真珠湾攻撃・マレー作戦・蘭印作戦 の続き。
1942年1月20日 帝國海軍連合艦隊 第一航空艦隊 南雲機動部隊が、南太平洋 ニューブリテン島 ラバウルを空襲制圧、水上機部隊の進出に続き、内地と台湾から戦闘機と陸攻も逐次到着しラバウル航空隊基地はソロモン、東ニューギニア方面への航空攻撃の拠点となる。
1月25日 帝國陸海軍は南太平洋のニューカレドニア・フィジー・サモア諸島の攻略によりオーストラリアをアメリカの勢力圏から遮断孤立させる米豪遮断作戦「FS作戦」の一環としてソロモン諸島のツラギ島を占領しニューギニア島南東岸に位置し連合国軍の拠点であるポートモレスビーの奇襲攻略「MO作戦」を決定する。
ダーウィン空襲
日本軍の蘭領東インド諸島占領に対抗する連合国軍の各基地を使用不能にするべく帝國海軍は、北部オーストラリア・ダーウィンへの航空攻撃を開始した。
2月19日 第一航空艦隊 の「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」空母4隻は豪州北西のチモール海洋上から艦載機 九九艦爆、九七艦攻、零式艦戦 計188機からなる攻撃隊を発進させ、オーストラリア北部ダーウィンの港湾施設に甚大な被害を与え米豪艦船9隻を撃沈する。
セレベス島 ケンダリーに進出した高雄海軍航空隊がチモール島経由で一式陸攻54機により豪州空軍ダーウィン基地に更なる被害を与え軍用機20機を撃破した。
インド洋作戦・セイロン沖海戦
1942年3月26日 日本の石油資源供給地になった東南アジアから英海軍東洋艦隊の脅威を排除、北アフリカで苦戦する同盟国ドイツ・イタリアの後方支援に日本海軍はインド洋作戦を開始する。
本作戦は先のマレー・スラバヤ・バタビア沖海戦で日本海軍に連敗し大西洋から増援を受け戦力を回復しつつある英海軍東洋艦隊のセイロン島 コロンボとトリンコマリーの基地を南雲空母機動部隊をインド洋に転用して艦載機で空襲する作戦である。

第一航空艦隊はインドネシアのセレベス島の南東岸スターリング湾を出港、オンバイ海峡を通過しジャワ島の南方よりインド洋に入った。
しかし英軍は事前に日本軍の通信を傍受し暗号を解読、日本海軍のセイロン島攻撃を事前に察知してた英東洋艦隊の主力はアッドゥ環礁に待避していた為に難を逃れコロンボへの空襲では飛行場と港湾基地施設は破壊できたものの第一目的の英海軍艦艇に対する戦果は港内に残存していた駆逐艦「テネドス」と仮装巡洋艦「ヘクター」の2隻撃沈に終った。

インド洋上の旗艦「赤城」右舷後方「蒼龍」「飛龍」「比叡」「霧島」「榛名」「金剛」「瑞鶴」「翔鶴」
4月5日 改装工事中に急遽出港しコロンボで向かう重巡洋艦「ドーセットシャー」と輸送船団護衛の任務を控えた重巡洋艦「コーンウォール」は南雲機動部隊に発見され「蒼龍」所属 江草隆繁少佐が率いる爆撃機隊の急降下爆撃で撃沈された。

英海軍東洋艦隊 重巡洋艦「ドーセットシャー」 同型重巡洋艦「コーンウォール」
4月9日 南雲機動部隊は艦攻91機・戦闘機30機でセイロン島北東部トリンコマリーを空襲。
機動部隊が二次攻撃の艦爆85機・零戦6機の発艦準備中に索敵に出ていた戦艦「榛名」の水偵から「敵空母一、駆逐艦一、南下中」の報告を受ける。
これは5月に連合国軍が予定しているマダガスカル島攻撃準備にトリンコマリー軍港に向かっていた英海軍軽空母「ハーミーズ」と豪駆逐艦「ヴァンパイア」だった。

英海軍東洋艦隊 空母「ハーミーズ」 豪海軍 駆逐艦「ヴァンパイア」
第二航空戦隊 山口少将は「蒼龍」から「直チニ攻撃隊発進ノ要アリト認ム」と信号を旗艦「赤城」へ送るも、南雲中将は認めず第二次攻撃を用意していた艦爆隊67機に兵装変更して出撃する。

