先週、とあるクルマに試乗してきました。
最近日本での発売が発表された
「アウディS1」です。
元はアウディのボトムレンジを受け持つA1ですがどちらかと言えば
ミニやフィアット500のような
「オシャレなコンパクトカー」を売りにしており
実際、女性向けの宣伝がなされているぐらいでしたが
そこに
2Lターボエンジンとクワトロシステムをブチ込み
組み合わされるトランスミッションは
「6速MTのみ」という潔さ!
お得意のデュアルクラッチは20kg重くなるという理由で採用しなかったそうで
今後も追加される予定は無いそうです。
しかし、何より私個人が注目したのはS1のボディサイズです。
全長×全幅×全高=3990×1745×1440mmホイールベース2465mm
このサイズを見て思い起こしたのが
「あのクルマ」でした。
私にとって永遠の憧れ、ランチアデルタインテグラーレです。
全長×全幅×全高=3900×1770×1365mmホイールベース2480mm
僅かですがデルタの方がより短く広く低くホイールベースも長く
より地面に這った感じなのは基本設計時代が30年ほど違うとは言え
コンペティションベースか否かの違いでしょうか
ただ今時ホットハッチといえど
輸入車で3ペダルMTというニッチなクルマが
そうそう売れるとは思えませんし、展示車すらあるかどうかも分かりませんでしたが
とりあえず、「
アウディフォーラム東京なら・・・」と思い行ってみました。
(原宿なんてオジサンには縁遠い街ですが)
が、R8はあるのに普通のA1があるのみ、さすがに発表されたばかりだし無理か・・・
と思いながら素のA1を色々チェックしていると担当者が近づいてきたので
尋ねてみると「3ドアなら昨日試乗車が入った」とのこと。
ただ勘の良い人は他にも居るもので、1時間は予約試乗で一杯とのことでした。
そして1時間後、ようやく試乗となったわけですが
次にも試乗希望が控えているそうなのでバタバタしながらとなり
写真は撮れませんでしたが
白いボディのS1はA1とは違いかなり男っぽく見えるクルマでした。
実際運転してみると
「コンパクトボディにハイパワーの楽しさ」を
改めて実感させてくれましたね。
「ボディが小さく感じる」と「実際にボディが小さい」はやはり違います。
代々木体育館の周りを走っただけですが「ヒラヒラ、スパッ」という感じは
一回り大きいA45AMGとはまるで違いました。
馬力は
231馬力と最近の2Lターボとしては控えめであり、
同じ2Lターボでも既にA45AMGで360馬力を体験した身にとっては
ちょっとパワフルなエンジンぐらいにしか感じませんが
低回転からしっかりトルクが出ていて公道でも使い切れるパワーと
演出過多なA45と違い低回転では静かでマナー良く
回せばイイ音のするエンジンは日常用途も犠牲にしないと思います。
そして何よりMTはやっぱり楽しい!
もはや完璧さでは機械に敵わないと分かっていても
自分で考えながらも無意識に手と足が動き己の意志の介在が感じられる所は
2ペダルでは決して味わえないと再確認しました。
また
MTとアイドリングストップの組み合わせは初体験だったのですが
久しぶりのMT車だったことと、クラッチペダルのストロークに対して
かなり早めに繋がるミートポイントのため半クラッチがやりにくかったせいか
坂の交差点でエンストしたのですが、
エンジンスタートボタンを押さずとも
自動で瞬時にエンジンがかかったのには助かりました。
アイドリングストップにはこういうプラス面もあるのですね。
ただ難点はやはり右ハンドル故のペダルレイアウトでしょうか
VWグループの横置きエンジンFF車の常で、全体に左に寄っているため
長時間の運転時には脚が疲れやすいかもしれません。
この辺は車幅が狭いのに日本車と変わらないミニや
オルガンペダルを採用したデミオの方が上です。

これはS1ではなくA1のペダルですが基本は同じ
以前VWゴルフ7でも書きましたがアクセルペダルがもう半分でも
右側にあれば完璧なのですが。
それとカーペットが貼られていますが
やはり謎のフットレストのような箱があります。
6速MTも昔のVWのようなゴリゴリとした感触は無く
軽くスムースな動きですが、グニャグニャとせずしっかりとしたものです。
ただ前後左右のストロークが長いので左腕の動きが大きくなる所は
もう少し詰めて欲しい所ですね。
