前回のつづき
12月29日(火) 8日目
雨音がテントを叩く音で目が覚めました。
時計を見ると、朝3時。
う~む、今日は晴れる予定じゃなかったっでしたっけ?
まぁ、ここはパイネですし、天気が不安定なのはしょうがないです。
その後ウトウトし、4時に目覚ましが鳴ったのでテントの外に顔を出してみると、雨は止んでいるものの、曇天のようです。
もし快晴だったら、グレイ氷河の横までちょっと往復しようかと思っていたのですが、こんな天気なのでそのまま眠りに就きます。
(グレイ氷河を眺めるのは、いつかサーキットを半時計回りに回って、その時に昨日おじいさんに教えてもらったとおり峠の頂上から一気に広がる様を見ることにします)
朝5時。
ん? なんか青空が見えているような気がします。
湖畔に出てみることにします。
あ~、やっぱり。
頭上は雲に覆われている物の、晴れている部分もあるみたいです。
裏手の山々の上空も少しずつ晴れてきました。
その勢いでスパッと晴れて欲しいものです。
コーンポタージュでスープスパゲティを作っていたら、朝焼けが始まりました。
太陽はまったく見えないのですが、空の色だけがどんどん変わっていきます。
今日も雲が多いなりにすばらしいショータイムを見せてくれました。
しっかし、上空の雲、すっごい厚さで真っ黒です。
土砂降りの雨が降ってこなくて良かったです。
ホットカフェ(粉末)で一息入れてから出発の準備を開始します。
結局、昨日計画した通りパイネグランデロッジまで一旦戻り、そこから船でペホエ湖を渡り、バスを乗り継いで出発地点のホステリア・ラス・トレスに戻ることにします。
テントを畳んでいると、朝御飯を準備中のおじさんが鍋を片手に目の前を通りすぎていきます。目があったので「おはようございます」とご挨拶。
ちょうどテントを畳み終わったときに再びおじさんが戻ってきて、水の入った鍋を見せながら
「水が出なかったんだけど、シャワーを使ったらなんとかなったよ」
と、笑いながら私の前を通過してテントの方へと戻っていきました。
どうやら昨日の夜も水の出が悪かったのですが、ついに水が止ってしまったようです。
まぁ、シャワーの水が浄水されてなかったとしても沸かせば問題ないでしょうね。
そう言えば私も出発前に少し水を汲んでおきたかったんだと思い、水筒を持って水場の方へ歩いていきます。
一応さきほどの話も聞き間違いの可能性もあるので、念のため水場で蛇口を捻ってみると、最初ちょろちょろと出た後、すぐに水が止ってしまいました。
シャワーで飲み水を汲むのは気が引けたので、小屋で汲ませてもらおうと入り口から入ろうとすると、なんと朝6時だというのに鍵がかかっていて中に入れません。
やはりシャワーしかないかと思い、シャワールーム(海の家のシャワールームぐらいの設備です)に行き、レバーを回して少し水を出してみたのですが、どうもシャワーから水筒に水を入れて飲む気がしません。一昨日も水であたってひどい目にあいましたし。
テントに戻るときに先ほどと別の蛇口なら少しぐらい出るかもと思い捻ってみると、予想より多めの水が出てきました。もちろん水筒を満タンに出来たわけではないのですが。
諦めきれずに水場からホースを辿り、タンクの方に行きましたが、他の蛇口はいっさいありませんでした。
ここでふと気がつきました。
もしかしたらと思い、シャワーに行き一旦レバーを回して少し水を出します。
再び水場に行き蛇口を捻ると、ゴボ!、ゴボ!っと最初は言いながらも水が出てきました。
これでなんとか水筒を満タンに出来ました。シャワー側を少し解放すると水が出るようです。もしかしたら、私にシャワーがどうのこうのと教えてくれたおじさんはこのことを言っていたのかも知れません。(訛りのキツイ英語で話しかけられたので、ちゃんと理解できていたのか自信がないので)
とにかく水を汲めてよかったです。
最後にトイレを済ませて畳んだテントの方に戻ろうとすると、おじいさんが一人話しかけてきました。
もしかしたらスタッフの方かと思い水のことを説明しようとすると、何やら様子が変です。
このおじいさん、私に話しかけたわけではなく、延々と独り言をつぶやいているのでした。
世の中、変わった人はどこにでもいるもんですね。
