仮定:20XX年、日本で「人間が車を運転すること」を禁止する法律が衆参両院の賛成多数で可決・施行された。
これ以降「人間が運転する機構を持つ車を運転」した場合には、刑罰が適用されることになった。
<前回のお話>
現代日本において
・ものごと(ルール≒法律)の決め方
→間接民主政(多数決)
・多数決で決まったもの、ルール(法律)の扱い
→原則:国民は順守義務
例外:人権(色々な種類がある)に対して
許されない侵害をしているルール(法律)
は無効
※憲法=法律の上位に位置し、人権のカタログなどを定めている。
人権=「多数決を以ても侵害できない最低領域」のこと
いろいろな種類がある。
<今回のお話>
1 多数決によって、新たなルール(法律)が定められ、これまではなかった新たな
「制約」≒これまでできたのにできなくなったこと
「義務」≒これまでする必要がなかったのにしなければならなくなったこと
を課せられることがあります。
2 私たち国民は
①原則的には多数決の結果(出来上がった法律)に従わねばなりません
②しかしそのルール(法律)が、「人権に対して許されない制約」をしている際には、そのルール(法律)の無効を主張することができる、ということを、先ほど確認しました。
3 違憲審査基準
①裁判になった際に、「ある法律が憲法に適合しているか」を審査するものさしがあります。これは「違憲審査基準」と呼ばれています。
②「法律」の作り方(構造)
「違憲審査基準」を考えるに当たって、「法律の作り方」を簡単に知っておく必要があります。
「法律(ルール)」というのは、必ずある「目的」を達成するために作られています。
そして、その「目的」を達成するためのいろいろな「手段」の中から、一つ(いくつか)を選んで
「制約」したり「義務」を課したりしています。
EX)●●県青少年保護健全育成条例
目的:青少年の健全な育成を図ることを目的とする
手段:「青少年」を「18歳未満の者」と定義
「青少年」と「みだらな性行為、わいせつな行為」をすることを全面禁止→違反に刑罰
※注)「青少年の健全な育成を図る」という目的を達成するためには、「青少年に教育する」「回りの大人に教育する」「健全な育成に資する環境を作る企業に補助金を出す」など色々な方法があり得るところです。それらいろいろな方法の中で、この条例は「青少年と性行為、わいせつ行為をすることを全面禁止する(刑罰を科す)」という手段を選び取ることで、「青少年の健全な育成」という目的を達成しようとしていることになります。
③「違憲審査基準」の内容
「法律」を審査する「違憲審査基準」も、この「目的」と「手段」に着目します。具体的にいうと
「目的」←正当なものか?
「手段」←目的達成のためにその手段が
ⅰ:効果があるのかないのか(効果がゼロの手段を採っていたら×)
ⅱ:効果があるとして、十分な効果があると言えるか(効果が十分にないならその手段は×)
ⅲ:その手段を採ったとして得られる利益と失われる利益のバランスが取れているのか(効果があったとしても副作用が大きすぎるなら×)
などという観点から、その法律を審査するのです。
さらに、これまでの判例によると「目的・手段審査」の「厳しさ」を変化させるという運用がされています。以下のとおりです。
「厳しい目的・手段審査」→法律が違憲になりやすい・・「制約される権利」が超重要&「制約方法」が厳しい
「緩やかな目的・手段審査」→法律が合憲になりやすい・・「制約される権利」が強くない&「制約方法」緩やか
「中間的な目的・手段審査」→その中間 ・・ア、イの中間
という風に、基準の厳しさ自体を変えた運用をするのです。
4 まとめ
あるルール(法律)が「ゆるされる制約」か「ゆるされない制約」かを審査する手順は、3で見た違憲審査基準を用います。具体的に、考える順序としては、以下のようなものになるでしょう。
①「制約されている不利益」が、憲法のいう「人権」の中のどれによって保障されているか
→重要な「人権」の核心部分であるのか、あんまり重要でない「権利」なのか、「権利」とも呼べない弱い「利益」か
②そのルールで採られている「制約手段」が「強い・広い」か「弱い・狭い」かを考える
③ ①&②をもとに、「厳しい目的・手段審査」「緩やかな目的・手段審査」「中間的な目的・手段審査」のどの基準を使うのかを決める。
④ 問題となっている「ルール(法律)」の目的や手段を審査して、合憲か違憲かを決定する
以上、今回は「違憲審査基準」の中身を見てきました。
この基準だけ見てもなんのことやら、意味わかんないと思いますので、次回はいよいよ
「自ら運転する自由」を制約・禁止する法律ができた際に
、それが「許されない制約(違憲)」と言えるのか、言えないのか、について、見ていきたいと思います。
※「人間が運転する自由」を制約・禁止する法律が定められた際、それに対抗することができるかどうかを、法的観点から考察するシリーズの3回目です(4月1日ですが真面目)。
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Posted at
2015/04/01 22:25:21