
シトロエンC5の全般評価については、拙稿をユーザーレポートに載せましたので、ご興味ございましたら
そちらをご覧いただければと思います。
さてハイドロニューマチックサスペンションについてですが、私的にはエアサスとダンパーが一体化した機構と理解しています。メカニズムとしてはきわめて古典的で第2次世界大戦前より航空機の引き込み式の車輪のサスペンションや引き込み機構として採用されている枯れた技術ですが、これを積極的にクルマに応用した物好きなメーカーがシトロエンだったと(ロールスロイスやメルセデスも一部採用実績あり)。
技術的には、エアサスの特長である可変バネレート(小入力には低く負荷が高くなる程に増加)により、通常走行時には路面からの衝撃をゆったりと受け止める乗り心地が実現されます。またスフィアと呼称される窒素ガスとオイル系の組み合わせよりなる装置を複数個(C5の場合は確か6個、4輪各1個+補助2個だと記憶しています)もち、これを相互に連結・遮断することにより、エアとオイルの容量を可変させることで4輪のサスペンション全体の減衰特性をコントロールして、直進走行時(ピッチング、ヨーイング)やコーナーリング時(ロール)の姿勢を制御します。ハイドラクティブはこのコントロールを電子制御で高度・高速に行うハイドロニューマチックサスペンションであるといえます。
まあやっていることは、金属バネとダンパーをもつその他のクルマと変わりませんが、先に述べたようにストロークの大きい応答フィール(愛好家からはマジックカーペット、フラットライドとか言われるもの)、車体高の制御が容易、スフェアなどの装着位置の空間的な自由度が高いこと(スペース確保が容易な点)が長所となり、これも最近まではシトロエンの伝統であった後輪のフルトレーリングアームの懸架方式や前輪幅>>後輪幅、サスペンションジオメトリーの設定といった特徴と合わさり、独特の乗り心地を実現しています。一方、路面の細かい凹凸、ハーシュネスには弱く、これはブッシュなどで対応しており、C5は前世代に比べると、ここのところの技術的な進歩は大きかったといえます。
C5(特に前期型)については、前作エクザンティアから、ブレーキ系統の切り離しを含めてサスペンション系に全面的に見直しがかかったため、往年のハイドロファンからは、持ち味が薄くなった、面白みがなくなったと、さんざんな評価でしたが、素人にはその分馴染みやすく、購入後は、日常の利用でも、その独特の乗り味を堪能することができました。私のC5は信頼性の面でやや難がありましたが、ハイドロサスペンションについては期待に違わず、機会があればまた乗ってみたいと思うほどユニークかつ興味深いものでした。
以上、長くなりましたが前車シトロエンのお気に入りのメカニズムについてお話させていただきました。次回は、S60の駆動系について話を進めたいと思います。
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フランス車 | クルマ
Posted at
2011/05/01 11:38:11