おじいさんはブツブツ独り言を言いながらそのままトイレに入っていきました。
さて、まずは見晴らし台(ミラドール)に向かいますか。
キャンプ場を出発して10分、グレイ氷河が見えてきました。
そして、こんなところにテントが一張り。
たぶん無料で済ませるために、テント禁止のこんな場所に張ったのでしょう。
もうちょっと先に進めそうなので、どんどん歩いていきます。
流れてきた氷河のかけらが溜まっています。
見晴らし台に行くには左の岩場を登らないと駄目なようです。
多少手を使う場所もありましたが、
基本的には歩きやすい岩場でした。
ひとまず岩場の先端、ミラドールに到着しました。
(たぶん、ここではなく、大分手前の丘の上が本当のミラドールだと思いますが、ここの方が見晴らしが良いので来てしまいました)
まずはワイドレンズで撮影。
ここからだとグレイ氷河の右半分が見えているのですね。
テレ側で撮影。
数日前にペリトモレノ氷河を見ているので、そのスケールが容易に想像できます。
かれこれ10分以上、ぼーっと眺めていたでしょうか。
本当はもっともっと眺めていたかったのですが、4時間歩いた先にあるパイネグランデロッジ前の桟橋から12時30分に船が出るので、そろそろ出発しなければなりません。(ロッジでシャワーを浴びてご飯も食べたかったので)
では、出発するとしますか。(7:50)
昨日の夕方歩いた道を再び戻ります。
昨日見た景色なので、黙々と歩き続けます。
すれ違う人に
「また会ったね!」
とか
「ハロー、アゲイン!」
と、たまに声をかけられるのですが、たぶん昨日もすれ違った人なんだと思いますが、私からすると全員同じ西洋人に見えるので、まったく記憶がありません。
向こうは「こ汚い(髭ボーボーで日焼けしていて、実際風呂に入ってないので)首からデジイチぶら下げた東洋人」って事で覚えているんだと思います。
キャンプ場を出発して2時間弱、中間地点のミラドールに近づいてきました。
グレイ湖、やはり緑がかった灰色です。
あの丘の頂上がミラドールです。
ミラドールに到着しました。
いつも通り強風が吹いているのですが、それに伴って雲がどんどん動くので見ていて飽きないです。
ミラドールで(つぶれた)パンを食べて軽く燃料補給。
しっかし、むちゃくちゃ寒い。
(風が冷たくて強いので)
ちなみに、ミラドールにはパイネグランデロッジからここ目的で来ている人も居るので、それなりに人がいます。
というわけで、ミラドールに来ていたおばさんに撮影を依頼。
後ろ向きポーズは西洋人達にも大ウケでした。
(珍しいらしいです)
グレイ氷河、かなり堪能しました。
では船の時間もありますし、そろそろ行きますか!
と、言いつつ、丘を越えて見えなくなってしまうギリギリの地点から最後の撮影。
こうやって望遠レンズで人と一緒に写すと氷河のスケールが強調されますね。
一番高い地点からだと氷河の奥の方まで見えて感動します。
今度こそ本当にグレイ氷河とお別れです。
藻類が繁殖して緑茶色に染まった沼。
昨日は曇っていたので、あまり気にも留めずに通りすぎちゃったみたいです。
花畑は日が当たっている方が映えますね~。
こちらも。
う~ん、綺麗。(パイネでこういう景色って珍しいんです)
こんな寒い風の吹きすさぶ中、たまにいるんですよね~、半袖の西洋人が。
(この日、二人目です、しかも両方とも若い女性)
自称「寒いのに強い方」と思っている私でも「あり得ない!」って思ってしまいました。
残りの距離を確認しようと管理事務所でもらった地図を広げてみると、この先のポイントのところに、なにやら変なマークがついているのに気がつきました。
あ、神様が風を吹いているマークだ。
つまり、強風注意の場所ですね。
ということは・・・・
先日パイネタワーの往復で風が強かった谷のすぼまった箇所を確認してみると、やはりそこにもこのマークがついていました。
このマークがついている箇所はサーキット一周で見渡してみても全部で三箇所。
そのうち2箇所をWコースで通過することになるのですね。
先ほどの写真の地点あたりからグレイ湖と別れて、あとは林間を進んでいきます。
こちらもナンキョクブナですね。
