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2019年07月25日 イイね!

読むのもメンドクサイ屁理屈シリーズ「マツダ CX-9 ガソリン・ターボエンジン」

読むのもメンドクサイ屁理屈シリーズ「マツダ CX-9 ガソリン・ターボエンジン」マツダ6(旧:アテンザ)に搭載する前に草稿を書いたので、一部、マツダ6に当てはまらない部分があると思います。

本文中の写真は「2016年マツダ技報・新型ガソリンターボエンジン『SKYACTIV-G 2.5T』の開発」から拝借しています。

マツダのガソリン・ターボエンジンが面白い(写真)。国内向けにはMAZDA6(アテンザの代替わり)に、海外向けにはCX-9にも積んでいる(実際は、CX-9が先だった)。



ガソリン・ターボエンジンは高負荷・高回転時には燃料を濃い目(リッチ)に噴射して燃料を気化させることで熱エネルギー(気化熱)を奪い、シリンダー内の温度を下げようとする。「燃料冷却」と言い、ノッキング回避が狙いだ。低回転時のレスポンスと燃費が良くても、高回転になると燃費が悪化するから、アクセルの踏み癖があると、かなり燃費は悪くなる。各メーカーのダウンサイジング・ターボの燃費が「思っていたほど良くない」と言われる所以は、主にこれだ。

ガソリン・ターボエンジンの強敵はノッキングだ。ガソリンエンジンは燃料が混じった空気(混合気という)に点火プラグで着火し、火が点いた燃料はシリンダーの中で燃え広がっていく。瞬間的には「もう燃えたところ」、「今、燃えているところ」、「これから燃えるところ」が存在する。これを「火炎伝播」と言い、燃焼が移動していくイメージだ。伝播のスピードは1秒間に50~60メートルで、エンジンの中の燃焼室は遥かに小さいから一瞬にして燃焼するが、火炎伝播していることは間違いない。

ところが、シリンダー内に、ガソリンが着火する温度より高い温度の物が存在すると、点火プラグのスパークとは無関係に勝手に着火してしまう。しかも同時多発的に着火するから厄介だ。排気バルブやその周辺の煤が結構アブナイ。その時の火炎伝播速度は音速(秒速340メートル)を超える。音速を超えるとシリンダー内で衝撃波が発生する。ノッキングの時にガリガリ・ギリギリという音が出るのは、衝撃波でピストンやコネクティングロッドが振動し、シリンダーブロックが共振するからだ。一度ノッキングが始まるとシリンダー内の温度は一気に上昇し、ノッキングが止まらなくなる上、アルミで出来たピストンが溶けたり、最悪、コネクティングロッドやクランクシャフトを曲げたという例もある。ガソリン・ターボエンジンは、それぐらい、ノッキングは怖いのだ。

最近のガソリン・ターボエンジンは直噴が当たり前になっている。圧縮された吸気の圧力以上の圧力で燃料を噴射しないとシリンダーに入っていかないが、高い圧力で噴射することが出来るようになったからだ。燃料と空気が均一に混じるから、ノッキングのリスクも減り、昔に比べたら圧縮比は高くなっている。ターボで圧縮されて熱くなった空気はインタークーラーで冷やされているから、ピストンで圧縮されて再び熱くなった吸気でも、常用回転域ではノッキングは起こりにくくはなっている。ピストン天面の形状の工夫でシリンダー内の吸気が渦を巻いている所へ、ピストンの真上から燃料を噴射して空気と燃料が均一に混じるからだが、高負荷・高回転域となると温度も上がり気味でノッキングが怖い。

ところでターボで圧縮した空気を冷やす「インタークーラー」という呼び名に違和感、無い?直訳すれば「中間冷却器」だが、何と何の中間なんだ?正解は「エンジンでも圧縮するから」。

昔も今も高負荷域では燃料を多めに噴射して、揮発性の燃料であるガソリンが気化するのに必要な気化熱(気化エネルギー)を使ってシリンダー内の温度を無理矢理に下げ(燃料冷却という)、点火プラグにスパークを飛ばすタイミング(点火時期)も遅らせて、シリンダー内の温度が上がりにくくしている。

