新型ノアの試乗を行ってきました。
グレードはハイブリッドS-Zで珍しいレッドマイカのボディカラーです。
これがなかなか品がありながら彩度の高い赤で被視認性も高く
洗車のやり甲斐のあるカラーで気に入りました。
試乗コースにいつも走っている道路を含めるようにディーラーを選んだので
ステップワゴンRP5との比較も分かりやすかったですね。
◎良かったところ
・駐車場から走り出してすぐに分かるほどに滑らかな動き
フリクションや微振動がとても小さく、滑るような走行フィールには驚愕しました。
ミニバンというボディ形状的に特に左右の微振動は避けられないのですが
パフォーマンスダンパー付きのステップワゴンと同等か場合によっては
それ以上に左右への微振動が少ないため、遥かに車格が上のクルマに乗っているようでした。
・トヨタハイブリッド宿命の「ブモ~ッ音」がかなり小さくなった
アクセルペダルを踏み込んだ途端に鳴り響く「ブモ~ッ」という
屋台の後ろで唸る発電機の様な騒音はTHSの構造的な宿命で
街中の走行速度域でも耳障りだったのですが、その音量は相当に小さく抑え込まれていて
e-POWERやeHEVが発電のためにエンジンが掛かった時の音量変化ギャップと比較すれば
走行中の室内音はトータルでも静かに感じるレベルでした。
もちろん高速道路ではどの程度の音量になるかは不明ですが、加速からアクセルオフにした瞬間にEVモードに切り替わるので一般道でモーターの恩恵に預かるシチュエーションはステップワゴンと同等ではないかと思いました。
・斜め前方の視界が良い
Aピラー自体もですが室内側のカバーの形状も含めて細く仕上がっているので
斜め前方の死角が小さく、交差点だけでなく特に何気ない右カーブでも頭を左に寄せずに安心して曲がることができます。
ここはステップワゴンを運転していていつも不満に思うところですが新型もAピラーの車内側があまり変わっていないのでかなりのアドバンテージを感じました。
・滑らかでしなやかなサスペンション
S-Zの装着タイヤは55扁平の17インチということもあり、硬めの脚を想像していたのですが、
のべつ幕なしにゴツゴツしておらず不快さはほとんど感じません。
これは先の微振動の無さと騒音レベルの低下の相乗効果ではないでしょうか。
ただし条件によっては失われるので後述します。
・気の利いた装備と動作
・モニター式ミラーの表示面積が広い
カメラの映像を映すルームミラーはステップワゴンにも着けているものの
表示面積が鏡の時より上下が極端に狭くなってしまうのが欠点ですが
ノアのモニター式ミラーは鏡の面積とほぼ変わらないので
違和感はほとんど感じませんでした。
また
エンジンOFFにしてもしばらく映像を映してくれるため
暗いところに駐車した時の後方確認が降車する直前まで分かるのは
安全に配慮したとても良い気使いだと思いました。
・自動的にモニターカメラの表示に切り替わり走り出してもしばらく表示してくれる
これはホンダにもある機能ですが残念ながら私のRP5のナビには自動表示機能は無く
時速25kmぐらいでカメラ表示はOFFされてしまうのですが
突如狭くなる道路や路上駐車のクルマやバイク、歩行者が縦横無尽に闊歩する道路を
走らねばならない事が意外とあるので、あった方が安心できる機能です。
また真上から見下ろした映像に対角線上の黒い線が無いのも良いですね。
・地図が全画面表示できるナビ
画面のサイズは10インチ弱と私のRP5と同じですが上部の黒帯が無く
実質的な大画面感は明らかにノアの方が勝ります。
ホンダのナビ画面上部の黒帯部分はどうやっても消えません。時計はメーターにもありますし
走行中の現在地の詳細な住所など表示する必要は無いと思うのですが・・・
・操作しやすい位置にあるスライドドアスイッチ
アルファードのように天井に着くようになりましたが、スライドドアの開閉は私が行うので
後方確認しながらの操作性はこの位置の方が好ましいです。
