整備手帳に上げたドアミラー交換修理が3時間ほど掛かると事前に聞いていたので
たっぷり試乗させてもらうことにしました。(画像は拾い物です)
まずは昨年ビッグマイナーチェンジを受けた
オデッセイ
グレードはe-HEV(ハイブリッド)アブソリュートEX
賛否両論あると思いますが外見のデザインについては個人的には今回の方が好きです。
オデッセイは初代や2代目こそあるべき姿だと思うので高さを活かした顔つきのほうが似合っていると思います。
MC前の顔つきのモデルも初期型、中期型と全てハイブリッドモデルを試乗しているので記憶と照らし合わせながら走ってみましたが・・・
「これ、どこが変わったの・・・?」というのが正直な印象でした。現行モデルで一番嫌なのが恐ろしく重いステアリングフィールで思わず交差点で内掛ハンドルをしそうになる重さは全く変わっていませんでした。
オデッセイのステアリング操舵は同じ「重い」でも例えばBMWとは違い、まるで逆方向にパワステのアシストが効いているかのような感触です。
左に切り始めると右に戻そうとする力が加わり、回していくと重さプラス硬さまで加わりこの感触は駐車場内での速度域でも同じなのでとにかく疲れます。
そのわりにペダルは軽くアクセルもちょいと踏めばグイッと加速する典型的な日本車セッティングでどうにも調律が取れていない楽器のようなアンバランスさが嫌いなのですが
そこには一切手が入っていませんでした。
そして足回りですが路面の不整や素材が変わる所を通過する時の突き上げやストローク感が少ないビシッとした乗り心地は相変わらずですが、突き上げの中に分厚いクッションが増加したような感触があり、そこは更に改良したようですが
根本的にしなやか系の乗り味ではありません。
ロードノイズの侵入も足元からのはあまり音量が減った感じはしませんでしたが頭の周りは静かになっていると感じましたね。
音で気になったのがエンジン音が目立つようになったことです。
MC前の中期モデルでエンジンの遮音はかなり向上したのですが先程も言ったように頭周辺の遮音が良くなったせいかバルクヘッド越しの音が目立つようになったのかもしれません。
ホンダの2モーターHVは三菱のPHEVとほぼ同じ機構で日産e-POWERも同種に含まれますが、昨年試乗した日産キックスが発電のためにエンジンが掛かったことが音で気づかないぐらいに巧みな制御と遮音対策していたことに比べるとオデッセイのe-HEVはそこの対策はあまりなされていないようで、旧態依然といった印象が強まってしまいますからきちんと改善しておいてほしかったですね(アコードでは対策していたのですから)
今回試乗時間を長くもらえたので日常使いした場合のシミュレーション的なこともやってみたのですが
普段の使い勝手を向上させる変更がほとんどなされていなかったり中途半端な改良になっているのが残念でなりません。
まず電動パーキングブレーキやブレーキオートホールド、スライドドアの開閉スイッチの取り付け位置は相変わらずドライバー視線から見えない所にありブラインド操作もしにくい形状と配置です。
横滑り防止装置や衝突軽減ブレーキのオンオフといった普段オフにすべきではない機能のスイッチと同じ場所にあるのがどうにも理解できません。
さらにシフトレバーをPレンジに入れると電動パーキングブレーキが自動的に掛かる機能も追加されていませんでした。
私だけでしょうがオデッセイを試乗やレンタカーで借りた時についやってしまうのは
シートヒーターのスイッチを押してしまっていることです。
ドア側アームレストの一番後ろにあり一段低くなっていますがミラーの調整時や運転中にいつの間にか押してしまっているようで特に厚着になる冬は起こりがちで今回もやってしましました。
さらにこの位置だと助手席側はドライバーから操作することはできないので、助手席の人がシートヒーターを切り忘れた時に運転しながらオフに出来ず不便な経験をしたことがあります。
フリードやステップワゴンは空調パネルの部分に設置されているので作動状態もハイ・ローも分かりやすいし操作性も良いのに何故上級車のオデッセイがいつまでもこんな変な位置なのか理解できません。
