「アルファロメオ」・・その名前を聞くだけで心が躍るクルマ好きは少なくないでしょう。
あのトップギアの名司会者であった"ジェレミー・クラークソン"も、長年にわたり、アルファロメオへの情熱と複雑な感情を抱いてきました。
彼はアルファロメオの車を愛しながらも、その欠点を痛烈に批判するという独特のスタンスで知られています。そんな中、
"You can't be a true petrolhead until you've owned an Alfa Romeo."
(アルファロメオを所有したことがなければ、真のクルマ好きとは言えない。)
という言葉を放ち、アルファロメオの車が単なる移動手段ではなく、感情を揺さぶり、愛憎入り混じる体験を提供するという彼の考えが込められています。
"Alfas are designed to be great cars, but they end up being great stories."
(アルファは素晴らしい車として設計されているが、最終的には素晴らしい物語になる。)
ジェレミーらしいユーモアと皮肉を交えたこのコメントは、アルファロメオの所有体験が単なるドライブではなく、人生のエピソードを生むものであることを象徴しており、これは実に味わい深い的を得た言葉であり、そのような車であると感じます。
私はこの159 JTS V6 3.2 Q4 Tiに限らず、全てのアルファロメオ全車、全てに通じて思う事は、
「こんなにコストパフォーマンスの良い楽しい車は世界中を探しても他には無い!」
と思えるほど、"遊べる車"であると思います。
新車当時、この159 JTS V6 3.2 Q4 Tiというエモーショナルなイタリアン・サルーンは、税抜価格¥565万円で販売されていました。
これにはアルファロメオならではの華やかなデザイン、精巧なエンジニアリング、そして特有の官能性がぎっしり詰まっています。
些細なオプションで価格は軽々と税込¥600万円を超えることもあったでしょう。
それでもこの車を選ぶオーナーたちは、「ただの移動手段以上の何か」を求めていたのです。
時は流れ、中古車市場では現在でもアルファロメオの存在感は独自の形で輝き続けていながら、とてもリーズナブルに魅力的なモデルが多数、手が届く範疇にあります。
この159 JTS 3.2 V6 Q4T Iに関しては、年式や走行距離、状態によりますが、¥200万円を超えない範囲が目安となっています。
もはや、極めて良好な状態のものや、希少な仕様となったTiなどのモデル、6MTのV6エンジンQ4はなりをひそめ、絶滅寸前虫の息です。
ヨーロッパにはありそうなものの、実は、V6エンジンのQ4は本当に見つからないのです。
実は意外にも日本は稀少モデルが多数輸入された「アルファロメオ天国」であったりもするのです。
これに加えて「巨大市場アメリカに輸出されなかった車」である為、特に数が少ないQ4システム搭載モデルやオリジナルのオプションが豊富な車両は、海外の一部の超マニアックなコレクターの間では密かに高く評価される傾向があります。
これは、映画007「慰めの報酬」で、悪役のマフィアが駆る黒い159 JTS V6 3.2 Q4 Tiが、主役であるボンドの2WDアストンマーティンDBSを悪路で追い詰めるシーンに心打たれた者達が多数世界に存在している影響もあり、オーナーズクラブやエンスージアストの勢力は海外でも根強いものがある為です。
Q4(フルタイム4WD)システムを備えた点では、特に過酷な自然環境の中におかれている車好きには注目され、重宝されます。
この構成は、アルファロメオが単なるデザインブランド以上であることを証明するものであり、走行性能の面でも評価が高いのです。
そのため、希少性という点では、特にこのV6エンジン搭載モデルは将来的なクラシックカーとしての価値を秘めていると海外フォーラムの一部メンバーの中で囁かれているのです。
市場に残る車両が減少する一方で、その独特な魅力を理解するエンスージアストの需要が続くため、適切にメンテナンスされた個体と価格は最低ラインで安定するか、輸出案件で上昇する可能性も0ではないのです。
カスタマイズの楽しさもまたアルファロメオの魅力の一つです。
中古車価格がそこまで高くないので、程度の良い中古パーツを探して自分でDIYを楽しんでみたり、サーキットへ思いっきり走りに行ってみたり「自分だけの一台」を作るための投資額も抑えながら遊ぶことも出来なくは無い車です。
その為、アルファロメオの下取り価格は全般的に、他ブランドの主流モデルと比較すると安く叩かれてしまう傾向にありますが、そんな事は気にしないで「ガンガン乗って遊ぶ車」だと思うのです。
これはこの車の"本質を捉えている"と言えます。
アルファロメオを所有するというのは、「単なる資産価値以上の何か」を求める体験だと言えます。
ですから、定期的なメンテナンスと愛情を注ぎ、自分でしっかりと世界中から情報やパーツやトラブルシューティングの情報を掴んで、パフォーマンスを保つことを楽しみながら乗り続けることができます。
専門店との付き合いや、そのショップやスタッフなどの人間性に疲れたり、嫌気がさして降りる事もあるかもしれません。
非常に気持ちはわかるのですが、それは本当に勿体無いことなんです。
そこは、もう一踏ん張り、自分自身でリサーチしつつ、自分のスキルでなんとかした時の喜びは、他車種では味わう事はできません。
維持費については、イタリアンカー特有の個性が時折「財布のエクササイズ」を求めてくる場面もあるでしょう。
ただし、それすらもこの車の持つストーリーの一部として楽しむのが"アルフィスティの流儀"です。
新車当時の価格から現在の中古市場に至るまで、常に「ただの車ではない」という特別な価値を提供してきたと感じ、憂鬱な仕事へ向かう道すらも、ひと時の楽しみと興奮を与えてくれます。
市場価値や希少性を超えた情熱と美しさを体現するこの車は、単なる移動手段ではなく、人生のパートナーとなる存在です。
その価格以上に豊かな経験と、運転の歓びを提供してくれる、それがこの車の真髄です。