特筆すべきは実に滑らかな回転フィールのステアリングです。
ちゃんとタイヤの向きや路面の感じを伝えてくれるので
単に軽いわけではありません。
日産GT-RやメルセデスAクラスもそうでしたが
こういうステアリングフィールは最近の流行なのでしょうか
ハイパフォーマンスモデルでもかつてのような
重くて硬い石臼を腕力で回すような類のものはほとんどありませんね。
内装の質感もベースは同じとはいえさすがにVWポロより上で
値段なりの満足感が有ります。
しかしスタイル優先のためリアシートは大人4人乗りには十分とは言えません。
身長180cmの私にポジションを合わせると
画像の半分しか前席とのスペースは無く
せいぜい160cmぐらいまでの人でないと窮屈ですし
リアドアの開口角度がA3やA4より一段狭いため
乗り降り時に靴が当たりやすいのも難点です。
また試乗車が3ドアだったのですが、長いドアの前席シートベルトは
引き出しやすいように手前に持ち出すアームが付いているものがありますが
S1には付いていませんでした。
私がちょうど肩を痛めているせいもあってベルトの引き出しに苦労したのですが
プレミアムコンパクトを謳うにしてはちょっと不親切ですね。
お値段は410~430万と新型WRX-STIとバッティングしますが
何よりこのボディサイズで2LターボAWDでMTというのは他にありません。
VWポロやシトロエンDS、ミニにもホットモデルはあれどどれもFF
かと言ってミニ・クロスオーバーはデカ過ぎます。

S1という名前といい実に美味しい所を突いてきたこのクルマ
かなり興味をそそられるモノでしたが、どうせならもう少しエンジンに
パワーと個性が欲しいところなのも事実。
やはりアウディの宝刀
直列5気筒を積んだRS1を期待しますが
そうなるとあと150万は高くなるでしょうね・・・
PS:試乗を終えてショールームの他の展示車も見ていたのですが
気付いたことがありました。
しつこいですがまたもやペダルレイアウトの件です。
何度も槍玉に挙げているVWゴルフですが現行の7代目と同じシャーシーを使う
いわば兄弟車A3をチェックしてみました。
ドア開口部からアクセルペダルまでの距離がほぼ同じなのは
当たり前といえば当たり前ですが、周りの処理が全く違いますよね。
フットレストのような箱のあるゴルフに比べ一体成型のカバーで覆ったA3は
それがラウンド処理されていることもあってアクセルペダルを踏む時や
ブレーキペダルから踏み変える時も靴が引っかかったりはしません。
こういうカバーは同クラスのベンツAクラスも施してあり
ゴルフとA3やAクラスとの価格差がこんな所にも現れているのかと言った感じですが
正直言ってこんなプラスチックパーツが一体幾らするというのでしょうか?
私は最初アクセルを踏むつもりで箱を踏んでしまい冷やっとしましたが
このカバー1つで解消されるなら何故着けないのか?という疑問が浮かびます。
根本的なドライビングポジションが正しく取れる事こそ運転の基本であり
ひいては安全に繋がるのではないでしょうか。
お高いレーダーディスタンスセンサーや自動ブレーキ云々より
もっとベーシックな安全対策が施していないのは
プレミアムコンパクトだなんだと言われてもピンときません。
第一、
このむき出しの四角い箱って実に安っぽいです。
輸入車の右ハンドルのペダルレイアウトの多くが適切で無いという意見は
私だけが言っているわけではありません。
自動車評論家への質問に同じことを挙げていた方がいたのですが
それに対しての回答が「慣れれば問題ない」というもので
呆れ返ったことがありました。
慣れる前に操作ミスで事故が生じたらどうするの?という思考は
その評論家には無いのでしょうかね。
むしろ自動車メーカーのお偉いさんと直に触れ合う機会の多い
評論家諸氏こそもっと声を揚げて、「まともな右ハンドル車を作れ」
と言うべきではないでしょうか。
クルマは不特定多数のユーザーが乗るものでその評価も千差万別ですから
私の意見に同意しかねる方がいてもそれは当然です。
しかし左右のハンドルとペダルという機構と配置が変わらない限り
その不特定多数分をクリアしなければならない問題なのではないでしょうか。
事故が絶えないアクセルとブレーキの踏み間違えに対しての
1つの対策も何故かメーカー発信では無いのも気になりますが。