気になるのは電動テールゲートのスイッチまで同じ位置にあり形状や操作法も似ているので
間違えるのではないかという懸念はありますが・・・
・2列目シートベルトを固定しやすい
これはセレナや新型ステップワゴンと比べての話ですが
従来どおりシート下部からアンカーアームが生えているので座面との干渉が無く
手探りでも分かりやすくなっています。
ただし上級グレードに装備される折り畳みセンターテーブルが邪魔で
特に右席はベルトの脱着がやりにくいのはマイナスポイント。
テーブルが取り外せたら良かったのですが・・・
◎悪かったところ
・垂直方向のみ乗り心地が悪くなる時がある
舗装のツギハギやマンホール、グレーチングなど素材の変わる所や段差など
車体に対して上下方向に入力がある場面で「コツコツ」たまに「ゴンッ」といった突き上げがお尻を突き抜けて明確に襲ってきます。
上下動自体のバウンスは一瞬で収まるのですが、全体的に静かでスムーズな分
その1点だけが余計に悪目立ちしています。
17インチホイールの重さと55扁平タイヤによる不整の拾いやすさだけが原因なのかは
他グレードの16インチ60扁平仕様と乗り比べなければ分かりませんが
しなやか乗り心地フェチの私としては一番気になるところでした。
・異常なほどに軽く手応えの無いステアリングフィール
ステップワゴンもオデッセイに比べると軽いのですがノアのステアリングフィールは
まるでタイヤが宙に浮いているかのように軽く、タイヤがどこを向いているのか伝わってきません。
昔のクラウンのような感じはこれぞトヨタ味と言えなくもありませんが
タイヤのサイズ的にもステップワゴンよりしっかりした感触を予想していただけに驚きました。
また先の突き上げが明確にも関わらずタイヤからのインフォメーションが無いのも
ものすごい違和感です。
運転できないわけではありませんし、慣れればどうということは無くなるのでしょうが・・・
・2列目シートヒーターの操作性
これは新型ステップワゴンでも指摘しましたがせっかく2列目にもシートヒーターが装備できるようになりましたが、最上級グレードのみなことと、操作スイッチが後席天井にしかないという
操作性の悪さまで同じなのは業界で示し合わせているのではないかと疑ってしまいます。
後席に乗る人の体格にもよりますが座ったままスイッチを操作するには遠すぎます。
走行中にシートを動かすのは不慣れな人にはさせたくありませんし
ましてやシートベルトを外して体を浮かせるなど言語道断!
ドライバーにはパッセンジャーをもてなすという責務もあるのですから
運転席でリアシートヒーターの操作をできるようにしてほしかったですね。
・多岐にわたるオプション類が本当に必要なものだけ組み合わせられない
仕様表を見ていて頭が痛くなってくるほどオプションが多くそれらの中には
「今どき必需品では?」というものまであります。
私がノアを買うとしたら欲しい装備には(ADASやドラレコはもはや当然なので除外)
・ブラインドスポットモニター
・360度モニターカメラ
・モニター式ルームミラー
・シートヒーターとステアリングヒーター
・アダプティブヘッドライト
・補助サイドステップ
といったところですがこれらは全てオプションで選ばねばならず、しかも要らない装備とセットなのも多く、高額になってしまうのに残価率に後付け品は計上されませんから
ユーザーの側に立っているとは言い難い内容です。
あくまで一般道のみの試乗なので高速域でどうなのかは分かりませんが
先代のノアと比べて進化度が著しくフルモデルチェンジと言うにふさわしいクルマに仕上がっていると実感できました。
さすがに今注文しても私の望む仕様だと1年はかかると言われましたし、RP5自体気に入っているところも多いのでもし乗り換えるとしても数年後でしょうが、
ミニバン候補の筆頭になるのは間違いないでしょう。
ただやっぱりエアロモデルのあの顔は納得できませんね
買うならノーマルモデルですが、レッドマイカはエアロにしか無いのが残念です。