◆電動と新型、「スーパー・カブ・コンセプト」の衝撃と完成度
ニュースに、もしランク付けをするなら、スーパー・カブが新型になるのと、カブに「EV」仕様が加わるというのでは、どっちが上位なのだろうか? 優柔不断な(笑)私には、なかなか判断が付きかねるところだ。
たとえば「EV-カブ」だが、並みのクルマ/バイクであれば、電動の仕様がラインナップに加わったとしても、この時代そんなには驚かない。実際に商品化されて世に出ても、巨大シリーズ中の1バージョンという“落としどころ”で、評価もまとまることになるのではないか。
ただ、コトは「スーパー・カブ」である。1950年代末期、日本のモータリゼーション草創期に、スクーターでもオートバイでもない(いま風にいうならハイブリッドか)スタイリングとパッケージングで登場。この大ヒット作はすぐに“狭い日本”を飛び出し、瞬く間にワールド市場を席巻した。これまでに世界で9000万台以上が売れたといわれ、バイクの新たな歴史を作っただけでなく、世界の街の景色まで変えてしまった。それが「カブ」だ。
そして何より、この二輪車は「エンジンのホンダ」の原点でもある。時代がどう動いたとしても、「エンジン屋」としてスーパー・カブにはこだわり続ける。……あ、そのエンジンには「空冷」という要素も欠かせないか。ともかく最後の「空冷エンジン二輪車」になったとしても、カブはカブであり続ける──。そんな「カブ」に、あっさりと「EV」が登場? ウーン、これはやっぱり、カブが新型になる以上のニュースであろうか。
その「EV-カブ」は、“カバード・デザイン”をさらに極めたというべき超シンプル造形。リヤサスも「片持ち」にして、そのスッキリさを強調。ふと、満タンというかフル充電にして、どのくらい走るんです?……と、カブのそばに立っていたエンジニアに質問すると、「いま開発中です」というクールなご返事。なるほど、これはあくまでも「EV-カブ コンセプト」で、市販前のクルマであった。
さればということで、「カブに、なぜEVなのか」も訊いてみる。すると「やはり早朝の配達とか、そういう場合に“音がない”と、もっといいということで──」という答え。なるほど、趣味ではなくて“仕事のバイク”だからこその、環境や周辺への配慮であろう。
では、EVではない方の「カブ」についても訊いてみよう。あの~、この新型では、何をしたかったのですか? しかし、ここでもさすがでガードは堅かった。答えは「開発中ですので」のみ。それでもちょっと粘ってみると、いくつか新型の様子が見えてきた。
たとえば、軽量化である。クルマにとってのこのテーマは、どんな時代になっても不変であろう。それから、時間の経過に伴う、クルマの周辺というかパーツ類の変化と進化もある。スーパー・カブのように、コンセプトは“鉄板”でいじる必要がなくても、それを支える個々の部品が進化したなら、それを使わない手はない。たとえば、ヘッドランプをLEDにできれば、同時に軽量化も果たせるはずだ。
……というわけで、あくまでも、まだ「開発中」のスーパー・カブ・コンセプトであったが、配布されているリーフレットでは、「超ロングセラー『カブ』シリーズ、開発の想いや価値はそのままに、いま、新たな進化を遂げようとしています」と、しっかりニューモデル宣言が行なわれていた。
この「コンセプト」は、もう95%以上の完成を見ているはずで、いずれ、ほぼこのままの格好で市販されるだろう。そういえばこのデザインは、見ただけですぐに「カブ」だと認識でき、かつ、新型になっているということも同時にわかる。従来より「柔和」になったという印象も、時代の反映か。これは継続性と変化をうまく組み合わせた、なかなか見事なスタイリングであると思う。
(つづく)
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New Car ジャーナル | 日記
Posted at
2015/11/04 07:34:57