遅ればせながら
東京モーターショー2019報告です。
今回は東京オリンピック開催に向けての準備のためビッグサイトの半分が使えないことや
外国車がほぼ全滅という展示内容なので行くかどうか思案しましたが
逆にこういうネガティブな状況のイベントこそ見ておいた方が良いと思い行ってきました。

まずは新設された東京テレポート駅会場から

いすゞのディーゼルエンジンですが給排気バルブが左右カムシャフトの内側に配置されているため
バルブ挟み角度がほとんど垂直で一見SOHCと見紛うほどのスリムなヘッドです

UDトラックのハイブリッドシステムのコンセプト展示です
これまで燃料タンクに占められていたスペースの3分2が電動化システムに置き換わっています
フレーム自体は既存のトラック用をベースにしているので比較的すぐにでも商品化できそうですが
10t以上の大型トラックとなると積載時の荷重も考慮すると現実的な航続距離は
現状に及ばないかもしれませんね

木から抽出した繊維(セルロース)を織り込んだプラスチックのみで作られたコンセプトカー
セルロースファイバー強化プラスチックとも言うべきでしょうか、
これも略称はCFRPになってしまいますね

木から繊維質を取り出すといえば和紙を連想させ、デザインが折り紙のように
エッジがあるのもそれを意識したのだとか
セルロースは天然素材なのでリサイクル性も良く、硬いプラスチックだけでなく
人工皮革に織り込むことも可能なので石油成分を減らしつつ軽量化と強度も上がるので
今後採用する量産車が出てきそうな予感です
これはMEGA WEB内でデモンストレーションを行っていた
フリースローロボット
一見目のようなものが頭部にありますが実際は後ろの黒い支柱にあるカメラで
ゴールリングを捉えているようです
百発百中でショットを決める姿に毎回拍手が起こっていました
ビッグサイトまで歩いて移動する道すがらにも数々の展示車がありましたが
気になったのはこの
日野コンテッサ900
貴重な初代モデルなのですが囲いが車体のギリギリまで寄せられていて
簡単に触れてしまうのが心配でしたが
案の定私が写真を撮っている最中にも老夫婦がベタベタと触っていました・・・
むしろ幼い子供のほうがマナーよく離れて見ているのが印象的でした
ビッグサイトでは主に部品サプライヤーブースを重点的に見て回りました
これはNGKのプラグですが一般的なプラグより一回り細く、異常にネジ部分が長い物で
BMWに納めているモデルだそうです。
ネジ山が焼き付いたりしたら外す時に折れてしまうのでないかと心配になる形状ですが
何のモデルに使われているのでしょうか
トラックやバスのサスペンションに使われるリーフスプリングを
グラスファイバー製に置き換えた物です
GFRP製リーフスプリングといえばシボレーコルベットが長年採用していますが
あちらは1枚物を横置きで使うのに対しこちらは超ヘビー級で積載量も半端ない車両用ですから
要求される強度や耐久性は乗用車とは比べ物にならない厳しさだと思いますが
こういった細かいパーツ1つ1つを軽量化しないと今後増々厳しくなる環境指数をクリアするには
軽量化こそ必須となるわけで、涙ぐましい努力が必要なのですね
こちらは通常の
スチール製コイルスプリングを中空化したものと
カーボンファイバー製スプリング
これらもバネ下重量の軽減からスポーツカーだけでなくエコカーにも採用されて行くかもしれません
同じサイズや巻数でもバネレートの設定が今までとは変わってしますでしょうが
ミクニブースにはオートバイ用キャブレターを日産L型エンジンに組んだテストモデルが展示されていました。下にあるのはオリジナルのソレックスキャブレターです。
実際にS30フェアレディZに搭載し走行している映像もあり
ソレックスキャブそのものはもう新品は入手できないわけですから
こういった旧車用代替パーツとしての市場開拓がまだあるという見本ですね
というかここまでやるならソレックスの商標をミクニかケイヒンが買い取って
新造しても良いと思うのですが
既存のリアハッチをプラスチックに置き換えたコンセプト展示です
もともとプラスチック製燃料タンクを主業にしているのでその成形技術を応用したわけです。
ベースはホンダヴェゼルのリアハッチですがノーマルの鉄製よりはるかに軽く
リアハッチダンパーのガス圧も低くて済むので軽い力で開け締めできますから
ミニバンなどの大型リアハッチにはうってつけの素材だと思います。
あとアッセンブリーパーツとしても作りやすいので下手に鈑金するよりも
こちらに丸ごと交換した方が安く済みそうですね。
TSテックというホンダ車のシートを製造しているメーカーブースにあった
センサー式自動ヒーターとベンチレーションを仕込んだシートのコンセプト展示です。
ベースは現行シビック用でしょうか
私のフリードはシートヒーターが付いているので寒さだけでなく
長時間座っていて筋肉がこってきた時に若干ですがコリや痛みをほぐす効果があります。
しかし背中や腰の汗だけは秋冬は良いのですが
さすがに真夏にシートヒーターで乾かす気にはなれません。
