
ホンダのZR-Vに試乗させていただきました。
e:HEVのFFと4WD、ガソリンのFFを乗り比べてみました。
最初はFFだけ乗ったのですが、乗り味に色々と思うところが多かったので、後日4WDも乗ってきました。
試乗レポートしてみたいと思います。
SUVというカテゴリの車ですが、ホンダらしいというか、これはスポーツカーの血筋をもった走りにこだわったSUVですね。
その上品な外観とは裏腹に、乗ってみて思ったのは、フォレスターにも似た硬派な硬質感でした。トヨタのハリアー、RAV4や日産エクストレイルeパワーのようなふわふわっとした乗り味とは真逆の印象です。
●外観
デザインは本当に存在感があってカッコよかったです。ノルディックフォレストパールというカラーが展示されていて、外車の有償カラーのような雰囲気のある色でした。
こプレミアムクリスタルガーネット・メタリックという赤色も上品な色です。
プラチナホワイトパールの白色もすごく良くて、スバル車のセラミックホワイト色やクリスタルホワイトパール色よりも明るく輝いて見えてカッコいいです(嫉妬)。
試乗はXのガソリンとe:HEVで2回(どちらもFF)乗りまして、その後Zのe:HEV(FFと4WD)で2回です。
計4回じっくり乗ってみました。
●サイズ・加速感・運転のしやすさ
着地姿勢が低くセットできるのか、なんというかハッチバック車やワゴン車を運転しているような感覚です。腰高なSUVに乗っているという感じが薄いです。
後席もそれにつられて着座位置も低めなのかなと思いました。
全幅は1840mmとフォレスターよりも25mmも大きいのですが、ほぼ同じ感覚で大きさを感じることなく運転できました。
ボディに塊感があるというか、大きさを感じさせないです。
車重はXグレード(e:HEV)のFFでフォレスターと全く同じく1560kgでして、2Lガソリンエンジンにモーターが組み合わされています。
このモーターのおかげか出足は本当にトルクフルでスムーズです。フォレスターの1.8Lターボエンジンは過給されるまで出足がのっそりですので、ZR-Vの加速感は比べると力強くて良いですね。
アクセルを深く踏めばエンジン音もしっかり車内に入ってきますが、不快には感じるほどではなかったです。聴かせる音ですね。
FFの走り出しは軽快、4WDは重さがあるため比べるとゆったりですが、車のキャラクターには4WDの方が合っているかと思いました。
重い車って加速感を感じにくいのですが、まさにそれでいつのまにかスピードが出ている感覚です。アクセルをベタ踏みしても車体がとても安定していました。
ZR-Vは車体の剛性がちょうど良く、レクサスみたいなガチガチ感がないからか、しなやかで気持ちよく、違和感や引っ掛かりもなくカーブ、交差点をとても楽に曲がれます。フォレスターよりも楽に感じました。
ステアリングの応答もクイックで素直です。ここがグデグデで接地感が希薄だったエクストレイルとはだいぶ違います。
そしてイイモノに乗っている感覚があります。シートの造りが良くてホールド性、サポート性があり疲れにくそうですし、視界も良いです。
フォレスターの視界は良すぎるのですが、それと比べてもZR-Vは遜色なく、普通に運転しやすかったです。
内装は本革シートのZグレードが良かったです。おろしたての革でハリがありましたが、乗るうちに馴染んでくるでしょう。
ガソリングレードは車格的に少し力不足かなと思うところがありました。
街中は問題なかったのですが、郊外のバイパス等を走ると中間加速がもう少し欲しいです。
やはり、余裕のあるe:HEVがこの車には合っていますね。
乗り心地については色々と思うことがありましたので長めに感想を書いてみたいです。
●乗り心地について
全体的に足周りが引き締まっていて、乗員を揺さぶらない、フラットライド感を目指したんだろうなという印象です。
加速、減速を強めに行っても目線がずれません。ホイールベースが短めなので前後のピッチングはあるものの、姿勢の変化が極力平らになるよう、足周りでいなそうとしていますね。
走行音の車内への入り方は静かな部類で、ヴェゼルと比べると静かに感じますが、他社をみるとハリアーやエクストレイルの方がより静かに感じました。そして自分のフォレスターと比べても、フォレスターの方が静かですね。
