「今まで乗った中で最も快適だったと思うセダンはありますか?」
おいらにこう尋ねられると、真っ先に挙げられるクルマがあります。
[Illustration by Brisken]
はい。まさにその答えというのがJ30系の日産マキシマです。
80年代末期から90年代前半にかけて生産されていました。つまり日本経済がバブル絶頂から、崩壊に至った時期ですね。
この時期の日産は90年代での技術世界一を標榜した901運動を展開していてR32スカイラインやZ32フェアレディZ、S13シルビア&180SXの他、Y31セドグロとシーマ、A31初代セフィーロ、P10初代プリメーラ…などと、今でも幅広く知られるほどの魅力的かつ先進的なクルマをたくさん開発して生み出されていました。J30マキシマももちろん、901運動の一環で開発されていたクルマです。
当時マキシマに乗っていたおいらの家族や親戚はいませんでしたが、おいらが中学生の頃に同級生の親がこの型のマキシマに乗っていました。
その同級生とは部活動も一緒で試合遠征の機会に時々マキシマに乗る機会があったわけですが、当時の秋田県内は高速道路はじめ自動車専用道路が今ほど整備されていなかったので、遠征で使うルートはもちろんずっと下道が基本。
遠征先によっては片道3時間前後の長時間移動だったりしたわけだからそりゃもう疲れるわけで、遠征先に着く頃には1日分の疲れを覚えて試合で本調子を出せなかった!というのがいつものオチ。
しかしマキシマの場合はそうじゃなかった。
片道3時間乗っても全く疲労感がなかったもので、とても快適だっとことを今でも覚えています。つまり逆に言えば、(遠征先へ向かう際に誰がどのクルマに乗っていくかっていう話になった時に)このマキシマに当たった時は、遠征先の試合で本調子を発揮できたというわけです(笑)
901運動の成果物ということもあるんでしょうが、そもそもマキシマは広大な北米市場を主眼に開発されたクルマ。当時の国産としては大きめなボディに3LのV6、大きめなシートの作りからしても快適性を重視していることを容易に想像できますが、シートの硬さ加減、開放感を与えるグラスエリアの配置など、どれにおいてもまさに絶妙といえるものがありました。
3LのV6エンジンも素晴らしかった。同級生の親が乗っていたのは前期モデルだったので搭載されていたエンジンはシングルカムのVG30Eと思われますが、低回転域から実にトルクフル。変速機とのマッチングも良かったからか、VGエンジンの持つ官能的なサウンドと共に放たれる高回転域までの伸びが本当にスムーズかつ滑らかで気持ちよかったのは今でも鮮明に覚えてます。
[当時のCM]
https://youtu.be/RADcqrtB-mo
https://youtu.be/e5gfcGj1wIY
※ 埋め込みがうまくいかないようで、リンクだけ貼らせて頂きました。
このCMの通りでまさに、リラックスという言葉にふさわしいものがマキシマにありましたね(それにしてもデーブ・スペクターさん、今でもほとんど容姿が変わらないのが何気にすごい)。
ところが、当時の日本市場が求めていたのはリラックスよりも、デラックス。
バブル絶頂から崩壊に転じる時期だっただけに、当時の日本人には刺激が欲しかったというか、華やかさが忘れられなかったんでしょうかね。
華やかな装飾を避けたシンプルなエクステリアと合理性を求めた真面目な設計や装備が持ち味だった、いわゆる大人の感性で作り上げられたドライな指向のマキシマは北米市場で成功し受け入れられたものの、日本市場で受け入れられなかったのは、なんとも残念な話。
そんなマキシマに長時間乗れたこと自体が、むしろ貴重な体験だったのかもしれません。
こうした背景もあっておいらは、(日本人に理解されなかった)J30マキシマの良き理解者の1人ということに胸を張って、今でも自覚し続けているのであります。
Posted at 2022/05/21 14:08:51 | |
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