向こうから明らかに日本人とわかる格好の(日本のメーカーのカッパを着た)東洋人が歩いてきたのですが、お互い「オラー」と挨拶しながらすれ違います。
ちなみに、私はフランス製のフリースを着ていたので、フランス人に見える
わけないですね。
(なぜフランス製かと言いますと、アウトドア洋品店のバーゲンで不人気色(ベージュ)の型落ち品が安く売っていたからです。でも、なかなか高性能で軽くて気に入っています)
この大きな倒木、「何物も跨いじゃ行けない」ルールのやつです。
まぁ、さすがにこれをまたぐ人は居ないと思うのですが、良い感じにその先に道が続いているんですよね。
こちらも、「何物も跨いじゃ行けない」ルール。
このぐらいになると、ぼーっと歩いていると跨いでしまうので要注意です。
ロスパトス湖です。曇天だった昨日とは大分雰囲気が違い、深く暗い色が神秘的です。
最後はこちらの谷の底を進んでいきます。
ちなみにここが地図に載っていた強風注意の場所なのですが、昨日も今日も身の危険を感じるような風は吹いていませんでした。
綺麗なエメラルドグリーンのペホエ湖が見えてきました。ロッジまで後少しです。(望遠レンズで撮影)
まだ少し谷底の道が続きます。
しっかし、曇天の中にあっても、明るく輝く湖ですね~。
ほぼ4時間でパイネグランデロッジ横のガードナー詰め所に戻ってきました。
本当は少しでもタイムを削りたかったのですが、グレイ氷河の迫力に負けてしまいました。
念のため天気予報を確認すると、中身は昨日のままでしたが、「12月1日」となっていた部分だけ「1月1日」に変更されていました。
ちゃんと気がついたみたいです。
ロッジの前に
チマンゴカラカラが居て、トレッカーの落とす食事を狙っています。
トンビと言うよりはカラスのポジションですね。こうやってみると大きさもカラスぐらいです。(ハヤブサぐらいと言った方が正確なのでしょうが)
こうやって人に餌をねだっているのを見てしまうと、昨日写真を撮ろうと必死になっていた自分が滑稽に思えてきます。
時計を見ると、船の出発まで後30分しかありません。
まずは急いでシャワーを借りて3日分の汗を流させてもらいます。
ホットシャワーを期待していたのですが、えらいぬるくて体が冷えきってしまいましたが、とりあえず汗だけは流せました。
そして、出港の15分前にロッジのレストランに向かいます。
昨日サンドイッチをお願いした女性スタッフがいたので、今日も同じ物を注文してみます。
すると、一瞬困った顔をしてから厨房に入って何やら相談しています。
そして、カタコトの英語で説明してくれるのですが、なんとなく理解できたのは今日はサンドイッチがもう無くて、代わりのメニューがあるとのこと。
もう迷っている時間も無いので、それを注文します。
あと、昨日と同じジュースも2本。(1本は後で飲む用、7000ペソ(1260円))
待つこと5分、チーズベジタブルサンドが出てきました。
船の出港まであと10分しか無いので、あわてて食べ始めます。
最初、味がないなぁ(チーズよりは野菜の苦みが前面に出る感じ)と思いながら食べていたのですが、途中でチリソースを使わなければならないことに気がつきました。
チリソースにケチャップ、マスタードをかけたら、急にそれっぽい味になって美味しく食べられました。
あと、ジュースのほうは微妙に種類の違うのを注文してしまったみたいです。(昨日のは酸味が効いていて、今日のはとても甘い味。好みの問題ですが、昨日の種類のほうがおいしかったです)
船の出港予定時刻まで後5分というところで、回りの観光客が全員席を立ち始めレストランから出ていったので、私も「出るよ」とジェスチャーで彼女に意思を伝えると、「ちょっと待って」とジェスチャーで返事をされ、彼女は桟橋が見えるであろう窓の所まで走って行きます。
窓の外を覗いた後、
「フィフティーン ミニッツ!」
と、船の到着まであと15分あることを教えてくれます。
一瞬立ち上がりかけていたのですが、再び腰を降ろし、ひとまずお腹一杯になるまで食べることにしました。
船の出港予定時刻を5分ぐらい過ぎていたのですが、ひとまず完食し、彼女にお礼を言ってから、私も桟橋に向かいます。
