今年もあと1ヶ月を切った所でまとめて試乗を行ってきました。
六本木で所用を済ませた後に3件回ったので、それほど微に入り細に入りとは行きませんでしたが
記憶が薄れない内に比較できるのはやはり貴重な体験です。
ちょっと長いのはご了承ください。
まずは六本木から近い乃木坂にある
メルセデスベンツ・コネクションへ
ここは販売店ではなくショールーム専門でディーラーにはなかなか用意してない
車種の試乗車があるので近辺に行く用事があった時はよく立ち寄らせてもらっています。
今回選んだのは
GLA45AMG

Aクラスの車高を上げSUV仕立てにした流行りのクロスオーバーモデルですが
そこに
2L/4気筒で360馬力を誇る量販モデルとしては最強のエンジンを搭載したモデルです。
去年A45AMGに試乗したので同じハッチバックでどう違いがあるのか
気になるクルマでしたが、普通のディーラーでは展示車もほとんど見ないので
ココに来た甲斐があるというものです。
ぱっと見た感じ、Aクラスとほとんど同じなのですがボディパネルやボンネットが専用のプレスラインになっていて
リアコンビネーションランプも別物で全体に上級感があります。

こう言ってはなんですがAクラスの後ろ姿はかつてのカローラランクスや
現行のVWポロに何となく似ていてあまり上級感というのがありません。
もちろんAクラスはメルセデスのエントリーモデルですからこれでいいのでしょうが
顔だけでなく抜き去った後ろ姿にもメルセデスファミリー感があった方が良いのでないでしょうか。
そういう点ではEクラスっぽいリアコンビネーションランプは良い変更点だと思うので
Aクラスにも採用して欲しいところです。
さて外見はこのくらいにして早速走りだしてみました。
駐車場から出る時の小さな段差を乗り越えた時に気付いたのは
明らかにA45AMGより当たりの柔らかいサスペンションです。
路地から一般道に出てもその感じは変わらず、同乗のスタッフにその旨を伝えると
この試乗車はOPのアドバンスドパッケージを装着していて
標準のGLA45より
更にハードなサスペンションなのだそうです。
そしてせっかく上げた車高をわざわざローダウンしています。
以前試乗したA45AMGは標準仕様ですが、確かに硬いサスペンションなので
段差や荒れた路面でバネの硬さや減衰力の高いダンパーらしい感触はありますが
不快さは無く十分日常性を感じさせてくれるものでした。
GLA45はそれより更にハードなサスペンションなのにより乗り心地の良さが上っているのでアップデートに怠りがないということなのでしょう。
235/45R19というタイヤサイズを考えるとタイヤの縦バネはあまり期待できないですから
サスペンションとそれを取り付けるボディの功労賞といったところでしょうか。
外苑東通りを北上し、青山通りへ出た所でいよいよドライブモードをスポーツに変更し
アクセルを踏み込むと、
勇ましい排気音とともに猛烈な加速が襲ってきます。
この辺は一度体験しているとはいえ、やはり格別ですね
もちろんクルマが乱れるような挙動は微塵もなく、ドシッとした安定感があります。
青山通りが首都高と重なる交差点でUターンするいつもの試乗コースですが
お気づきの方もおられるでしょうがこれはプレステゲーム・グランツーリスモの
東京ルート246のなが~いストレート区間です。
まだ午前中だったこともあり道も開いていたので、前回よりも直線加速を楽しめました。
青山霊園周辺は工事車両が止まっていてノロノロ運転になりましたが
頻繁にアイドリングストップに入るので無駄な燃料消費も抑えられるのは
現代のハイパフォーマンスモデルらしいと言えます。
排気音のボリュームが若干抑えられていたのはAクラスより上級という位置づけだからかもしれませんね。
さて良い所だけ書いていても仕方ないので個人的に悪いところを挙げましょう。
最近のクルマに多い走行モードの切り替えですが
シフトレバー根本のボタンで(画像赤丸で囲んだ部分)コンフォート・スポーツ・マニュアルと切り替えるのですが
このボタンが非常に小さく、ブラインドタッチしにくいのが難点です。

元からパワーがあるのでそうそう一般道でスポーツモードに切り替える必要は無いでしょうが
アクセルレスポンスが早くなり低いギヤを長くホールドしてくれるので
普段からこちらを使いたい人も多いでしょう。
かつてメルセデスの操作系は視覚的にも感触的にも非常に分かりやすいロジックを備えており眼で探さなくても触れて分かるデザインというのがポリシーだっただけに
最近はダイヤル式からボタン式に変わった空調操作系も含め残念な所ですね。
もう一つはトランスミッションです。
流行りのツインクラッチ式DCTでAMGスピードシフトと名付けられた7段ギヤですが
前回のA45AMG同様、
ギヤチェンジ時に明確なシフトショックがあることです。
VWのDSGは見事なぐらいのシームレスギヤチェンジで驚きましたが
何故かメルセデスはDCTの最大の利点であるトルクの途切れを無くす事により
パワーロスを極限まで減らせる、という機構にも関わらず
クラッチの断続感が常につきまとっているのです。
実際は動力伝達ロスは無くてMT感の演出に過ぎないのかもしれませんが
だったら普通に3ペダルMTを用意した方が良いのではないでしょうか。

このシフトショックはAMGモデルだけでなく普通のAシリーズでも感じたので
パフォーマンスモデルだからあえてそうしたというわけでは無さそうです。
あと折角のパドルシフトですがパドルが小さくて積極的にマニュアル操作するには
少し不向きなのとプラスチック丸出しな質感はもうひと踏ん張りして欲しいですね。
そしてこのクルマ最大の売りであるエンジンですが
確かに素晴らしいパワーですがさすがにそのパワーを2Lから引き出すために
今時では珍しい大型タービンと高いブースト圧故のノッキング対策のためか
圧縮比が8.6と低いのです。
ロングストロークエンジンなのと先程のDCTが頑張っているのか
極低速でグズったりする様子はありませんがさすがにトルク感は薄いです。
そして
強烈な排気音はやはり深夜や早朝にはご近所迷惑かもしれません。
まあこういうクルマをポンと買えるような人はそんなものとは無関係な住宅事情なのでしょうが。
音量よりも個人的には
「V8コンプレックス」のような音質が気になります。
直列4気筒はV8の半分といえどもやはり別物
無理にクラシカルなV8サウンド風にする必要は果たしてあるのでしょうか?

かつてはそのパフォーマンスの高さを下品なくらいまでの外観でアピールしていた
AMGですが正式に傘下になってからはノーマルと何ら変わらない外観に変わって行きました。
その分違ったベクトルで
演出過多になっているような気がしてなりません。
もっともこれだけの性能と日常的にも使えるコンフォートさを兼ね備えた状態に
個人レベルでチューニングしていこうとすれば時間とお金がいくら掛かるか分かりません。
そういう意味では、600~700万クラスという価格も十分リーズナブルなものに感じてしまいますから
AシリーズベースのAMGは実に上手い商品企画だと思います。
個人的には先頃発表されたステーションワゴンボディCLAシューティングブレークが
デザイン的にもクルマとしての性格的にもベストバイAシリーズだと想像しているので
日本に導入されたらぜひ実物に触れに行きたいです。
今回試乗したルートです。約5kmでした。
では試乗第二弾へ続く