「トランスミッタキーの登録や削除などの機能も通常通りサポートしているのか」と聞かれたので。
その前にワイヤレスドアロックの仕組みについて。
トランスミッタ内蔵キーはボタンが押されると、自身に書き込まれた固有IDと共に押されたボタンの種類を電波で送信する。
正規のフォーマットに則った電波を受信したレシーバは、まず受信したIDが自身に登録されているキーIDと一致するかチェックし、登録されているキーから受信した場合のみ押されたボタン毎のコードをボディコンピュータ(シエンタの電技マニュアルでの名称はドアロックコントロールリレー)に有線で送信し、ボディコンピュータが実際の動作処理を行っている。
レシーバに入る車両ハーネスは全部で4本(BAT電源/グラウンド/RDA/PRG)で、RDAはボディコンピュータへ信号を送出する線、PRGはボディコンピュータからの信号を受信する線である。
今回の純正ワイヤレス乗っ取りシステムは、レシーバとボディコンピュータ間の通信線に割り込み、レシーバのRDAから信号を受け、作成した偽装信号をボディコンピュータのRDAへ流す事で制御していて、つまりレシーバとボディコンピュータはRDAが物理的に繋がっていない。
それ以外はBAT電源とグラウンドから分岐して電源系を確保し、唯一PRGだけが元のままレシーバとボディコンピュータ間のみで直結している。
トランスミッタキーの登録や削除などを行う際には、隠れキャラ出現コマンドの様に通常では有り得ない長ったらしい操作を行う事でモードに入れるが、これら「ドアを開け閉め」「キーを抜き挿し」といった動作はレシーバでは判別できず、ボディコンピュータがそれらの識別をした後にPRG線を使ってレシーバに「正しく登録モードに入ったんで、いまから受信するIDを登録(または追加・削除)してね」と知らせ、それによりレシーバが受信したIDコードを登録/削除するわけだ。
通常使用時においてレシーバからボディコンピュータへは2から4つあるキーのボタンに応じたコードしか送信されない。
通常以外の上述の様な場合のコードなども全て調べて実装すればベストだが、フォーマットの違うコードだったら面倒だし、数年に一度あるかないか程度の操作の為に全てを調べ上げるのも効率が悪い。
なのでトランスミッタキー登録などの特殊な場合には割り込んでいる配線を元に戻した方が手っ取り早い。
そんなワケで
試作機ではリレーを載せて機械的に戻せる様にしていた。
写真をよく見ると基板上右下にリレーが載っているのが判るはず。
で、完全版では回路の信頼性そのものは確保できたので、リレーを廃して自前で純正モードをエミュレーションしている。
純正復帰スイッチをONにすると割込みを含む一切の処理を停止して、20MHz動作のPICマイコンが毎秒500万命令を処理できる全能力を注いで「レシーバから受信したコードを無加工でそのままボディコンピュータへ送信する」いわゆるパススルーモードに入り、スイッチがOFFになるまで予約ロックモードに戻らない。
これによりキー登録・削除操作を可能にしているワケだ。
偉そうに書いているが、つまりは横着なことで手間を省いている。
ちなみに通常の予約ロックモードでは無信号状態が10秒間継続するとPICマイコンはスリープに入り、「信号を受信する」「いずれかのドアを開く/閉める」「キーを挿す/抜く」のどれかの操作で復帰するが、パススルーモードではスリープは行わない。
これはすでにフォーマットが判明している通常の押下ボタンコードなら、スリープから復帰するのに十分な時間がある事が判っているからスリープ出来るが、それ以外のキー登録時などでは送信コードがどうなっているのか調査していないため念の為の措置だったりする。
あと、オマケの話なのだがパワードアボタンが押された際のコードを受信した場合には、実際にはパワードアボタンのコードをボディコンピュータへは送信していない。
その代わりに運転席前にあるパワードアスイッチをトランジスタ経由でマイコン制御し、こちらで開け閉めしている。
どちらで操作してもボディコンピュータが行うパワースライド操作に違いは全く無いのだが、トランスミッタキーでの操作ではボタンを0.9秒間押さなければならないのに対し、パワードアスイッチでは0.5秒間で済むのである。
わずか0.4秒間だが感覚的に素早く動作する様に感じられ、今回のシステムでやってる様にパワードアボタン一発でアンロックから0.5秒ドアオープンまで連続して自動に行える速さに慣れると、ノーマルの様にアンロックボタンを押してからさらにパワードアボタンを1秒ほど長押しするのが面倒でイラッとしてしまう。
楽に慣れると苦に戻れないダメな人間なのだ(笑)
とりあえず予約ロックモードとパススルー(純正標準状態)モードの動画でも。
Posted at 2013/03/19 05:01:22 | |
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