【329】あえて問いたい、刑法って誰のためにある？

前にちょっと話題になり、記憶している人も居るであろう事件がひっそりと闇に葬られようとしています・・・

自身の父親や妹ら３人を殺害した容疑者が心神喪失とのことで不起訴処分だと・・・。こういう事件があるたびに、なんか司法っていったい誰のためにあるのか真剣に考え込みたくなります。

心神喪失というのは、要するに判断力の低下により物の良し悪しがわからなくなっているから犯した犯罪の責任能力がない、って事でしょ？それは過失致死にも及ばない、いわば自然災害などで偶発的に死亡したのと同じような位置付けになるわけですね？これってどう考えても被害者縁者には到底納得できない理由だと思うんですよね・・・

それにこの手の処分の一番の問題点は、心神喪失なら罪に囚われない、ってトコだけがあたかもエンドポイントのように存在し、それを狙ってあらゆる事件犯罪の弁護側の常套句となっている点ですね。これって思いっきりはしょっちゃえば、心神喪失なら何してもイイ！ってことでしょ？

それってあんまりじゃないですか？

相手が心神喪失なら殺されても文句言えないんですか？

ここは昔から非常に疑問に思っていて、”罪を憎んで人を憎まず”の最も悪い実例と感じてきました。いっちゃなんですが、犯罪を起こすのは”人”であり、”罪”が起こさせるのではありません。また心神喪失とは言え、その”精神”は”人”という入れ物に宿っています。例え”精神”と”入れ物”がちゃんとシンクロしていなくても、腹が減れば飯は食うし、尿意を催せばトイレにも行く。だから”精神”と”入れ物”が完全に分離した状態とはほぼありえない状況です。よっていくら心神喪失でも、それを理由に”入れ物”に対する処罰を完全に免除するというのはとんでもないことです。更に言えば、その実例を犯罪の弁護手段にするなぞ、全く持って有り得ないことです。

この心神喪失状態とは以後精神病院での隔離がされるはずですが、精神病院の維持管理には多大なコストが掛かります。精神病院にはこのような犯罪を犯して心神喪失として入院させられている患者が少なくないわけですが、そこに多額の税金を投入することまで考えると、いったい誰が何をしたいがためにそのような処分を下すのか本当にわかりません。責任能力がない犯罪者の罪は問えない？そういった犯罪者の自由を奪う（投獄や処刑）は倫理的に許されない？まぁ、そうかもしれません。しかし精神病院での外部と隔離した扱いはそれに近い扱いでしょ？だから刑を免れても結局は同じような状態になります。しかも明確に罪に問われないがために贖罪の機会はなく、そのお陰もあり被害者縁者の感情もやり場がありません。まさに誰も得をしないサイテーな扱いです。人の命は等しく重いと言う精神は大変立派だし、人権は等しくあるべきというのも観念として正しいと思います。だからこそ、人を殺めた加害者には、人一人の自由と人権を奪ったにふさわしい罪を負わせるべきです。それは”精神”ではなく、あくまで入れ物である”人”に対してすべきです。よって今回の限らず、心神喪失を理由に刑を軽減免除するのは金輪際止めるべきです。

以下転記：
52歳男、心神喪失で不起訴＝親族3人殺害－和歌山地検

3月26日17時2分配信 時事通信

　和歌山市の民家で昨年12月、82歳の父親と長女（49）、孫の男児（12）3人の刺殺体が見つかった事件で、和歌山地検は26日、心神喪失で責任能力が欠如していたとして、殺人容疑で逮捕された長男（52）を不起訴処分とした。
　地検は長男に入院の上医療を受けさせるよう心神喪失者等医療観察法の適用を和歌山地裁に申請。地裁は同日、鑑定入院命令を出した。