「点火時期を遅らせる」というのは、ピストンが圧縮行程の上死点(じょうしてん:空気を圧縮しているピストンの、シリンダーヘッド側の終点)に行った頃か、既にちょっと燃焼行程に入った頃、普通に考えれば非常識なタイミングで点火プラグでスパークを飛ばす。常識的な点火時期はピストンが圧縮行程の上死点に来るより少し前だ。先ほど書いた火炎伝播を考慮してのことで、ピストンが混合気を圧縮し切ったときに燃焼エネルギーも最大になって効率良く爆発して、トルクも上がるし、当然、燃費も良くなる。
ピストンが下降し始めてから点火すれば、ピストンでの圧縮は済んだあとだから、シリンダー内の温度は下がる方向に行くが、これではグローブを引きながらボールをキャッチするのと同じでピストンが受ける混合気の爆発による圧力は落ち、トルクは下がり、未燃焼の燃料も発生する。ノッキング対策は、「あちらを立てれば、こちらが立たず」でエンジン屋も手を焼いている。

エンジンがノッキングを起こしているか否かは、圧電素子を使ったノックセンサーで監視している。ノッキングが発生した時のシリンダーブロックの振動は、振動の周波数の範囲が限られているから判別し易い。ノッキングを感知すると、即座に燃料増量や点火時期を遅らせる、ノッキングを回避する制御が入る仕掛けだ。

もうひとつ、シリンダー内の温度が高くなる要素がある。ピストンが排気行程の上死点(じょうしてん:排気ガスを押し出しているピストンの、シリンダーヘッド側の終点)まで行っても、その先にある燃焼室の容積分の熱い排ガスは出せずに残ってしまう。

そこでマツダは考えた。「燃焼室に残る熱い排ガスを吸い出すこと(掃気)は出来ないか・・・」。これが実現できればノッキングや燃料冷却などの問題点はすべて解決するし、ターボも効率よく使える。

そこで考え出されたのが、下の写真のエキゾースト・マニフォールドだ。

写真の左が第1気筒で、右に向かって第2・第3・第4気筒と呼んでいる。気筒とはシリンダーのことだ。このエンジンの点火順序は4気筒なら普通の第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順で、排気も当然、この順番だ。そこで、排気行程で別のシリンダーから出た排ガス同士がぶつかる排気干渉が起きないように、まず第2気筒と第3気筒をつないで排気ガス通路を第1気筒+(第2気筒と第3気筒が一緒になった分)+第4気筒の3つにして、ターボに流れ込む手前で、ひとつにまとめた。4つ分を3つに、3つ分を1つにしたから4-3-1排気マニフォールドと名付けられている。

高速で流れる流体は、周囲のものを引っ張っていこうとする作用がある。昔、理科で習ったベルヌーイの定理(法則)から導かれるベンチュリー効果だが、大抵の人は忘れている・・・・・。

ざっくり書けば、流れる流体は、周辺の流体を引っ張る。

チャリンコで道路脇を走っていてトラック(バスでもいいが)に抜かれると、抜かれた瞬間に車道側にフラッと行くでしょ?トラック周辺の空気がトラックについて行こうとして、トラック後部が通った途端にその辺の気圧は一瞬下がる。逆に利用しているのはカーレースを見ていれば出くわす。前のクルマにべったりついていくのは、気圧が低いのを利用しているのだ。

利用効果があるかどうかはドライバー次第だが、公道でやる奴は目的地より先にあの世か警察に到着する。煽りで事故って危険運転が適用された前例があるので、虚栄心もいい加減にしないと、一瞬のことが一生を潰す。すぐ切れる奴は、前頭前野が未発達で、ガキの頃に我慢や抑制をせずに育った人に多いと、学者が論文を書いたのを読んだ。前頭前野の未発達は、ガキの頃がどうかなので、一生、改善は見込めない。加えて大抵、栄養不良で悪循環。

