1976年、シルベスター・スタローン主演・脚本の映画。
監督のジョン・G・アヴィルドセンはボクシングを題材にした『ロッキー』のあとに空手を題材にした『ベスト・キッド』をヒットさせ、『ロッキー』同様、続編が製作された。
同じシルベスター・スタローン主演・脚本の『ランボー』もそうだが、最初の作品はテーマ性が高く、続編は娯楽性重視になっている。
『ロッキー』は大ヒット後に4つの続編が製作されたのち『ロッキー・ザ・ファイナル』で再びテーマ性の高いものに回帰して幕を閉じている。
1960年代後半~1970年代前半、アメリカではベトナム戦争をきっかけにして若い世代中心に屈折した感情が渦巻き、それは映画にも反映した。
この年代のアメリカ映画は「アメリカン・ニュー・シネマ」と呼ばれ、暗くハッピーエンドを拒否するような内容が流行した。
『ロッキー』も当初、屈折したラストを想定していたが、脚本のラストを読んだシルベスター・スタローンの奥さんが「やだよこんな男」と言ったのをきっかけに、ボルテージの高まるラストに変更された。
15歳で夢を持ってボクシングを始めた主人公は芽が出ないまま気がつけば30歳を迎える。
フィラデルフィアで社会の下層から抜け出せないばかりか、闇金の取り立てをやって生計の足しにするなど、不本意にも人生から完全に転落する瀬戸際に追いつめられている。
ただ、主人公のロッキーはもって生まれた正直さ、優しさを失っておらず、内気で人との交流が苦手なことからやはりロッキー同様、不本意な人生を送っているエイドリアンという女性との交流を深めていく。
ふたりの未来にはなかなか光が見えないと思われたが、…ふとしたことからチャンスが舞いこむ。
ある事情から世界チャンピオンのアポロがロッキーに試合を申し込んできたのだ。
「絶対に勝てない」とは思ったが、アポロと戦ってもしも15ラウンドまでリングに立てていたなら…。
ロッキーは全身全霊をこめて戦いに臨む。
それはロッキーの人生を賭けた戦いだった。
「アメリカン・ドリームって言葉忘れたか?」
…屈折したアメリカン・ニュー・シネマによって結局は低迷していたハリウッドは目を覚ます。
相前後して、ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』、スピルバーグの『ジョーズ』、リドリー・スコットの『エイリアン』など、人生の困難に果敢に立ち向かう人間を描いた映画に観衆は熱狂し、本来のアメリカらしい明快さとエネルギッシュな姿勢を取り戻したハリウッド映画は空前の繁栄期に入る。
ロッキー同様、超低予算のこの映画を製作する前までまるで無名でながいあいだくすぶっていたシルベスター・スタローンは、この後スターダムを昇っていく。
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2023/12/29 05:33:58