この時、英海軍も南雲機動部隊の位置を察知、英空軍のウェリントン爆撃機9機が「赤城」に対して編隊爆撃を行う。
「赤城」は対空防御砲火と直掩の零戦が爆撃機5機を撃墜、投下された爆弾は挟叉したが、運良く一発も命中しなかった。
この間、南雲機動部隊の空母にはトリンコマリー攻撃から第一次攻撃隊が帰還しており、英空母の攻撃に向かうべく収容した攻撃機に補給し魚雷を積む最中で英空軍爆撃機の接近に全く気付いていなかった。
出撃した艦爆隊は逃走する英軽空母「ハーミーズ」と豪駆逐艦「ヴァンパイア」を発見して撃沈させた他、退避中のタンカー2隻と哨戒艇「ホリホック」を急降下爆撃で撃沈した。
海戦の結果
英海軍の損害 軽空母1隻撃沈 重巡2隻撃沈 仮装巡1隻撃沈 駆逐艦2隻撃沈
油槽船2隻撃沈 哨戒艇1隻撃沈 航空基地及び航空機 喪失約50機 港湾施設破壊
日本海軍機動部隊は艦艇損害無し 零式艦戦4機 九九式艦爆10機 九七式艦攻2機 喪失。
帝國海軍の完勝だったが当初の目的である英海軍東洋艦隊を撃滅できなかったが、駆逐したことにより英海軍の艦載機や水上艦艇よる攻撃は排除されインド洋を制圧した。
本作戦終了後、機動部隊は内地に帰還し、第五航空戦隊は珊瑚海の作戦に派遣する。

空母「瑞鶴」を発艦する愛知 九九式艦上爆撃機
当時、急降下爆撃の成功率は熟練搭乗員でも25%前後とされていたが。
軽空母「ハーミーズ」への急降下爆撃は45機が投弾して命中弾37発、命中率82%
重巡「ドーセットーシャー」と「コンウォール」の2隻に対する命中率は87%に及ぶ。
この正確無比な爆撃は名手 江草隆繁少佐を初めとする日本海軍パイロットの高い技術と九九式艦上爆撃機の優秀さを証明し後に太平洋戦争中に行われた最良の航空攻撃と評価された。
しかし、その反面、この海戦で日本海軍にも多くの問題点が露呈した。
1.暗号電文が傍受、解読されていた。
2.情報収集・偵察・索敵の不徹底で東洋艦隊を捕捉できなかった。
3.敵空母を発見した際、陸上と艦船用の兵装転換を行い迅速な攻撃を行わなかった。
4・敵爆撃機の接近に気づかず攻撃された。
帝國海軍はこれらの教訓を生かせず、ミッドウェー海戦でも同じ過ちを繰り返す事になる。
珊瑚海海戦
本海戦は史上初めての空母機動部隊同士による戦闘であり、互いの艦艇母艦を視界外に艦載機を主力として戦った航空海戦である。

1942年2月24日 ラバウル海軍航空隊がニューギニア島南東岸ポートモレスビーの連合軍基地への航空攻撃を開始する。
4月25日 帝國海軍はポートモレスビー奇襲攻略にインド洋作戦から内地に帰投中の第一航空艦隊 原忠一少将揮下 第五航空戦隊を「MO作戦」の援護航空支援に井上成美中将の第四艦隊に編入、空母「翔鶴」「瑞鶴」がトラック島泊地に到着する。

第五航空戦隊 空母「翔鶴」
米艦載機の空襲
5月3日 ラバウルから直線距離 1,020km離れたガダルカナル島 ルンガ泊地北東対岸に位置するフロリダ島南端の小島ツラギに第十九戦隊が上陸し水上機基地を設営した。
5月4日 暗号解読により日本海軍の行動を察知した米海軍は珊瑚海にフレッチャー少将指揮下の第17任務部隊 空母「レキシントン」を派遣、日本軍が上陸占領して間もないツラギ島を攻撃。
「レキシントン」攻撃隊は駆逐艦「菊月」と掃海艇3隻を撃沈、敷設艦「沖島」 と駆逐艦「夕月」を小破させて南へ退避した。
5月5日 第17任務部隊は空母「ヨークタウン」と合流、給油艦「ネオショー」から燃料補給中に索敵哨戒中の九七式飛行艇に発見された為、日没後に北西に転舵する。
フレッチャー少将は補給を終えた空母部隊から 給油艦「ネオショー」と 駆逐艦「シムス」を分離して次の給油点に向かわせた。

