる際にもシャープである必要がある。
このような場合に初めてカチッとしためりはりのあるフィーリングが得られる。
RRでは、動き出しはシャープだが、その後にドローなフィーリングになってしまう。
 ①→⑦ではタイヤ特性も重要だ。
例えばコーナリングパワーが大きくとも応答性の悪いタイヤは、ミッドシップには向かない。

これについては次に詳しく考えてみよう。
Posted at 2017/01/02 14:21:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書籍 | 日記

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何シテル?   01/25 12:54
メカニズム解説とか、技術的な話題が大好きです。 ホンダ ビート(若葉色メタリック)はボデーがコチンコチンで脚は柔らかめで峠寄りの街乗り仕様です。 ...
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