あ~、たしかにまだ船が到着すらしていないです。(湖の上の小さな白い物体が船です)
というわけで、パイネグランデとパイネの角を見に少し散歩。
船が桟橋に近づいてきたので、私もぼちぼち桟橋に向かって歩き始めます。
船は「渡し船」って感じの普通のデザインを想像していたのですが、近未来デザインの双胴船がやってきました。
ありゃ、けっこう並んでますね。
まさか定員オーバーで乗れないって事は無いだろうなぁと少し不安になります。
まずは乗ってきた人がすべて降りるのを待ちます。
これがまたえらい人数で、逆にこんだけ延々と降りてくるんだから、並んでいる人は余裕で乗れるという確信になりました。
ようやく乗り込み開始となります。
私はほとんど最後に並んだので、眺めの良い席の確保は諦めました。
特に切符を買う手続きをすることもなく、そのまま船に乗り込みます。
軽装のおじさんは、乗るときに転倒して湖に落ちないようにサポートしてくれているスタッフです。
船内はもちろん満席状態。
荷物を置く場所が船の先頭の方なので、なんとなくそちらに歩いていくと、二人組で座っていた若い男性が私に気を遣って席を詰めて空けてくれたので、なんと棚ボタで前の方の眺めの良い席に座ることが出来ました。
お~、これは眺めが良いです。
ラッキ~。
窓にかぶりついて徐々に遠ざかっていくパイネの山々を眺めます。 ↑の○は窓についたキズが写っているのです。全体的に暗いのは窓にスモークが入っているからです。
窓の外の景色に夢中になっていると、膝が隣の方とぶつかりました。
謝ろうと思ってそちらを見ると、おばさんが不機嫌そうな顔をして、ぶつかった膝の辺りを見ています。
もちろん謝ったのですが返事はありませんし、表情がまったく動かないので、謝ったのが伝わったかどうかもわかりません。
その後もチラチラとぶつかった膝の辺りに視線を送ってくるので、こちらも妙に意識してしまいます。(もちろんぶつかったのは最初の一回だけなのですが)
そして、ふと気がつきました。
最初に席を譲ってくれた二人組の若い男性が居なくなっていることに。
改めて船内を見渡してみると、心なしか人の数が減ったような・・・
もしやと思い、船の後部に歩いて行こうと席を立ち上がると、再び隣のおばさんに足がぶつかってしまい、「ごめんなさい」と謝るも、やはり無視。
それはともかく、船の後部のドアが空いていて外に出られるようです。
さらにステップを上がると、なんと船の上に登れるではないですか。
わお! 最高の空間じゃないですか!!
いやぁ、こんな事なら最初から上に登っていればよかったです。
陽も射していてそれなりに暖かく、快適なクルーズです。
なんせ、この景色ですし。
この角度から見て、改めてパイネの角と呼ばれる理由が分かりました。
本当に角のように鋭く尖っていますね。
こちらはガスをまとったパイネグランデの手前側。
両者の真ん中にあるのがフランセス谷です。
雲の感じやペオエ湖の色が最高で、絶景クルージングです。
こうやって前方を見ていると、まるでペオエ湖を渡ってフランセス谷に向かっているように見えますが、実際はフランセス谷はさらに向こうにあるノルデンスコール湖の対岸なんですよね。
手前の陸地に人工物がポツポツと見えてきました。
きっと、あそこが船着き場そばのホテルなのでしょう。
到着した日に歩いて観に行った大滝(サルトグランデ)です。
港が見えてきました。
30分の船旅だったのですが、すごく楽しかったのであっと言う間だった気がします。
ぼちぼちと皆さんも下の座席に移動を始めたので、私も下に移動します。
ちょうど降りたところで皆さんも切符を買っていたので(街やツアーで前売りを買っている人の方が多いみたいですが)、11000ペソ(2000円)をスタッフに支払って切符を購入します。
程なく船はプデート(Pudeto)の桟橋に到着しました。
目の前に乗り継ぐバス亭でもあるのかと思ったのですが、そうではないみたいです。
とりあえず、皆さんの後ろについて歩きます。
あそこに見えている建物のあたりがバス停でしょうか。
お、バスがたくさん停まってます。
ここであっているみたいです。
いや、あっているのはいいのですが、私はいったいどれに乗ったら良いのでしょう?