ZR-Vはタイヤの高音域のノイズが少し後方から入る感じで、計4回乗ってみて感じたのは、やはりアレンザという新車装着のタイヤ自体がうるさいです。
新車装着タイヤはブリヂストンのアレンザH/L33、サイズはフォレスターと全く同じ225/55R18です。こちらは市販品「アレンザ 001」をメーカーがZR-Vの新車装着専用にチューニングしたもので、001は基本がポテンザ系のスポーツ寄りのタイヤですので音がうるさいです。
ZR-Vの試乗レビューやオーナレビューでは比較的静かとの記事も多かったのですが、大ウソです。このタイヤは本当にうるさい。
よくこのタイヤを静かと言えるものです。
アレンザ、音がうるさいです。
プロの評論家ってきっとお金もらっちゃうと、褒めるしかなくて社交辞令的なレビューになるんですよね。
私のような素人はそんな提灯記事には騙されません。嘘をつくなと言いたい。
このタイヤ、速度記号が市販品アレンザ 001は98Vですが、ZR-Vの専用アレンザH/L33は98Hに下げられております。剛性にこだわらず、接地重視で作ってあるようです。
タイヤのUTQGも市販品とは異なりこのような値です。
Treadwear 260
Traction A
Temperature A
Treadwearが260ということで摩耗が早そうなので、やはりチューニングしたといえど元がグリップ重視のスポーツタイヤなんですね。
乗り心地や静粛性重視のコンフォートタイヤにはしないという、ホンダのこだわりを感じました。
これ、メカニックさんから聞いたところ本来ミシュランだったタイヤが昨今の海外情勢から国内のタイヤ供給に変えたそうです。このためZR-Vにはブリヂストンのアレンザ H/L33か、ヨコハマのdB V552がランダムで装着されているそうです。
このアレンザH/L33、極低速域では路面のざらつきを感じることはなく滑らかな乗り味なのですが…
一方、少し荒れた路面に入ると乗り心地の印象は一変します。車内に入る大きな音はうまく抑えられているものの、身体にゴツゴツとした入力が伝わってきます。
そしでダッシュボードからはビリビリと振動に共振したビビリ音が発生していました。
これはタイヤなのかサスペンションなのか、短い時間での判断は難しいところですが、おそらく私はタイヤが9割がた悪さをしているかなと思っています。
まずブリヂストン製のタイヤってケースの剛性がとても強く作ってある気がして、チューニング品とはいえどうまく衝撃を緩和できていない気がするんです。この辺の縦のダンピングはヨコハマやミシュランのタイヤの方が乗員にとっては優しいでしょうね。
あと、ZR-Vのサスペンションは、この突き上げ感からしてリヤの減衰が少し強いのかなと思います。リバンプ側減衰が強い割には、入力初期の減衰立ち上がりが遅い気がします。
なんというか、日本車によくある
「硬い」と言われがちな乗り心地です。
フォレスターも同じようなセッティングと思っていますが、フォレスターの方がその減衰が弱いのと、ファルケンのオールシーズンタイヤの柔らかさもプラスになってトータルの乗り心地はZR-Vよりだいぶソフトです。
フォレスターはSTI Sportというグレードだけに搭載されている日立アステモ製のSFRDという周波数応答式可変ダンパーがあるのですが、ZR-Vの収束はそれ並に早いです。ただ、ZR-Vは振動が連続すると収束しきれず車内に伝わってしまい硬さを感じるので、ストロークがある割にはここは伸びが渋いんだろうなと。
ZR-Vはフロントはよく動いている気がするのですが、トータルではゴツゴツ感はぬぐえませんでした。もう少し乗り心地を改善できたらこの車は無敵ではと思います。
一方、街乗りではネガとなる硬さは高速走行が多い方や元気よくワインディングを流したい!というような運転好きな方にはピッタリのセッティングと思います。
これがFFの感想です。
これが4WDになると、硬さは残るもののだいぶ乗り心地が改善されて上質な乗り味に変化していました。
4WDはFFと同じような入力があっても、角が取れて丸くなるというか、お腹に響く感じの衝撃はなかったです。