第17任務部隊 空母「レキシントン」
5月6日 ツラギ島上陸を支援した軽空母「祥鳳」 第六戦隊 重巡洋艦「青葉」「衣笠」「加古」「古鷹」 駆逐艦「漣」の6隻と共に米空母の追撃にショートランド島から出港する。

零式三座水偵を収容する重巡「青葉」
「翔鶴」「瑞鶴」第五航空戦隊に索敵哨戒中の九七式飛行艇から「敵空母発見」と入電。
この通報を受けて戦隊は南下するも、索敵の不備から米空母機動部隊まで目と鼻の先70海里
飛行時間約20分まで接近したが、20:00時に北西に反転、先制攻撃の機会を失う。
誤認、給油艦を攻撃
5月7日 07:30 「翔鶴」の偵察機が米空母、油槽艦、重巡洋艦発見を報告。
これを受け直ちに「瑞鶴」「翔鶴」から計78機の攻撃隊が発進したが、偵察機からの報告はタンカーと空母を見間違えた誤報で実体は次の給油点に向う給油艦「ネオショー」と駆逐艦「シムス」だった。
誤報に気付いた攻撃隊は九九式艦上爆撃機36機のみで急降下爆撃を行い両艦を撃沈した。
「祥鳳」撃沈
同じ頃、ヨークタウンは索敵機から「北西に日本の機動部隊あり」の報告を受ける。
09:25 「レキシントン」「ヨークタウン」は92機の攻撃隊を発進させ北西に向かう。
11:00 レキシントン攻撃隊が軽空母「祥鳳」と「青葉」重巡4隻・駆逐艦「漣」からなるMO攻略部隊を発見して攻撃を開始した。
直掩に上がっていた九六艦戦3機がドーントレス1機を撃墜し側近の重巡も必死で防戦するも28機のレキシントン攻撃隊は他には目もくれず軽空母「祥鳳」一隻に殺到した。
激しい空襲中に急降下爆撃を全て操艦で回避しながら「祥鳳」は零戦3機を発艦させる。

第六戦隊 軽空母「祥鳳」
11:20 雷撃機と爆撃機から同時攻撃を受け、魚雷もしくは爆弾の命中で操舵装置が故障した為に「祥鳳」は全く回避行動を執れなくなった。
11:31 伊沢石之介 艦長は「総員上甲板」の命令を下したが多くの兵員は持ち場を守る。
11:35 「祥鳳」は群がる敵機に囲まれ、爆弾13発と魚雷7本が命中、黒煙と炎に包まれ艦首から沈み始め、艦尾を海面から突き出しスクリューを回転させながら沈没した。
帰る母艦を失った直掩戦闘機の内3機はデボイネ基地に着陸、3機は消息不明になる。

「祥鳳」は太平洋戦争において戦闘で日本海軍が初めて喪失した航空母艦になった。
薄暮攻撃
第五航空戦隊は給油艦を沈めた第一次攻撃隊を収容、「青葉」の水偵より米機動部隊が北西方向への航行をやめ反転し、距離が縮まったという情報が入電した。
敵空母が攻撃圏に入る頃は薄暮攻撃となる為、攻撃隊は夜間着艦可能な熟練者のみを選抜。
16:15 日没前、「瑞鶴」「翔鶴」から 九七式艦攻15機と九九式艦爆12機の計27機が護衛戦闘機を伴わず発進する。
一方、米機動部隊の周辺海域は荒天だったが米艦レーダーは接近する航空機群を探知した。
「レキシントン」「ヨークタウン」から20機のF4Fワイルドキャット戦闘機隊が発艦、 25海里まで接近した薄暮攻撃隊の迎撃に向かう。
18:10 800kgの魚雷を搭載した九七艦攻隊は約10分間の戦闘で2機のF4Fを撃墜、8機を喪失しながら四散、空戦で損害を免れた九九艦爆隊も日没後に爆弾を海上投棄し帰投を決める。
この約40分後、九九艦爆隊は暗闇の中に空母2隻を発見し高度を下げ着艦体勢に入った。
肉眼でハッキリ視認出来る距離まで近付き初めて日米双方が互いの正体に気付き慌てる。