この辺のバス事情をちゃんと書いてくれている旅行記が出発前に発見できず、さっぱり見当がつかなかったのですが、オフィシャルガイドによると公共のシャトルバスサービスがあるらしいので、それっぽいバスを探していたのですが見当たりません。
船から降りてきた皆さんは、どのバスに乗れば良いのか把握しているらしく、思い思いにバスに吸い込まれていきます。
このままここに取り残されたら、ヒッチハイク確定なのでちょっと焦ります。
どのバスも「プエルトナタレス」(パイネに向かう人がほとんど宿泊するチリの拠点となる小さな街)と表示が出ているので、その途中にあるアマルガ湖公園管理事務所には立ち寄るはずです。
たまたま目があったバスの運転手さんに、ホステリア・ラス・トレスかアマルガ湖公園管理事務所に行きたいんだけどと告げると、「アマルガ湖まで2000(360円)ペソだよ。乗ってけよ」と即答が返ってきました。
どうやら、どのバスでも良かったみたいです。
しまった、それならもっと新しいバスをチョイスすれば良かった!
(一応ベンツらしいですが。ちなみに右に写っているおじさんが話しかけてきたバスの運転手さんです)
ザックをトランクに預けてからバスに乗り込みます。
まだ空いているので景色の良い左側の席を確保します。
このバス、プエルトナタレスの先にあるプンタアレナスまで行くみたいで、「プンタアレナス到着時間、夜20時」みたいな張り紙が車内にしてありました。
ほどなくしてバスはプエルトナタレスに向けて出発。(13:40)
ちょっとラッキーだったのは、たくさん居たバスの中で、このバスが先頭で出発したことです。
これなら前のバスの砂煙を浴びなくて済みます。
バスの窓は開かないのですが、エアコンがついていないこともあって、意外に車内は暑いです。
たまらず先ほどロッジで購入しておいた甘いアップルジュースを飲みます。
走りはじめてしばらくすると、高校生ぐらいの男の子が天井の窓を慣れた手つきで開けました。
助かりました、パイネの冷たい風が入ってきて心地よいです。
狙い通り左側はこんな景色が広がります。
グアナコは左右どちらにでも居ますね。
先日走ったばかりの道なので、次にどんな景色が広がるかだいたい覚えているのですが、それでもそこはパイネ、楽しく窓の外を眺めます。
誰かが歩いてきた気配を感じて車内に目を移すと、先ほど天井の窓を開けた男の子が乗車代を回収しに来ました。どうやら、この子が車掌さんだったようです。(2000ペソ(360円) )
他の乗客の方はチケットを持っているみたいで、買わなければならないのは私含めて数人だけのようでした。
そういえば3日前もこんな天気だったなぁと思いながら山を眺めます。
お、そろそろアマルガ湖公園管理事務所に到着です。
出発してから約30分、アマルガ湖公園管理事務所前に到着しました。
そして、ここにも数台のバスが停まっているのですが、どれに乗ったらホステリア・ラス・トレスに行けるのかさっぱりわかりません。
まずは公園管理事務所の前にあったお土産屋さん兼喫茶店に入り、バスについて尋ねると、「あっちの方に歩けば1時間半で着くよ」と、暗に歩くことを薦められますが、すでにシャワーも浴びてトレッキング終わったモードに入っている私は、すでに車で走った道路をこの天気の中1時間半も歩くよりは、バスに乗りたいなぁと思っているわけです。
他の建物に移動し、そこでも同じように尋ねてみると、「ホステリア行きのバスは5時(約3時間後)出発だよ」との返事。
う~ん、それは待てないなぁ。
なら歩くしかないか・・・。
がっくり肩を落として建物から出てくると、先ほどまで乗っていたバスの運転手のおじさんが
「あんたホステリアに行くんだろ?」
と、声をかけてきたので
「そうです」
と答えると、
「あっちだよ。早く乗らないと出ちゃうよ」
と、親切に教えてくれました。
(オンボロバスの)運転手のおじさん、ありがと~!
バスと言うか、バンですね。
一流ホテルのホステリアラストレスの送迎車にしては、えらいオンボロと言うかなんと言うか。
切符を売っていたおじさんに値段を聞いたら2000ペソ(先ほどと同じ360円)だと言うのでお金を支払ってチケットを受け取り、後ろにザックを放り込んでからバンに乗り込みます。
あれ? 正面に座っているおばさん、先ほど船で隣に座っていて足がぶつかったおばさんだ。
まぁ、この距離ならひざがぶつかることも無いので大丈夫でしょう。
私が座ってシートが埋まったので、バンは出発します。(先ほど声をかけてくれたバスの運転手のおじさんに感謝感謝です)
ホステリアラストレスに向けて歩いているトレッカーにバンの運転手が声をかけて、後でピックアップするからみたいな話をしています。
まぁ、2000ペソ払うぐらいなら歩くよって人もけっこう居るでしょうしね。
実際、3日前にこの区間をレンタカーで走ったときも、歩いている人を数人みかけましたし。
車幅ぎりぎりに見える橋を信じられないスピードで通過します。
正面のおばさん、このスピードとテクニックについて、どう思っているのでしょうか?