第一、すぐ切れる奴が自分を改善するとは思えない。ムショの臭い飯の方が栄養豊富かも。が、小生、専門外。

ところで駅のホームで線路に近いところに立っていて電車が通過するとき、後に倒れそうになるのは、電車が空気を外側に引き裂きながら走ってくるからで、気圧は上がっている。ただ、そのまま立っていて電車が通過すると、下手すりゃ線路に落ちる。これはトラックの例と同じだ。「黄色い点字ブロックより下がってお待ち下さい」では電車の通過速度によっては危険だ。電車の前頭部のデザインにもよるが。新幹線は空気抵抗を少なくするために前頭部が変な恰好をしているが、「空気抵抗を少なくする」ということは、余計に外側に空気を追いやろうとするから、尚更、怖いのだ。間に1本線路があっても、強い風圧を感じるし、1本先の線路を270km/hで通過した新幹線が線路の石(バラスト)を巻き上げて風圧でホームまで飛んで、列車を待っていた乗客数人がケガをしたことが岐阜羽島駅で発生した。流体をバカにしてはいけない。水とて同じで、川が急に曲がっている付近か、ほんの少し手前で水圧が高くなって堤防が壊れ、決壊に至る。

が、逆に利用したのが飛行機だが、自分で調べてちょうだい。

この定理を応用して実現したのが、このエンジンの排気ガスの流れのミソだ。写真の一番右の第4気筒の排ガス(赤)が、左隣の第3気筒の燃焼室に残留した排ガス(青)を引っ張り出そうとしているのが見て取れる。赤と青の出発点にある2個ずつの丸に棒状の物が付いた絵が排気バルブだ。よく見ると、第1気筒と第2気筒は閉じていて、第3気筒は閉じる寸前、第4気筒は開いているのも解る。

ベンチュリー効果の実用例はキャブレターだが、今どき、キャブレターなんて四輪では無い。二輪なら使っているかも。高速の空気がガソリンを引っ張り出すのがキャブレターの原理。効率を上げるためにツインキャブとか、2気筒に1個付けるソレックスやウェーバーがあるが、空気の通路を曲げないために空気の通路を真っ直ぐにしようとすれば、だれが設計しても2気筒に1個は付けないと無理。じゃあ、1気筒に1個付けたら、と言えばエンジンルームに収まらない。F1でやったことがあるが、逆効果になった。

要するに、高速で出て行こうとする排気ガスに、ひとつ前に出たシリンダーの燃焼室に残った排気ガスを引っ張り出してもらうという話だ。これが「掃気」で、熱い排ガスが燃焼室から居なくなることでシリンダー内温度を下げると同時に、シリンダー内も燃焼室内も空っぽにして新鮮な空気を吸気することが出来る。これでガソリン・ターボが苦手としてきた低回転域のトルクが大幅に上昇する。「掃気」に着目して実行したのは、マツダだけじゃないかと思う。

次の特徴は下の写真。

赤い丸のイラストは、排ガスが当たる方のターボのタービン・ホイールだ。排ガスが通る太い方の通路に黄色いバルブがあるが、1620rpmまでは、このバルブを閉じておいて上の狭い方の通路だけで排ガスを通すから排ガスの流速が速い。上に書いた掃気もするし、流速が速ければ、ターボの回転数が上がって過給できる。実際、1250rpmで350N・m(35.7kgf・m)ものトルクを発生させている。普通のターボエンジンならトルクがガタ落ちになる回転数なのに、逆に350N・m(35.7kgf・m)ものトルクを出すエンジンは、初めてお目にかかった。バルブが開くのが1620rpmと、微妙というか中途半端というか妙な回転数なのは、マツダのことだから計算ではなくチューニングで的を絞っていって出した適正値だろう。

因みに、このエンジンの最大トルクは420N・m(42.8kgf・m)/2000rpmで、同社の2200ccのディーゼルエンジン(2ステージ・ターボ付き)とドンピシャで一緒。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特性の違いはあるだろうが、持てるトルク感は想像がつく。トルク性能を示すグラフが下の写真だ。

すでに1000rpmで200N・m(20.4kgf・m)以上あるから、ターボ・ラグは、感じないはずだ。そこからは一気呵成の勢いで加速する。称して「ダイナミック・プレッシャー・ターボシステム」。