昔使っていたレカロシートにはヒーターとベンチレーションが付いていたので
冗談ではなく1日中座っていられるほど快適だった事を体が覚えているので
ぜひこういうシートはガンガン標準装備にしていくべきだと思います。
前回「コレが駄目なら国内は軽自動車専門になったほうが良い」とまで言わせた
4代目ホンダフィット
1モーター+DCTから2モーターHVに変わっただけでなく
デザインがここ数年のホンダ車から刷新されているのが何よりのトピックだと思います。
むしろ初代のフィットを思わせるようなシンプルな造形と意匠は
ベーシックカーの本来あるべき姿ではないでしょうか
まるで30年以上前のような細いAピラーも視界を確保するためのもので
実際の強度は三角窓後部のピラーが担っているそうで安心です
正に
機能が形になった、工業デザインとはこういうモノを指すのだと私は思います。
ただ気になるのはATシフトレバーがロックボタン式ストレートパターンに戻ってしまったことです
何故いまさらこんな旧態然とした形式に戻したのか分かりませんし
ロックボタンを押しっぱなしにすればどのポジションにも入ってしまうこの操作ロジックは
個人的にタッチパネルの次に嫌いなクルマの操作系です。
それにフロアスペースをかなり専有しているのも気になりますね
フィットはおそらく海外向けはMTが設定されるでしょうからHパターンシフトのためには
これぐらいのスペースが必要なのも頷けますが
ATならここは小物入れにしてシフトレバーはもっと小さなもので十分ではないでしょうか
それと2モーターHVつまり現行のステップワゴンやインサイトと同じ形式になったのですが
EV走行ボタンがどこにもありません。
ごく短時間でもモーターのみで静かに走り出せるのは早朝深夜の住宅街では
明確な便利機能ですし
3代目までのHVとは違うというセールスポイントにもなると思うのですが。
このモデルから2モーターHVをこれまでのi-MMDから
eHEV(イーヘブ)という名称に変えるようですが
なんだが語感が悪いし何のことなのか伝わりにくい感じがします。
もっとe-POWERのようにストレートで分かりやすい表現が良いのではないでしょうか
ホンダらしく
E-TECなんてのはどうでしょう。
これまた原点回帰を思わせる
ピュアEV・ホンダe
航続距離はあえて求めずシティコミューターに徹するというのがコンセプトですが
本来こういう短距離ランナーは日本にこそ相応しいのではないでしょうか
そもそも一般ユーザーの1回の走行距離や時間が圧倒的に欧米に比べ短いのが
日本での乗用車の使われ方なのですが
なぜか電気自動車は航続距離の短さばかりが取り沙汰されるのが
一般人だけでなく評論家にもそういう論調があるのが解せません。
現状のバッテリーの性能では電気のみで内燃機関車と同じ距離を同じ時間で走るには
巨大な電池容量が必要ですしその分クルマは肥大化超重量化するのは否めません
当然それは地球環境にとっては良くない生産消費サイクルを生んでしまうわけですから
分相応なEVの多様化があって然るべきだと思います。
しかしリーフはもとよりPHVのプリウスさえも航続距離の長さがセールスポイントだとばかりに
バッテリーを大容量化し結果的に天地の浅いクーペのような荷室になってしまっています。
そういう意味ではホンダeは「よそがやらないことをやれ」というホンダイズムが
いい意味で溢れたクルマだと思います。
商売的には苦戦すると思いますが買った人を満足させる土壌作りさえしっかりすれば
1つのブランドとして根付くはずです。
いまだにホンダディーラーにEV充電スポットを設置する気配が無いのが気になりますがね。
これまた懐かしい響の
「油冷エンジン」を新規に開発したスズキ
ミッションオイルクーラーのように小さなラジエーターにまるで空冷エンジンかと見紛う
コンパクトな250CCシングルが印象的でした。
一方でニーハン市場を活気づけるきっかけを作ったカワサキからは4気筒250ccが復活
Ninja ZX-25Rはかつての天井知らずに回るような
250マルチのフィーリングなのかどうか気になる存在です。
そして真逆に時間が止まったかのようなこの展示も良かったです
メグロ
W1
W800
変わらなければならないところと変わらずにいていいところ
その塩梅が上手い商品だなあと思いますね
WとSRは永遠にこのままでいてほしいです。
大分かいつまんだつもりでしたが結局長話しになってしまいましたね
今回会場が2つに大きく離れたことと海外メーカーブースが無かった分
各ブースが広かったこともあり
例年のような狭いブースに観客が寿司詰めになるといったこともなく
わりと余裕を持って見ることができたと思います。
特に部品メーカーブースではスタッフと長話しになることもしばしばで
結局2回に分けて行くことになりましたが中身は濃い体験ができたと思います
ただやっぱり夢のような、憧れる対象となるようなクルマが少なかったのは
「モーターショー」としては薄味な印象でした。
スーパーカーゾーンに展示されていたミウラを見てまだ感動できるオジサンであったのは
果たして良いことなのか悪いことなのか・・・?