「瑞鶴」「翔鶴」の艦爆隊が着艦しようとしたのは敵の空母「ヨークタウン」であった。
この時「ヨークタウン」上空には九九艦爆隊の他に米戦闘機隊も着艦の為に待機していた。
既に爆弾を投棄していた艦爆隊は退避するのが精一杯で、これ気付いた米艦の対空砲火で1機が撃墜されたが、艦爆隊は敵戦闘機の追撃を振り切って母艦に帰投する。
GPSなどの電波測位航法・敵味方識別信号装置や誘導技術が現在ほど発達していなかった当時は上記の様な事がしばしば起っていた。
この日も珊瑚海でオーストラリアの基地から飛来したB-17爆撃機が重巡洋艦「シカゴ」など6隻からなる味方の別動艦隊を誤爆している。
薄暮攻撃は失敗し、艦爆12機中1機、艦攻15機中8機を喪失、他にも被弾機を出した。
珊瑚海の残存戦力。
第五航空戦隊「瑞鶴」「翔鶴」を合わせ零戦37機 艦爆33機 艦攻26機の計96機。
「ヨークタウン」「レキシントン」は艦戦31機 艦爆66機 艦攻21機の計118機。
「祥鳳」も撃沈され、日米の航空戦力比は逆転してしまう。
日米空母機動部隊対決
5月8日 08:25 「翔鶴」から出ていた索敵機が米機動部隊を発見、同時に「レキシントン」の索敵機が日本機動部隊を発見する。
08:48 「ヨークタウン」「レキシントン」から爆撃・雷撃73機の攻撃隊が発艦開始。
09:30 米機動部隊と寒冷前線を挟み 「瑞鶴」「翔鶴」から零戦18・艦爆33・艦攻18計69機の攻撃隊が発艦、続いて零戦19機が直掩に上がり上空で米攻撃隊を待ち受けるも高性能レーダーが無い日本の機動部隊は前日の米空母の様に敵機を早期発見して的確な迎撃が出来ない。
日米の攻撃隊は途中で遭遇したが、それぞれ敵母艦を叩く為に互いに無視して直進した。
米攻撃隊の空襲
10:30 ヨークタウン攻撃隊が「瑞鶴」「翔鶴」を発見、爆撃隊と雷撃隊が戦列を整える間に「瑞鶴」がスコールの下に入った為、攻撃隊は8km後方の「翔鶴」に狙いを定める。

第17任務部隊 空母「ヨークタウン」
11:00 直掩戦闘機隊の迎撃を振り切り「翔鶴」に急降下爆撃を行うも命中弾はなかった。
第一波のヨークタウン攻撃中隊は零戦に叩かれ全機が被弾して1機が海面に不時着する。
第二波の攻撃中隊は岩本徹三一飛曹の瑞鶴戦闘機隊3機と翔鶴戦闘機隊5機に襲われF4F 6機との混戦から抜け出した機が急降下で450kg爆弾2発を「翔鶴」に命中させた。
「翔鶴」はエレベーターと飛行甲板が破壊され「翔鶴」は艦載機運用が不可能となり艦首前甲板左舷に命中した1発はガソリン庫に引火、激しく炎上し黒煙が「翔鶴」を包み込んだ。
その2分後に雷撃隊9機が「翔鶴」に接近、零戦2機が妨害、距離 2000mで魚雷9本を投下したが魚雷は全て操艦で回避した。
悪天候で半数以上が引返したレキシントン攻撃隊の21機が傷付いた「翔鶴」を発見する。
45分遅れた急降下爆撃は完全奇襲となり、艦橋後方に1発が命中し格納庫で火災が発生。
続いて雷撃隊とF4F戦闘機4機が「翔鶴」に接近、零戦隊の迎撃によりF4F 3機が撃墜され雷撃の被害はなく沈没こそしなかったが3発の爆弾が命中した飛行甲板は完全に使用不能となり米空母の攻撃を終えて帰還した「翔鶴」の艦載機は「瑞鶴」に降りる事になった。
また早く飛行甲板を空ける為に修理可能な損傷機をも海中投棄せざるをえなくなり、生還しながらも失われた機体が増加した。
満身創痍、戦闘力を失った空母「翔鶴」は護衛の重巡「加古」「古鷹」 駆逐艦「潮」「夕暮」に付添われ北上して海域を離脱する。
日本攻撃隊の空襲
米空母機動部隊を発見した翔鶴の索敵機 菅野兼三飛曹長の九七艦攻は帰投中に攻撃隊と合流、増装タンクを装備してない同機は燃料切れを覚悟で確実に米空母まで攻撃隊を誘導して未帰還となった。
11:05 「ヨークタウン」「レキシントン」を視認した攻撃隊は目標を定め突入開始。
接近する攻撃隊をレーダーで探知していた米機動部隊上空には F4F戦闘機8機、飛行甲板上には9機が待機、SBDドーントレス16機を雷撃の阻止に海面付近へ配備していた。
勇猛果敢に突入する九七艦攻はドーントレス隊の手には負えず、頭上を200kt以上の高速で通過するのを見送り F4F戦闘機隊に任せるしかなかった。

