まだ学生だった頃、専門はモーター制御でしたが、修士論文は半分趣味のような、スキーロボットの制御なるものを書いていました。
今は、センサもCPUも高性能なものがあり、2足歩行ロボットも珍しくなくなってきていますが、当時は2足歩行ロボットは夢とされており、どこの大学の研究室でも何とか成功させようと苦労している状況でした。
そんななか、こぶのある斜面は自立で直滑降、慣らされた斜面はターンが切れるロボットを作ろうと言うことで、DSPボードの設計からプログラム、ロボットの設計、製作までやっていました。
今でもそれほど状況は変わりませんが、スキーが何故滑るのか、何故曲がるのかと言うことを科学的、物理的に解説した書物は少なく、人がスキーをする際の数式化(状態方程式化)するという運動工学から手をつけました。
人間なら目と手足からの入力や、三半規管による状態把握によって意識しないで行っている動作ですが、これをロボットにやらせるために必要なセンサやそれを元に関節を曲げて転ばないように重心を移動させる事の難しいこと・・・
同じこぶなら学習制御させれば滑れるようになるものの、どのような制御を行っても、一発で滑るのは難しいことでした。
センサと言っても、今のように小型のジャイロは手に入らないですから、加速度センサから剛体振り子まで色々と試しましたが、意外と外部からの入力をうまく検出して、かつ細かな振動など拾わないためには、重さと長さを最適化した剛体振り子がいいセンサでした。
当時のスキー板はまっすぐで、カービングスキーと言う言葉すら無かったですが、色々と試行錯誤するなかで、物理的にきれいにターンさせるなら板のサイドカーブと、しなりが理にかなっていることや、こぶで転ばない(重心が板の外に出ず、動的に安定している)ためのスキー板の長さのの関係など、計算から求められることがわかりました。
今から15年くらい前までは、スキー板の長さは手を伸ばしてつかめる位とか、身長+15cmからうまい人だと+30cmなどと言われていました。これも、車のオイル交換の話みたいに誰もがそう思って板を選んでいました。
確かに板が長い方がスピードを出しても安定しているけど、重たいしこぶ斜面では取り回しが悪いし、そもそも人間は性能の良いセンサとアクチュエータを持っているので、短い板でもそう簡単に転びません。
この板の長さの話は、海外では昔からそんなに長いものが使われておらず、日本に道具を輸出した際に、ヨーロッパの人の体格に合った道具をそのまま買わせる口実として、手を伸ばしてつかめるくらいの長さが良いと言ったのが始まりだとう話もあります。
話がそれましたが、そういう意味では、現在のカービングスキーは合理性から言えば、滑り方、ターンの切り方などほぼ完成されたものかと思います。あとは、競技などの条件によって多少のアレンジで最適なものになるでしょう。
ロボットの方はと言えば、何とかこぶも転ばずに関節を曲げて滑るものが出来たわけですが、今、休みの日にスキーをしていても当時の癖で、無意識に今重心はどこにあるのかとか、色々と考えてしまいます。
今のカービングスキーは誰にでも滑りやすいので、より達成感を味わうには、わざと安定性の悪いショートスキーか、曲がりにくい以前のサイドカーブの無い長いスキー板で滑るとおもしろいかもしれません。
今は、2mなんて板を履いている人はいないからきっと目立つでしょうね。その前に手に入らないかもしれませんが。
しかし、簡単になるとつまらないのか、前後にもバランスの悪くなる1m以下のショートスキーも流行ったりしています。
Posted at 2005/01/23 02:51:43 | |
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