車関係の掲示板を見ていると、オイルについでATフルードの交換についても話題に登ります。これもオイルと同じく、ガソリンスタンドでは2万kmでの交換を推奨していたり、色々な噂が流れていて整備書にはちゃんと明記されているのに、ユーザーにとっては不安の種のようです。
よくATオイルと言われる人もいますが、潤滑油ではなくブレーキフルード、パワステフルードと同じく作動油ですから、ATフルードです。
まず、ATフルードの話の前にATの構造はどこまで理解しているでしょうか?
良く間違って認識されていることに、ATはクラッチが無いと言う思いこみと、機械式ATと電子制御式ATの構造の違いです。
ATにもちゃんとクラッチが入っていて、ギアが切り変わる際には半クラッチの状態があって繋がります。このクラッチ、ペーパー系湿式摩擦材が使用されており、最新の物は和紙の製法と同じように、繊維を漉いて作っています。
次に機械式ATは新車で採用している車は無いと思いますが(日本車は早くから電子制御が進み、欧州車でも8年くらい前からほとんど無くなった)、切替をアクセルの開度と負荷による油圧によって、迷路のようなバルブボディを動作させてギアを変えるものです。
これに対して、電子制御式は速度、エンジン回転数、アクセル開度などの諸条件からECUにて判断して、機械式のバルブボディの役割を、信号によって電磁バルブを動作させて変速するものです。
ヨーロッパ車のAT化が進まなかった理由には、低温で適切な流動性を持ったフルードが無かったと言う理由もあります。量産車で北欧のような寒冷地で使用可能としたATは初代セルシオが初だったと記憶しています。(粘土の低いATフルードの開発が鍵でした)
そこで、ATフルード交換の謎について考えてみます。何が正しいのでしょうか。
謎1 古いATフルードは替えない方が良い
これは、機械式ATの頃に出来た話です。
この当時は、ATフルードの交換周期が整備書にも明記されていました。
以前はクラッチの素材も悪く、クラッチの削れたカスが出るため、定期的にATフルードとフィルターは交換の必要があり、これを怠るとバルブボディなど細い経路にスラッジとして堆積しました。
この堆積したものが、ATフルードを交換することによって、清浄性が上がり剥がれて、油圧によって動作するボール等に詰まってしまったことから、7万km位交換しなかったATフルードは交換してはいけないと言う話が出来たようです。
メーカー指定で交換していれば10~15万kmでオーバーホール時期がやってくると思いますが、通常の乗り方ならば10年ですから、ベンツのような高額な車でなければオーバーホール(40万円位)せずに廃車になったことでしょう。
古いATは変速時にアクセルを少し戻すなど、クラッチの労り方でもちはかなり変わってきます。
最新の電子制御式ATなら、そもそも無交換を指定しているように、クラッチからのカスも少ないですし、弱点であるバルブボディも無いので、長距離乗った車を交換したい場合、2ヶ月位の間隔で2回くらい交換すれば問題が発生することはほとんど無いと思われます。(保証するものではありませんので自己判断で)
謎2 ATフルードはメーカー純正で無ければならない。
ATフルードの規格は当初GMが規格化したデキシロン○-○が有名で、基本的に同じならば純正でなくても問題はありません。世界中でもATを内製しているメーカーは少なく、ドイツのZF、日本のアイシンAW、ジャトコ、愛知電機などで多くのメーカに供給しているので、独自のATフルードを使っている可能性は小さいです。
しかし、ATを内製しているメルセデス、ホンダの電子制御式については純正が望ましいです。
デキシロン規格、日本ではJASO規格がありますが、基本的には粘度の違いであとはメーカーによって添加剤が若干異なっていますが、内製ATでは変速のすべりやクラッチの強度などを考えて添加剤をブレンドしていると思われますので、純正以外のATフルードを使うと滑りが変わって、クラッチの寿命を縮めたりすることが考えられます。
某大手自動車用品店のピットメニューで使用してるATフルードを見てきたら、自社ブランドが書かれていましたが製造はモービルのデキシロン2Dで、ベンツ、BMWにも最適とか書かれていました。
ベンツ、BMWでもデキシロン2-Dを指定していたのは、機械式ATの車種までで現在は(国産車も含めて)デキシロン3-Fが一般的のはずで、大手自動車用品店でATフルードを交換するのはちょっとなぁと思った次第です。
ですから、自社のATの指定規格や純正のメーカーなどがわかっていれば、確認した上で交換してもいいですが、わからなくて交換したい場合はディーラーで行うのが安心です。
謎3 2万km毎に交換した方が良い。
交換によるデメリットは環境汚染以外はほとんど無いので、替えたい人は替えても良いですが、整備書通りの交換で10万kmは問題無いよう設計されています。
ただ、2万kmと言うのはスタンドやお店が儲けるための数字でしょう。
前にも書きましたが、車を長持ちさせたいならクーラントをちゃんと交換した方が色々な面でトラブル防止に効果があります。
謎4 ATフルードは交換しない方が良い。(メーカー)
各メーカーによって、耐久性の基準がありテストを行っているので、メーカーの指定通りにしていれば、通常使用において10万kmでダメになることは無いと思います。
ですが、どうしても替えたい人は替えても問題は無いです。
最近は、ATフルードの口に封印を付けたり、ゲージが無い車が徐々に増えていますが、これはスタンドなどで交換されて故障の原因になることが多いのでメーカー側の自衛策です。
ATフルードの量は厳密であり、少なければ駄目ですが、多すぎるのはもっと悪いですし、物凄い流速でトルクコンバータ内を流れていますので髪の毛みたいな小さな物でも混入すると、タービンが損傷する可能性があるので、交換するなら信用のおけるお店で行うことをお勧めします。
Posted at 2005/01/26 20:26:38 | |
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