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2014年12月31日

あとがきに代えて ~ GT-Rについての史論と私論(その2)

あとがきに代えて ~ GT-Rについての史論と私論(その2)  ~『最速GT-R物語』 史上最強のハコを作った男たち(双葉社・1996年)より

◆“水平飛行”の時代に

ただ、その「謎」の答えについて、ここでひとつ仮説を提出しておきたい。それは、『時代』ということである。次期型は、現行型のクルマより必ずよくなる。この“信仰”が、ひょっとしたら、あまりにも60~70年代的なセンスなのではないか。クルマというものがそうした「進歩の過程」にあった時代と、今日のように「水平飛行」にある時代とでは、次期型に寄せる人々の期待というものも違ってしまう。それが当然かもしれないのだ。

人々は、とくに若いカスタマーは、クルマという商品が(たとえばコンピュータなどとは違って)そういう「水平状態」にあることを直感的に察知している。あるいは、クルマの性能にしても、現状で十分だという感覚を持っている。

そういった時代の気分の中に、スタイリングひとつとってもあまり戦闘的でないような「次期R33」が呈示され、わかってないじゃないか!……とばかりに、新型への不満が盛り上がった。当時の次期R33GT-Rへのネガティブな反応について、こう解釈してみるのも一理あるかもしれない。

一方で“レーシング”だけをモノサシにするジャーナリズムがあり、同時に、以上のような『時代』の雰囲気があった。そして、この二つが、R33GT-Rに期待せずという一点だけでは、なぜか奇妙に一致していた。

◆「R33」の人々

この物語は、まず雑誌『スコラ』の連載としてはじまった。人気のスカイラインGT-Rが新しくなった、ついては、その開発ストーリーを誌面で展開しよう。こういう企図である。

インタビューを中心とする取材を開始して、R33主管の渡邉衡三氏に最初に会った時の、氏の警戒を解かない表情というのは、いまも憶えている。(またひとり、ジャーナリストがR33の悪口を言いに、俺のところにやって来た)……渡邉氏の顔には、こう書いてあった。また主担の吉川正敏氏も、雑誌に掲載された第1回の内容を見て、R33へのネガティブな視点が払拭されてないと、表情を曇らせた。

これほどまでに開発担当者の姿勢を「複雑に」させているクルマがある。ぼくはこのときから、新GT-Rについての新たな興味が湧いた。そしてジャーナリズムがそれまでに、このクルマとこれに関わった人々に少なからぬダメージを与えていたということもわかってきた。

ぼく自身はそれまで、R32にもR33にも、どちらに対しても等距離だったと思う。ただ、R32のGT-Rに乗ってみて、ドドッ!と豪快に速いが、デリカシーには欠けるクルマだという感じは持っていた。また、アンダーステアかどうかはともかく、コーナリング中にはアクセルは不用意には踏めず、必ずきちんとクルマの姿勢を作った後にアクセル・オンすべきクルマだとも体感していた。

そして、そのようにドライバーに余計な気遣いをさせるという意味では、R32GT-Rは、速いけれども、ドライバーの「自由度」はやや低いクルマだと見ていた。コーナリングにしても、クルマの方が「こう動きたい!」というのを先に決定している。そしてそれに、ドライバーが合わせてやるというクルマだったからだ。

だから「GT-R」については、それが「変わる」ことの方にむしろ興味があった。そして、さまざまな関係者の方々に話を聞いていくうちに、単に「GT-R」ではなく、「R33」の物語を書きたいと思うようになった。

R32は、ある見方をすれば“やり放題”のクルマである。時の主管・伊藤修令氏が、コンセプトがボケかけていたスカイラインというモデルを、「スポーツ」と『R』を旗印に再生した。これは見事だったが、作り手にとってむずかしく、そしてウォッチャーとしても興味をそそられるのは、そういうモデルの「次」であろう。

また新R33GT-Rは、こと「曲がる」性能に関しては、旧型R32GT-Rに対して、誰でもそれがわかるような大幅な向上を見せている。メーカーの言う「意のままに」の度合は、R32よりはるかに高くなっており、ドライバーが感じる自由度も増大している。そういった事実を、一度きちんと伝えたい。こういう使命感のようなものも、書き手としてはあった。

さて本書だが、これの“プロトタイプ”は1995年の2月から約1年間、「スコラ」誌に「新・GT-R伝説」というタイトルで連載された。そこから、今回の単行本化のためにモディファイし、若干の加筆と修整を行なっている。

そしてこれは、基本的にはエンジニア各位へのインタビューで知り得た情報と事実をもとにして、そこから筆者が物語風に仕立てたものであり、もとよりフィクションではないが、文責はすべて筆者にある。また、文中での敬称はすべて略させていただいた。そして、各エンジニアやスタッフの方々の所属や肩書きに関しては、すべてR33開発当時ということで統一してある。

(つづく)
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Posted at 2014/12/31 06:08:03

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