どうでもいいですね、そんなこと。
しかし、前走った時もそうだったのですが、この道は穴ぼこだらけの相当な悪路です。特にバンなんかだと、腰が浮き上がらんばかりに上下に揺れるのですが、おばさんは無表情でやり過ごしているのがさすがです。
うっすらとパイネタワーが見えています。快晴だったら最高の絶景ポイントでしょうね。
なんて、思っていたら、運転手さんが突然バンを止めて
「フォトース、フォトース!」
と、車内の我々に向かって大声で撮影ポイントに到着したから写真を撮れと声をかけてきます。
さらに運転席から降りて、正面のおばさんの横のドアを開けてくれます。
どうやら降りて撮影しろってことなのでしょう。(そういえば、私は最後に乗った関係で偶然右側のシートに座っていたので、車窓の風景を当たり前のように眺めていたのですが、他の人は見られない場所に座っていたのでした)
というわけで、カメラを持ってバンから降りようとしたのですが、正面のおばさんは無表情で座ったままで、バンから降りないようです。
結果、おばさんの足を私の足で退ける形になってしまったので、「すみません」と声をかけながらおばさんの足を押し退けながらバンを降ります。
予想通りおばさんからの返事はありませんでした。
バンから離れて撮影しようと少し歩いてから振り返ると、
おばさん、バンから降りてるじゃないですか!
(写っている2人の左側)
と、言うわけであわててバンに戻り、おばさんが着席する前に自分の席に座りました。
(撮影のためにバンから降りたのは私含め3人だけでした。まぁ、こんな天気ですしね)
お~、パイネタワー、かっちょいい~。
おばさんはパイネタワーについてどう思っているのでしょうか?
どう思うも何も、後ろ向きに座っているから見えてないですね。
しばらく悪路を揺さぶられながら走っていると、再びバンが停まり運転手のおじさんが「フォトース!」と声をあげます。
先ほどの件もあったので、私は降りなくてもいいやと思っていたのですが、こんな時に限って左隣の人がザックからカメラを取り出して私に熱い視線を送ってきます。
私が降りないと彼は降りることができません。
これは不可抗力だと思いながらも、私も首からデジイチをぶら下げているので傍から見たら写真を撮りたくてしょうがない日本人にしか見えないんだろうなぁと思いつつ席から腰を上げます。
またおばさんに膝がぶつかるのかと思いながら天井に頭をぶつけないように前かがみで進みます。なんとか膝をぶつけない進み方はないものかと思いながら進んでいると、足元に置いてあった前の人のザックにつまずいてしまいました。
ヤバイ!
反射的に座席をつかんで体を支えます。支えないとおばさんにダイブでシャレになりません。
セーフ!
