マルチリンクサスペンション 1
マルチリンクサスペンション 2
マルチリンクサスペンション 3
から続いています。
ここまでが、マルチリンクの基本的な考え方とハブの統制の仕方になる。
しかし、もう少し細かく観察すると5本のリンクでハブを支えると言う単純な構造であるが、それぞれのメーカーによりリンクの取り付け位置、長さ、角度、たわみの許容などに設計思想と、実験部隊が走り込んだ経験が反映されているのが面白いところだ。
この間まで所有していたCクラス、現在所有しているクラウンアスリート、レガシィの違いを見るとそこに各社の理想と妥協が見え隠れする。
マルチリンクサスに限らないが、サスを見て一番大きくてダンパーが付いているアームをロワアーム(正式にはスプリングリンク)と言い、なるべく長くしてダンパーはレバー比(ハブが1動く時にダンパーも1動くのがレバー比1で、アームの支点に近づくほど動きが小さくなる)の関係からハブのすぐそばに配置するのが基本となる。
ベンツはこの基本に忠実で、ダンパーをスムーズに動かすためなるべく垂直に使い、かつハブの近くに付けるためバネとダンパーを分けて、車体側への取り付け点も外に出してハブの直近に連結して理想的な配置を目指している。
他にもバネとダンパーを分ける効果は、それぞれ最適な硬さのブッシュを入れて、入力を分離することができるし、整備時にも別々に外すことが出来るというメリットがある。
これに対して、クラウンはロワアームが1クラス下のCクラスと比べても短く、またバネとダンパーを同軸にして(コストダウン)ハブ側への干渉を避けるためアームの中央部近くに付けられている。
スカイラインは、この点は忠実に上手く設計されているが、クラウンのこの設計は商品価値を何におくかと購入者の求める運動性のを見切っているためだと思う。
しかしチューニングで多少の変更は出来ても、基本設計の持つ癖は簡単に消すことが出来ないので、レクサスまでのプラットフォームの展開を考えたならばここはもう少し頑張っておきたかった点だと思う。
このため、ハブの動きに対してバネとダンパーの動きは小さくなり、小さい入力に対して正確にダンパーが動き難くなってしまう。
この対策として、モノチューブダンパーとして初期はガスで吸収しようとしているが、部品価格の制約なのか細めの物を使ってしまったため、計算通りの効果が発揮できていない。
あと9mmくらい太い物を使用すれば、油量も増えるしぐっと良くなると思うがここに原資を振り分けられなかったのだろう。ここだけは、レクサスは改善されている。
私が最近幾つか見たマルチリンクサスの中で上手い設計は、V36スカイライン>W203メルセデスベンツ>E90 BMW>B6 VWパサート>BL レガシィ>GRSアスリート=GSかな。
この間に入る車も多くあるが、上はいずれも運動性能としては比較的上位に入ってくると思う。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2007/06/29 22:51:23