第五航空戦隊 空母「瑞鶴」
最初に瑞鶴雷撃隊8機が「ヨークタウン」を狙うもF4Fの迎撃と対空砲火で九七艦攻 4機を撃墜され投下した魚雷4本も全て回避される。
残存の瑞鶴雷撃隊は目標を「レキシントン」変更、翔鶴雷撃隊10機と合流して攻撃。
対空砲火で2機が撃墜されながら被弾炎上した1機が一番砲塔に体当たりし投下した九一式航空魚雷2本が「レキシントン」の左舷に命中、ボイラー室が浸水し使用不能となり速力が25ktに低下し艦は左に7度傾斜する。
雷撃隊の阻止に失敗したドーントレス隊は零戦隊と交戦、ドーントレス 4機が撃墜された。
11:18 続いて翔鶴艦爆隊19機が「レキシントン」を攻撃。
F4F戦闘機隊は翔鶴の零戦隊に阻まれ九九艦爆隊の急降下爆撃阻止に失敗、12分間の激しい戦闘で魚雷2本と 250kg爆弾2発が命中するも浸水を食い止め火災を鎮圧する。

しかし被雷によって漏れ出したガソリンに引火爆発、5インチ砲弾弾薬庫が誘爆を起こして航行不能となり放棄、総員退艦後に空母「レキシントン」は駆逐艦「フェルプス」に拠って雷撃処分された。
同時に瑞鶴攻撃隊の九九艦爆14機と九七艦攻3機が「ヨークタウン」を攻撃していた。
「ヨークタウン」艦首至近の海面で1機が自爆、至近弾3発が船体接合部を緩め燃料が漏出し、命中した250kg 爆弾が飛行甲板を貫通して第4甲板で爆発した。
ボイラー3室が損傷するも応急措置により速力24kt が発揮可能となった「ヨークタウン」は戦闘海域を離脱、乾ドックでの本格的修理の為に真珠湾へ向かった。
海戦の結果
米海軍の損失
空母「レキシントン」撃沈 空母「ヨークタウン」中破 艦載機66機喪失
給油艦「ネオショー」撃沈 駆逐艦「シムス」撃沈 PBYカタリナ飛行艇 数機喪失
日本海軍の損失
軽空母「祥鳳」撃沈 空母「翔鶴」大破 艦載機81機喪失
ツラギ空襲 駆逐艦「菊月」撃沈 掃海艇3隻撃沈 九七式飛行艇 数機喪失
第四艦隊司令官 井上中将はポートモレスビー攻略を中止、米第17任務部隊も戦力を消耗し海域を離脱、珊瑚海へ向かっていた増援部隊の空母「エンタープライズ」「ホーネット」の第16任務部隊にも退避命令が下され、米海軍にはポートモレスビー攻略を防げなかった。
しかし判断ミスにより攻略の機会を逃した日本海軍はラバウル基地を常にポートモレスビーからの空襲に曝される事になり、編成、補給などラバウル航空隊の足枷となった。
また日本陸軍は進撃困難な陸路からのポートモレスビー攻略作戦を強行し、投入された南海支隊は海から補給を受ける事も出来ず、連合軍の大規模な反撃により事実上壊滅する。
本海戦は真珠湾攻撃以来、連戦連勝の日本海軍が初めて途中で中止した作戦となった。
Battle of the Coral Sea
珊瑚海海戦
正月の間はジッと冬眠、本日より通常 Duty 開始。
休み最終日はTVで 山本五十六 をやっていたので見た。
映画 『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実』
を見て、これまで様々な「山本五十六」を読み観てきた私的な感想を書く。
「戦はやってみなければ判らん。」
本作では永野修身 軍令部総長は日米開戦に導いた戦争屋、帝國海軍一愚かで悪い奴。
南雲忠一 中将は永野軍令部総長と密会する永野の手下で頑固で融通の効かない親爺。
草鹿龍之介 第1航空艦隊参謀長を(架空)にして判断ミスりまくる無責任なバカ参謀。
宇垣纏 聯合艦隊参謀長は全く存在感なし。
黒島亀人 聯合艦隊先任参謀は変人ではなく好青年。
香川照之の東京日報主幹(架空)は戦前戦後、国民を扇動し焚付けてきたアサヒの事か。