4WDはFFと比べて50kgの重量増がありますが、リヤ周りの部品が増えることで衝撃の減衰に良い方向に影響しているのかもしれません。
そして4WDはFFより疲れないです。まっすぐ走るのでFFに比べると細かな修正舵が要らず、運転が楽ですね。FFではアクセルを強めにあけるとリヤが滑りだしていたのすが、4WDは同じ操作をしても安定していました。
4WDは走っていて楽しくなって思わずニヤけてしまいました。
●総評
走りが楽しすぎますね。こんなに面白いと思った車はSUVでは初ですね。
アーバン向けな外見なのにしっかり走れちゃうという、運転が好きな方には本当にハマるでしょうね。
他社の同クラスのSUVに乗った時の、やっぱSUVってこうなっちゃうよねっていうハンドリングのガッカリ感が全くなかったんです。
狙ったラインに車がちゃんと動いてくれます。フォレスターよりもハンドリングは間違いなく上ですね。
ZR-Vは自分のフォレスターより乗り心地は硬いけれど、すごく近い乗り味の印象を受けました。
他社の同クラスSUV(NX、ハリアー、RAV4、エクストレイル、CX-5)とは似てないんですよ。ただ、フォレスターには似ていて運転中違和感を感じる場面がなかったです。
乗ったあとで、親近感が湧いてきました。
スバルと同じで、走りに相当こだわって開発したんだろうということが車からビシビシ伝わってきます。
一言で言えば、とても運転しやすい。
普通はリヤサスの動きなんてよくよく注意して運転しないと気づかないものなんですよ。
それが街乗りレベルでビシビシ分かるということは、四輪がしっかり路面に接地して仕事をしているということです。
ホンダってすごいなぁ。
後はこの足回りの評価が正しいのかどうかちょっと気になるので、アレンザ H/L33をフォレスターにつけたらどうなるのか、中古品が出回るようなら試してみたいと思っています(同サイズですしちょうどタイヤの交換時期なので)。
●納期、おすすめのグレードと駆動方式
ZR-Vの雰囲気と車格を十分に味わうには、間違いなく、最上級Zグレード(e:HEV)の4WDがおすすめです。それでも乗り出し450万もあれば良いとのことで、コスパが良すぎませんかね?
ハイブリッドでこの価格、とても良心的と思います。
ハイブリッドはいらないよ、ガソリン車でいいよ、であればフォレスターをおすすめします。
ZR-V、大人気なのかe:HEVの納期はとても長く、2023年10月末時点で約1年程度とのこと。昨年の夏に先行予約で買った方々の納車がようやく終わってきていると伺いました。
現在はBLACK STYLEという内外装を黒で固めた特別仕様車が追加で出ていてそれがおすすめだそうです。
めちゃくちゃカッコいい…
半導体不足が解消には向かっているとはいえど1年も待つのかぁ、これから買われるオーナーさんは忍耐力求められますね。
メカニックさんのおすすめは、
断然4WDとことでした。新開発でかなり力を入れて作られてあるらしく、FFでは得られない上質さがあると。
私もそう思いました。
そして、
乗り心地重視なら絶対4WDです。
FFで感じた突き上げ感がだいぶ緩和されて、硬いながらも上質な乗り心地です。
4WDって、雪道悪路に強いだけでしょ?と思っている方が未だに多くいらっしゃいます。
それは大きな誤解です。スバルのフルタイムAWDを長く乗っていると、それがいかに間違っているかわかります。
4WDは通常のドライ路面、ウェット路面で真価を発揮します。そして直進性・コーナーでの安定性が高いです。一般道のわだちにも強く、高速道路の走行も含め、ありとあらゆるシーンで4WDは優れています。
要は普段の運転が楽になるから、距離問わず疲れにくくなるんです。
ZR-Vをこれから購入される方はFFだけでなく4WDも両方試乗されることをおすすめします。
ZR-V、乗り心地とタイヤの騒音だけ少し惜しいけど、他はすごく良かったです。
ハリアー、レクサスNX、CX-5、エクストレイル、アウトランダー、ZR-Vどれか1台を無料であげるからセカンドカーに選べと言われたら、ZR-Vの4WDですね。
ZR-V はこの中で1番「もっと走りたい」と思わせてくれました。運転が楽しくて楽しくて、4回も試乗させてもらった車って私の中では初ですよ。
そのぐらい個人的に心に残った1台でした。