と、思った次の瞬間、座席をつかむためにデジイチから手を離してしまったので、ブランコのように胸元から前方に円周運動で加速したデジイチは見事におばさんの膝にぶつかったのでした・・・・
あっという間の出来事です。
「ごめんなさい・・・」
と、謝ったのですが、重さ1kgもあるデジイチを膝にぶつけられたおばさんは相変わらず私に目をあわせることもなく、無表情です。
とにかく私が降りないと隣に座っていた男性も降りられないので、ひとまずおばさんの膝を足で退け、何度も謝りながら外に出ます。
今度はおばさんは降りなかったようでした。
撮影を終えて、隣の男性が先に乗り込んだのを確認してから、私もおばさんに謝りながら乗り込みます。
なんか一言も話していないのに、このおばさんは私にとって今回の旅でもっとも印象深い人の一人になってしまいました。
いや、私が一方的にぶつかって絡んでいるだけなのですが。。。
出発してから25分、もう少しでホステリアに到着というこ所でバンが止まりました。
なんか車内がざわついています。
スペイン語が理解できないので他の乗客と運転手さんがどんな会話をしているのか正確にはわからないのですが、なんとなく想像はつきます。
どう考えてもこのバンはオフィシャルの送迎車では無いので、敷地内に入れないのでしょう。
他のお客さんも、「なんだよ~」という顔とジェスチャーをしながら降りていくので、私もおばさんが降りたのを確認してからバンを降りました。
まぁ、ここから歩いてあと5分、10分ぐらいですしね。
先ほどアマルガ湖公園管理事務所のところで「5時に来るよ」って言われたのがオフィシャルのバスで、それを待つか1時間半歩くよりはここまで運んでもらえたほうがぜんぜんマシです。
再びザックを背負って、ホステリア・ラス・トレスに向かって歩いていきます。
しっかし、すごい寒いです。
いや、陽も差しているのに寒いのはおかしいです。
思い当たることと言えば、パイネでは欠かさず着ていたユニクロのヒートテックの肌着上下をシャワーを浴びた後から着ていないことだけです。
そっか、ヒートテックってこんなに効果があるんだと感心しながらホステリア・ラス・トレスを目指します。
そして、先ほどのおばさんは1泊3万円以上はするホステリア・ラス・トレスのお金持ちのお客さんかと思っていたら、手前にある山小屋(たぶん一泊数千円)の方へと歩いていきました。
意外と庶民派だったのですね。
歩いて5分ちょいぐらいかと思ってましたが、15分ぐらいかかってようやくホステリア・ラス・トレスに到着しました。
まずは車のロックや中の荷物(トランク)は大丈夫だったかを確認します。
一瞬、デジカメのデータ退避用のHDD付のフォトビュアー(ヤフオクで中古を安く購入)が無くなったと思ったのですが、ちゃんと探したらダッシュボードに放り込んでありました。
ザックを車に放り込み、ホテルのフロントに向かいます。
前と同じスタッフに質問すると同じ答えが返ってきそうだったので、まだ話しかけていなかった男性スタッフに「ガソリンを入れたいんだけど」と声をかけます。
すると、彼が電話に手をかけたので、やっぱりここで入れられるんだと安心した直後、横に居た前回話をした女性スタッフが彼の手を押さえて、スペイン語でなにやら話しをしています。
すっごく嫌な予感がするのですが、その予感のとおり、男性スタッフはこちらを向いて「ガソリンはありません」と言いはじめます。
なんか客を選んで売っているようにしか見えないのですが(まぁ、宿泊客優先とはっきり言ってくれれば納得するのですが)、これは困ったことになりました。
「国立公園反対側のホテルかセロカスティージョの町で入れられますが、そこまでは走れませんか?」
と逆に質問されますが、まぁ、すっからかんでは無いので、その2箇所までは持つと思います。ただ、セロカスティージョの町のガソリンスタンドは営業しているかどうかも怪しいし、もうひとつのホテルと言っても、同じように売ってもらえなかったら、本当にアウトです。
「他のホテルで聞いたら、ここでガソリンを売っているって言われたんだけど」
と、食い下がってみたところ、こないだも対応してくれた女性スタッフが
「売っているんですけど、今はありません。次にプエルトナタレスから届くのも後になります」
なるほど。
こう言われては仕方がないです。
そして、こうなってくると、もうひとつのホテルも売っているかどうか怪しいです。
「もしよろしければ、もうひとつのホテルで今売っているかどうか確認してもらえないでしょうか?」
と、駄目元でお願いしてみると、女性スタッフが男性スタッフに指示を出し、電話で確認を取ってくれました。
受話器を置いた男性スタッフは涼しい顔で
「あちらのホテルにもガソリンはありません」
と、嫌な予感通りの状況を知らせてくれます。(信じてそちらに走らなくてよかったです)
まぁ、よくよく考えてみれば宿泊客でもない私があつかましく売ってくれとお願いしている立場なので、ここでジタバタしてもしょうがないわけです。
少なくとも、メーターの後半の減り方が予想以上に加速しなければセロカスティージョまでは走れるのですから、そこでもう一回チャレンジすることにするしかなさそうです。
対応してくれた男性スタッフにお礼を言い、ホステリア・ラス・トレスを後にします。
(15:30)
後編につづく
0 1 2 出発・移動
3イグアス
4 5 6パイネまで移動
7 8 9 10パイネトレッキング
11 12 13パイネからエルカラファテ
14 15ブエノスアイレスへ