山口多聞 第二航空戦隊司令官、個人的に好きな武人が良く描かれていて悪い気はしない。
だが阿部ちゃん・・・男前過ぎ、ミッドウェイは悔し過ぎる。
山本五十六 聯合艦隊司令長官は、めちゃくちゃ良い日本の上司であり良い父、良き夫。
将棋、博打、甘物好き、旧長岡藩士、日露の時の指のケガなど詰込んでいるが愛人は?
渡辺や三和の作戦参謀を吉田栄作にしたのは二時間位じゃ全部を描けないからだろう。
歴代の「山本五十六」を描いた作品中では最も山本五十六の人柄を描いていると思うが
自分がこれまで読んで聞いてきた博徒 山本五十六像とは少し違う。
政治家、外交官、会社の上司としては見識が広く、部下想いでとても気さくな良い人だ。
山本長官は米国駐在武官でハーバード大学留学、帰国後に海軍航空本部技術部長に就き、自からも航空機の操縦を学んだ航空主兵論者。
では国際感覚に富み先見の明を持つ山本は戦略家、武人としてはどうだったのか。
マレー・蘭印・インド洋作戦・珊瑚海は省略され山本の判断心境が抜けているのが残念。
「日本の侍は夜討を掛ける時でも、せめて枕を蹴って相手を起してから斬るものだ。」
「泥棒だって帰り道は怖いよ。」映画中の言葉で実際の発言したかは不明である。
気にしていた最後通牒の通達遅れで侍が泥棒になった山本の気持ちを表している。
真珠湾とミッドウェイは博打。
米太平洋艦隊に大打撃を与え米国の戦意を喪失せしめ早期に講和に持込む。
米国の国力を知り三国同盟に反対した博徒山本は大博打を打つ他になかったのだろう。
山本は「茶漬けは熱いうちが美味いぞ。」と南雲の心中すすり泣きを慮るように勧めた。
南雲が泣きながら茶漬け食わなかったら・・・
最後まで南雲中将は悪者だな、年功序列人事、帝國海軍の悪しき習慣の塊りか。
南雲は航空戦の指揮判断を源田や草鹿に任せていた。
戦力温存、慎重な水雷屋の南雲にも良い所も使命感もあったと思うが・・・
真珠湾、ミッドウェイは作戦の主旨や情勢から、山口少将の判断が正しいと自分は思う。
泣きながら茶漬けを食わない、永野軍令部総長は最後まで悪者で終る。
70年目の真実と題するなら、架空の登場人物は不要、実在する人物で構成した方が良い。
艦艇、航空機、戦闘シーンは、これまでの日本映画のようなプラモデルチックさはない。
リアリティ優先に撮られいるだけに惜しい作品。
「太陽の帝国」 遣日独潜水艦・海軍技術士官に続く。
日本の近代史・戦史を書いたブログ
Empire of the Sun 1 「太陽の帝国」その1 真珠湾攻撃・マレー・蘭印作戦
Empire of the Sun 2 「太陽の帝国」その2 インド洋作戦・珊瑚海海戦
Empire of the Sun 3 「太陽の帝国」その3 遣日独潜水艦・海軍技術士官
Empire of the Sun 4 「太陽の帝国」その4 ミッドウェ-海戦
Empire of the Sun 5 「太陽の帝国」その5 聯合艦隊旗艦
Empire of the Sun 6 「太陽の帝国」その6 大和出撃
Empire of the Sun 7 「太陽の帝国」その7 マリアナ諸島 テニアンの戦い
Empire of the Sun 8 「太陽の帝国」その8 大日本帝國
Empire of the Sun 9 「太陽の帝国」その9 運命の瞬間
Empire of the Sun 10 「太陽の帝国」その10 満州事変
Empire of the Sun 11 「太陽の帝国」その11 上海事変
Empire of the Sun 12 「太陽の帝国」その12 兵に告ぐ 二・二六事件