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2016年10月27日

【 70's J-car selection 】vol.27 ターセル/コルサ

【 70's J-car selection 】vol.27 ターセル/コルサ ターセル/コルサ AL10 (1978)

トヨタ・ブランドとして初の「FF」モデルとして歴史に記録されているターセル/コルサ。このクルマについては、当時の開発担当者の証言があるので、ここで紹介したい。「トヨタをつくった技術者たち」(2001年刊行)という本の中で、佐々木紫郎エンジニア(注1)がインタビューに答えている。

それによれば、FF車であるこのクルマは、開発型式「30B」として企画・開発が進められていた。その開発開始から半年ほど経った頃に、その時カローラ3代目の主査だった佐々木氏は、カローラと兼任で、このFFモデルも担当して(まとめて)ほしいと打診される。これに佐々木氏は、トヨタが作る最初のFF車でもあり、兼任ではなく「専任」であれば引き受けると返答。結局、それが受け入れられ、カローラの「まとめ」役を部下に譲った佐々木氏によって、「30B」の開発が続行された。

ただし、既に開発はスタートしていたので基本コンセプトは変更せず、省燃費の小型車を作ること、「縦置きエンジン」のFFとすることは、主査としてそのまま継承。トヨタがこの時、「横置き」エンジンでFF車を企画しなかったことについては、「30Bに搭載する新しいA型エンジンを“縦置き”にしておけば、カローラにも共用できるという理由だった」と佐々木氏は答えている。(注2)

ただ、縦置きエンジンのままFFにすると、ボンネット高が上がってしまう。それは致し方ないというのが開発初期の判断だったが、しかし、小さくて燃費のいいクルマというコンセプトは、一方で追求しなければならない。省燃費ということでは、前面投影面積が大きくなるのは不利なので、そこから、「高さは切り詰められなく、幅を狭くするという制約を与えてデザインさせた」。

「見栄えが悪く、スタイルが良くないのはデザイナーの責任ではなく、そういう条件を与えた主査、私の責任です」と佐々木氏は回顧した。そして、「実は後で思ったことだけど、もう少し(開発のための)時間を貰って、幅を拡げる検討をもっとすればよかったと後悔した」と語る。

──なるほど、このクルマが何となく特異な格好に見えて、印象として「細長い」感じだったのは、そうした具体的な理由があったということか。後に「ターセル/コルサ」(AL10)の名を与えられる開発記号「30B」の全幅は1555ミリ。そのホイールベースはミドルクラス車並みの2500ミリだった。

ただ、そうした基本レイアウトもあって、ターセルは室内の前後長には余裕があった。佐々木氏はこのインタビューで、日本国内ではあまり売れなかったことを認めつつ、アメリカやカナダでは「評価してもらえた」ことを語る。アメリカへ行った時に米人に「一緒に乗ろう」と誘われ、ターセルで走りながら、「米国トヨタで売っているクルマで、一番“大きい”クルマは何だと思いますか」と質問された。佐々木氏が「クレシーダ」(マークⅡの輸出仕様車)と答えると、その米人はすぐに否定して言った。「違う。このクルマ、ターセルだ。これだけ足を伸ばして運転できるクルマはターセルが初めてだ。アメリカのクルマはこれでいい」

「ちょうど第二次石油危機の頃で、アメリカでは燃費のよいターセルを(米国トヨタが)売ってくれた。アメリカで売れたから、全体ではそんなに悪くないと思ったけれど、国内販売では大変苦労したクルマで、私が経験したモデルの失敗例になってしまった」(佐々木氏)

1980年代になるとトヨタは、カローラ、コロナ(1983年)、スターレット(1984年)、さらにはカリーナ(1984年)と、主要な大衆車や小型車を次々に「FF化」していくが、その先駆けとなり、助走期間で健闘したクルマ。それが1970年代末に登場したこのターセル/コルサだった。

○注1
佐々木紫郎技師。初代クラウンやパブリカのシャシー設計担当から、クルマ全体の企画・開発を行なう「主査室」に移動。初代カローラから、主査付としてクルマの「まとめ」業務に就く。二代目カローラから主査としての業務を開始し、三代目カローラは基本構想から立案した。大きさは大衆車でも、小型車並みの快適性を狙った三代目は、1974年に発表された。続いてターセル/コルサの主査となり、同車は1978年に市販開始。その後、製品企画室の室長となって、初代ソアラ、レクサス(日本名セルシオ)などの開発に関わった。25年間の製品企画業務の後、1988年に副社長。1992年に中央研究所・代表取締役。

○注2
エンジン「縦置き」のもうひとつの理由としては、初期の「横置きエンジン+FF」は、トルクステアなど、いわゆる“FFのクセ”が強かった。そのため、FRのカローラやパブリカ~スターレットから乗り換えた場合の違和感が避けられないことを、メーカーとして懸念。「横置きFF」を成熟させる時間を必要とし、1970年代には、まずは「縦置き」でFF化を開始したと考えられる。
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Posted at 2016/10/27 03:12:30

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