2017年3月5日日曜日、福井県敦賀市に現存している旧北陸本線のトンネル群へ行ってきました。
今までに何度も行ってますが、歩きではトンネルの坑口付近を見るくらいで、たまにはトンネルの中もしっかり歩いてみようかなと思い、出かけた次第です。
あらためてちょっと調べてみると、このトンネル群は明治29年(1896年)に当時の北陸線が敦賀駅から福井駅まで開業した際に使用開始されたそうです。ということは、建設後120年余り経過していることになりますね。
北陸道敦賀ICで下りて、国道476号、かつての線路跡を転用した市道を通り、最初のトンネルへとやってきました(本当は国道476号沿いに樫曲隧道というのが保存されてますが今回はパス。)。
旧北陸本線葉原隧道(延長979m)
場所は北陸自動車道の葉原トンネルの真下にあたります。
このトンネルは内部に坂の頂点があり見通しが効かないため、交互通行用の信号機が設置されています(待ち時間約5分)。
車が邪魔にならないよう信号待ちする場所よりも手前に停めて、中へ入っていくことにします。
重厚な石積みの坑門が時代を感じさせますね。
坑口付近はアーチ部分を波板で覆っています。石積みの側壁にきちんと乗っかっているところをみると、煉瓦を剥がしてから改めて設置したように感じます。
ここから先は側壁に一定間隔で設置されている退避坑を追っていきます。
蒸気機関車から出た煤がこびりついています。側壁の石積みを見ると経年変化によるものか、たわんで見えます。
ここは漏水で煤が洗い流されたのか煉瓦の地の色がよくわかります。
再び煤まみれな場所へ。白色と黒色の煤がまだら模様になっています。
次々と退避坑が現れます。基本の形は同じですが、雰囲気は全然違います。
トンネル坑内の景色はごく単調なもので、どんどん奥へと歩いていってしまいます。ふと、「このままいくと往復で2 km近く歩くことになるなぁ。」と思い、一旦切り上げて戻ることにしました。
坑口に戻ってきました。
さて、車に乗り込み、北陸自動車道の敦賀方面へ向かう車線と並行しながら次のトンネルへと進みます。
旧北陸本線鮒ヶ谷隧道(延長64m)
ご覧のとおり短いトンネルで、今ならロックシェッド(洞門)として造りそうな感じです。
こんな短いトンネルですが、退避坑が1か所だけ設けられています。現状ではしゃがまないと入れないサイズですが。
反対側の坑門です。トンネル内を通る太いケーブルは電力線なのか電話線なのか何でしょう?
旧北陸本線曽路地谷隧道(延長401m)
ここはトンネル内が緩いカーブを描いています。
坑内の写真を撮ってびっくりしたのが、画像がほとんど白黒写真にしか見えなかったこと。
トンネル内がこれだけ白黒になるほど煤煙をまき散らしていたわけですね。急勾配が連続する区間なので、蒸気機関車も必死だったのでしょう。
反対側に出てきました。
積雪で折れたと思われる竹が折り重なっています。
旧北陸本線第一観音寺隧道(延長82m)
反対側が良く見えています。
ここの退避坑はすべて石積みになってます。
反対側の坑口の天井にはネットが。煉瓦の落下防止のためでしょうか?
反対側です。付近の斜面で法面工事をしているため防護壁がトンネル坑門にかかっています。
旧北陸本線第二観音寺隧道(延長310m)
このトンネルも緩やかにカーブを描いていて、先を見通すことができません。しかし、信号機は設置されていません。
損傷具合を調査したと思われるチョークの書き込みがたくさん残っています。
煤で白黒な退避坑たち。
反対側です。
曲谷隧道(延長260m)
こちらも坑内は緩やかにカーブしていますが、やはり信号機はありません。
トンネル坑内は明るく見えていますが、実際にはこの写真よりも薄暗いです。
漏水で地肌が出ている所だけが煉瓦トンネルであることを認識させてくれます。
ひたすら煤だらけ。
反対側に来ました。
旧北陸本線芦谷隧道(延長223m)
トンネル内でも日中明るい場所は苔が生えて緑色になってます。
しかし、奥は灰色の世界。
漏水がひどいのか全面波板で覆われています。
今までのトンネルは側壁部分が石積みでしたが、このトンネルは側壁部分・アーチ部分ともすべて煉瓦積みになっています。
煉瓦の隙間から湧水が滾々と出ています。
また灰色へ。
反対側です。見てのとおり一直線。曲谷隧道の坑口も見えています。
旧北陸本線伊良谷隧道(延長467m)
ここは交互通行用の信号機が設置されています(待ち時間約3分)。
今までのトンネルの坑門は石積みでしたが、ここは煉瓦積みになっています。
坑口付近は苔がたくさん生えています。
煉瓦の目地の補強と漏水防止対策を施したのだと思われるところがピンク色になっています。
ここは途中まで歩いて引き返しました。
反対側です。
私が写真を撮っていたのを見て、たまたま信号待ちしていたドライバーさんも車から降りて、スマホで写真を撮ってました。
さてさて、ようやく「山中越え区間」最後のトンネルに来ました。
旧北陸本線山中隧道(延長1,170m)。この区間で最も長いトンネルです。
ここもトンネル坑門は煉瓦積み。坑門上部にあった扁額は保存のために剥ぎ取られてしまったので、その部分だけ欠けています。
中に入り、どんどん奥へと進んでいきます。
壁面の補修跡ですね。
通信線用の支柱でしょうか?
新しく煉瓦を積み替えてます。これはごく最近のものと思われます。
このトンネルは古い煉瓦トンネルによく見られる白華現象が目立ちます。
もちろん煤が付着している所もあります。
3分の1くらい歩いたところで車に引き返して、反対側へとやって来ました。
この場所のかつての写真ですね。
山中隧道の今庄側坑門。こちらも扁額が剥ぎ取られています。
碍子が付いていた部品の残骸でしょうか。
このトンネルは至る所で漏水が見られます。
煉瓦の落下防止のための網ですね。
煉瓦の間の目地のモルタルがすっかり痩せて、煉瓦もボロボロです。
煉瓦に片栗粉を塗り付けたように白華現象が出ています。
後年の安全基準を満たすために追加で造られた退避坑のようです。造りが雑ですね。
大型の退避坑。煉瓦積みで造られていて、周りとの繋ぎ部分も滑らかなので、おそらく竣工当時からのものと思われます。
ここにいる時に通行車両がやって来たので、中に入って待避してました(笑)。
坑内にずっといて体もだいぶ冷えてきたので(漏水で濡れた坑内に風が通るのでとにかく冷えます。)、ここで引き返しました。
最後に撮り忘れていた葉原隧道の今庄側坑門を写真に収めてから帰りました。