三井三池鉱山　断片回想　　2

純情青年だったぼくは、三池炭鉱労働組合(第一組合）に頼まれて夏休みに組合員の子弟に勉強を教えに行ったことがある。まだ会社の犬=第二組合の力は弱く、何よりも炭(すみ）掘る仲間の目は澄んでいた。


掘り出された炭車の石炭はここでポイントが変わりホッパー(選炭場）に向かった




労組の用意した宿所でひと月を過ごすうち、ことはそう単純ではないこと、さらに人生もまたしかりであることを体得した。


三井は労組の組合員を地上勤務にした。そして第二組合を地底に押し込み炭を掘らせた。

三井は地上勤務を命ずることにより組合員から鉱夫としてのプライドを奪いやる気をなくさせ去勢し組合活動を抑えようとした。




この時事故は起きたのだ。斜めに2000メートル以上下る人車はたった一本のwire ropeでつながっていた。鉱夫を乗せた人車は暴走し火花を散らし脱線し周囲の炭塵に引火し爆発した。しかしそのことによる死者はわずか20人で、ことを大きくしたのはさらに地底に2000名がとりのこされていたことである。

熱とガスは500人を殺した。1000人が廃人になった。


大牟田の人はキノコ雲を見たそうだ。

三池第一労組の安全操業に対する声が三井に届きにくくなっていた。労組は地上勤務が多くなっていたし、心情的にも会社側に寝返った裏切り者の第二組合のために安全を確保したくない。本音だ。

この時とばかり三井は保安体制を大幅に手抜き体制にした。事故は起こるべくして起こったのである。


人車は語らず


再び事故は続き、計500名以上が死に1000人がCO中毒で廃人になった。

今現在も病院で苦しみもがく人がいることを世間は忘れている。



組合間の溝はますます深くなり、裏切り者、急進主義とお互い同士を罵った。

この組合分裂の責任はどこにあるのか。明白だ。ぼくは会社の懐柔策に乗った弱虫どもが会社の犬になり甘い水を吸おうとして第二組合をったことが発端だと思っていた。それも正しいことだが本質ではない。

本質は向坂（さきさか、参照前回）に惑わされた純情鉱夫が組合を組織し現場を階級闘争の場としたことだ。(前回内容）



会社に勝つはずがない。が、一般の鉱夫はそんなこと見通せるはずがない。すべては向坂に起因する。マルクスを狂信し労働者をミスリードしたのだ。


10000人を超えた組合員が最後には一けたになった。


最後の労組員がボランティアで案内をしていた　　昭和は遠くなった



三井は、やくざを雇いデモ隊の先頭の組合員を切り殺させた。このころのやくざは、口が避けても三井に頼まれたとは言わない。


さらに当時の三井のやり口は福岡県の組合対策にも受け継がれ現在に至る。すべては向坂に起因する。


すべては向坂に起因する。「マルクスかぶれ」のふりをした九大の先生、向坂が、労組員を焚きつけ、「向坂かぶれ「」にした。


ゴーンに惑わされた日産は哀れである。向坂に惑わされた組合員もやはり哀れである。