ホットイナズマですが、その昔発火事故を起こしてリコール騒ぎになったのは割と有名ですが、なぜ発火したのかはよくわからない、という方も意外と多いのではないでしょうか?
原因については、以前にこちらでも書いたのですが、オクなどを見ると未だに自作ホットイナズマを販売している人がいるし(本家もまだポケット型のを売ってるみたいですが)、自作に興味を持つ方もいると思うので、注意喚起も含めて「なぜホットイナズマが発火したのか?」について、再編集してお送りします。
出典「あなたの知らないオカルトチューンの世界(改定版)」
https://minkara.carview.co.jp/userid/2036415/blog/47595674/
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ホットイナズマですが、回路保護設計がしょぼかったせいで(たぶんヒューズだけと思われる)、サージ電圧に耐えられず発火事故を起こして、リコール騒ぎになりました。
以下は、国交省自動車局プレスリリースから引用です。
『不具合の内容
電圧安定化装置(ホットイナズマシリーズ)において、回路保護機構の設計値を超える、バッテリから生じるサージ電圧(70V~20KV)が繰り返し印加されることにより、基板部品及び基板の一部が破損し、これをきっかけとして基板パターン間での放電が生じ、基板へ炭化導電路が生成され、トラッキング現象が起き、発熱、発煙、発火が生じるおそれがある。』
↑こちらは類似品をバラしたもの(画像はJACKING UPINGというHPより引用)一応ヒューズは付いているが・・・
「バッテリから生じるサージ電圧」という表現が解りにくいですが、要は開閉サージなどの外来ノイズで間違いないです。
今回は基盤のトラッキング(ショート)が原因ですが、サージ電圧でコンデンサ自体が破裂、発火に至る可能性もあります。
↑外来ノイズは主に開閉サージ(特に遮断サージ)でしょう。ちょっと電気に詳しい程度でもせいぜいロードダンプぐらいしか認識していないかもしれませんが、実はA/Cを切った際など、スイッチ(リレー)のオフ時の急激な電流変化による逆起電力により、過渡的な高電圧サージが発生することがあります(画像は菊水電子工業のPDF資料より引用)
↑純正パーツ、あるいは社外品でも真っ当なメーカーの製品であれば、EMS(Electromagnetic Susceptibility)を考慮して当然各種バリスタやツェナーダイオードなどでサージ対策がされていますが、それ以外だと何も考えておらず(あるいは知らないだけか)、素人DIYレベルの設計なので回路保護はヒューズのみという場合があります。その手のメーカーの後付パーツや、自作品を取り付ける場合は気をつけてください(画像はTDKのHPより引用)
なお、リコールなので現在でもメーカーに言えば対策部品(事故以降の製品にはツェナーダイオードが付いているようなので、たぶん同じもの)を無償配布して貰えるようですが、類似品や自作品にも同じリスクがありますので、未だにコンデンサチューンをやってる人はもう殆どいないとは思いますが、一応注意喚起しておきます(このメーカーの製品は販売数が多かったので、たまたま発火事故が続いただけでしょう)
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という訳で、サージ対策をしていない自作ホットイナズマは発火の危険性があります(同じ理由から、中華激安HIDとかLEDとかも怖くてつけられません)
そもそもコンデンサチューンですが、
(1)走行中のバッテリーを電源と見做している時点で、論理が破綻している。
(2)バッテリーに並列接続したら、充電電流を平滑化(リップル電圧の波を穏やかに)して終わり。
つまり、国交省自動車局のいう「電圧安定化装置」なるモノの真の目的及び効果は、
充電電流の電圧を安定化させる事だったというオチです。
↑平滑コンデンサの回路図の例(画像は「やさしい電気回路」というHPより引用)
※バッテリーの寿命を延ばす効果も期待できないようです。
参考)https://www.chuden.co.jp/resource/seicho_kaihatsu/kaihatsu/kai_library/news/news_2020/news_151_13.pdf
にもかかわらず、ネットを見ると、キャパシタで容量アップした自作イナズマの効果を意気揚々と説く人がいたり、かと思えば、色々と理屈を並べた挙げ句、ご丁寧にオシロを使って効果測定をして自説を検証している人がいたり・・・そういう人の中には、整備士や(回路設計をしているという)エンジニアもいて、更にはご自身のブログまで持ってるという方もいる。
理系、しかも整備士や電気を本業とする人が、なぜこの事実(充電電流に流れて終わり)に気が付かないのか、文系の私には不思議で仕方がないのですが、逆に言うと、アーシングの時にも書いた通り「バッテリーは常に電源である」という間違った認識を持つ人(「充放電を細かく繰り返している」という人も含む)が、理系の人にも案外多いからでしょう。
これみよがしに、本体から太いケーブルが出ていますが、専門家が見れば「こんな物をバッテリーに付けても何の意味もない」と一目で解る代物ですから、そりゃ排除命令の対象にもなりますよ・・・
もっとも、単に車の電気の流れを勘違いしていた人を除けば、(陰謀論と一緒で)こういうのにハマる人はそれでも信じるのでしょうから、取り付けるなら、せめて対策済みの本家の商品(ホットイナズマポケットスーパー)にした方がよろしいかと。
ちなみに、スーパーでない旧タイプのポケットをバラした人のブログを見ると、構成部品は470μFのコンデンサ、インジケーターのLEDと抵抗、あとはツェナーダイオードだけだったそうです(簡単に言えば、コンデンサがあることで、LEDがディレイ方式で点消灯するという仕組み)
(おまけ)
ネット上で、ホットイナズマの秘密は内臓されたICにあって、そのICからの信号でECUを誤作動させ云々・・・と長々と主張する暇人を見かけましたが、タチの悪いブラックジョークでなければ、かなり重症の人です。
あのICはNE555という昔からあるタイマーICで、インジケーターのLEDを点滅させるために付いている事ぐらい、電子工作の知識がある人なら誰でも解る話なので。
※タイマーICについて
参考)https://engineer-education.com/timer-ic/
ちなみに電子工作と言うと、小学校高学年の頃、エレキットを2~3個作ったほか(本当はもっと欲しかったが、高かった)、中3の時に技術の授業でハンダごてとインターホンを作って以来やってませんが、懐かしい画像が見つかったのでupしておきます。
↑これはイラストの感じからすると、自分が中学生の頃の製品?年代によってケースが違ったりするみたいですが、自分が作った80~81年頃もこの青いケースでした。あと、80年代半ば頃には、鳥山明さんのイラストが描かれた「電脳小箱」というカセットケースサイズのも出ていたみたいです(画像はELEKIT VOICEというHPより引用)
Posted at 2024/05/10 08:19:39 |
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