物入れが少ないことで有名な現行オデッセイですがメーター近くに追加されたドリンクホルダーは格納できることや開閉時のスムーズさといい機構は良いのですが
深さがないため500mlのペットボトルを挿した時かなり出っ張ることや
角型の紙パックに対応していないのが惜しいですね。
大型化され物理的ボタンやダイヤルを備えたナビは良い改良ですが、解像度が低いままなのかマルチビューカメラの映像が更にぼやけていたのがとても残念です。
更に私のフリードはOPの左コーナーカメラを着けていますが時速18km以下になると自動的にコーナーカメラの映像に切り替わるようにナビで設定できます。
狭い道や駐車時に便利な機能なのですがオデッセイには車の周囲をすべて映すマルチビューカメラがあるにも関わらずこの自動カメラ切り替え機能が設定すらありませんでした。
右コラムレバー先端のカメラボタンをいちいち押さなければならないのは不便だなと以前から感じていましたが改良されていませんでしたね。
AC100V家電が使えるコンセントも以前から一部に設定されていますが相変わらず充電用USB端子が前席に、しかも1個しかないというのも前時代的ですね
センターコンソールBOX後部に追加しても良かったはずです。
現行オデッセイで私が大のお気に入りなのは後席のプレミアムクレードルシートです。
クッションの適度な柔らかさや中折式のバックレストといった快適面もさることながら
重要なのは大腿部裏をほぼカバーする座面サイズとフロアとの段差をしっかり取った座面の高さにより膝裏が浮き上がる「体育座り」にならないことです。
オデッセイはホンダミニバンの中で一番屋根が低いにも関わらず、リアシートで理想的な座り方が出来る唯一のクルマですがそれはシャシーの段階でフロアがとても低く薄いことに起因していますがシート自体の形状やサイズも理想を叶えるべくこだわった設計がされていると思います。
ただ残念なのはこの優れた機能を使うための機構が全て手動で各レバーも座った人から一目で分かりやすいとは言えず、オーナーでも普段は運転席に座るわけですからいざという時にどれがどこの調整なのか戸惑うのではないでしょうか。
またシートの前後位置やバックレストの角度を自分で調整できる人なら良いのですが、後席に乗るのが高齢者の場合、教えても毎回自分でできるような代物ではないしシート自体の重さや角度調整部のバネの強さ的に老人にとって優しいとはとても言えませんし、人が座った状態で他者が調整しやすいとも思えません。
以前からオデッセイの後席はとても良いが最低でも前後スライドとバックレストは電動にすべきだとディーラーはもちろんイベントでホンダ内部の人とお話する機会があれば口を酸っぱくして言ってきたのですが、今回も改良はなされませんでした。
空調パネルも高級感も操作性もゼロのタッチ式パネルのままですし
軽自動車みたいなシフトノブも相変わらずです。
正直言って私が自由になるお金を数百万持っていたとしても買わないクルマです。
とても良い所はあるのですが改善してほしかった所が全くの手付かずなのがいただけません。
90年代初頭のホンダを救ったオデッセイですが、今のホンダにオデッセイをフルモデルチェンジする余力はもう無いのでしょうか?
確かオデッセイの生産は狭山工場だったはずですが閉鎖されることは決定しています。
中国ホンダで兄弟車が生産されていますが、モデルチェンジを機に右ハンドル化して逆輸入販売ということも十分考えられます。
出来が良ければそれでも構わないでしょうが日本と海外ではクルマに求める価値観が違うので現状のCR-Vやアコードの様になるのでは・・・と危惧せざるを得ません。
「売れないから止める」ではなく「売れるように頑張った」な姿勢は評価できますが
頑張りどころが間違っているようにしか感じません・・・
外見を大きく変えることで購入の糸口にはなるでしょうが、買った後にそのクルマを使って満足させる、買ってよかった、次もオデッセイにしようと思わせる仕掛けは今回のマイナーチェンジでなされていない部分に多くあるような気が私はします。