低回転高負荷域から190km/hの回転域まで理論空燃比(ストイキオメトリー、通称ストイキ:ガソリン1gを燃焼させるには空気14.7gが必要で、完全燃焼させる燃料と空気の重量比)で燃焼させているから、燃費は保証付きの様なもんだ。圧縮比が10.5とガソリン・ターボエンジンにしては高めなのに、レギュラーガソリンOKで、しかも理論空燃比(ストイキ)でノッキングしないのは驚きだ。

1620rpmになると黄色いバルブが開き、排ガスが両方の通路を通るが、十分な排ガス通路が確保できるから、大型ターボ並みの使い方が出来る。A/Rが大きい、高回転型ターボを使っているようなもので、よく使われる可変ジオメトリーターボ(VGターボ)と比べて20~25%のトルク向上が実現できたと言う。太い方の排気ガスの通り道が、微妙な円弧を描いている。これだけ太ければ、回転が上がって排ガスの量が増えても、ふん詰まりにはならない。

このガソリン・ターボエンジンのもうひとつの特徴は、最高出力が5000rpmで最大になり、それ以上の回転域では、最高出力をジワ~ッと下げていることだ。理由は「5000rpm以上まで回すことは滅多に無いから必要無いし、燃料が無駄なだけ」ということのようだ。最高出力はレギュラーガソリンで169kw(230PS)/5000rpm、ハイオクガソリンの場合は186kw(253PS)/5000rpm。レギュラーで十分で、文句が出る数値ではない。

ケチな自動車評論家連中は「(マツダの)ディーゼル・エンジンに出力を合わせて、窒素酸化物(NOx)の規制値が厳しいアメリカに持っていく」なんて書いていたが、もっと純粋な目で技術的に評価するのが自動車評論家の本来の仕事だ。マツダのクリーン・ディーゼルがアメリカでも販売されるのは、既に決まっているんだぞ。

更にもうひとつの特徴は「クールドEGR」だ。EGRは排ガスの一部をエンジンに再循環して、燃料をとことん燃やそうという発想だが、エンジンから出ですぐの排ガスは一番熱いから、それをエンジンに戻したら、シリンダー内の温度が上がってしまう。そこで、クールドEGRを採用した。エンジンから出てターボに入るまでの一番熱い排ガスの一部を水冷式EGRクーラーで冷やしてエンジンに戻す。これでシリンダー内の温度上昇は防げるし、排ガス中に残った燃料も燃焼できて燃費も良くなる方向に行く上に、排ガスもきれいになる。

他社のダウンサイジングターボもEGRを使ってはいるが、ノッキング発生を防ぐ為に燃料を増量して噴射したり、点火時期を遅らせているから、燃費は悪くなるは、パワーは頭打ちになるは、で、期待した出力が出ないと感じるからアクセルを深く踏み続け、余計に燃費を悪化させるという悪循環に陥っているが、このマツダのエンジンでは、そういうことにはならない。高回転までリニアに加速を続けるはずだ。

クルマの性能や完成度はエンジンだけで決まるものではない。ミッション・サスペンションといったデバイス、ボディ剛性やエンジンの搭載位置など、関与するものは多岐にわたる。同じエンジンでも、搭載車種によってトルク特性を変える場合もあるし、荷重分布に満足な結果が出なければ搭載しない場合もある。FFを基本とするエンジン+ミッションは横積みだから、車体幅で制限を受ける。なににでも積めばいいってものじゃない。

が、日本向けにも出してほしいのが本音だ。ここまで考え抜かれたエンジンは、所有するだけでも満足かも・・・。CX-9のサイズは全長:5065mm、全幅:1930mm、全高:1728mmと大柄で、ホイールベースに至っては2870mmだ。日本の道路・住宅事情に合うか?ということになれば、購入できるのは住居スペースに恵まれた人に集約するかも。

次回はHCCIの理論と実際でも書きますか・・・。
Posted at 2020/07/04 17:51:02 | コメント(1) | トラックバック(0) | 技術情報 | クルマ

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「長~い屁理屈シリーズ「マツダ CX-9 ガソリン・ターボエンジン」 http://cvw.jp/b/1538328/38904549/
何シテル?   07/25 01:10
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