アース線接続見直し等の点火系改善の要素もあってか、
パイロット系領域(低速域や低開度)は度重なる調整を経てかなり扱いやすくなってきたが、
もう少し違和感なく、言い換えると思いのまま操れるようにしたい。
●現状のパイロットスクリューの戻し回転数が3と1/2前後と大きい。
パイロット経路は上流側(パイロットジェット)で流量を規制されている(川でいえばダム放水路)ので、いくらパイロットスクリュー開度を大きくしても既に頭打ちになっている可能性がある。
通常は1と1/2回転戻しあたりが量産車の標準なので、最適戻し回転数をその辺りに合わせられれば、気候や標高などの変化があっても調子が崩れにくく、微調整もしやすいはずである。
●ギヤチェンジ、特にアップシフト時は、一瞬のスロットルオフでギヤ噛みあいのバックラッシュを使いクラッチレバーは握り込まず瞬間的変速をしたいが、現状では特に低開度ではタイミングをとりにくく、クラッチをしっかり切っての変速とせざるを得ない。
キャブレター調整だけが原因とは限らないので各部を点検する必要はあるが、一因にはなり得る。
●上記にも関連するが、スロットルの開け閉め、特に戻した際に「ガツン」と唐突にトルクが落ちる感覚があり、四つ角を曲がる時やUターンなどのスロットルでの調整がしにくい。
昔愛用したTX650でも同じような感覚があったので、負圧式キャブレター特有の症状なのかもしれない。
という要求が運転者(つまり筆者自身(笑))からあり、パイロットジェット番手を再度変更して、スクリュー戻し回転数を量産車標準あたりにもっていきたいと思う。
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【現状のパイロットジェット設定】
パイロットジェットは、SR500用社外品を流用して #47.5 を使用していたが、
流量規制の度合いを探るため、手持ちの最大番手 #52.5 に変更してみた。
行き過ぎていれば、手持ちの中間値 #50 を探るという選択肢がある。
(ミクニのジェット番手設定は、通常2.5番刻みとされている)
【パイロットジェット組み替え】
毎度のことで、まず燃料コックを閉め、フロートチャンバーのドレンから燃料を抜き(清潔な容器で回収しタンクに戻す)、エアボックス/電装品マウントユニットを取り外す。
今回はフロートチャンバーのみ取り外した状態でジェット交換をできないか試してみたが、ホース類やケーブル類などが邪魔になりフロートチャンバー復元もパッキンがずれたりとやりにくく、斜面ではねじ挿入も傾いてすんなり山が噛み合わなかったりと、不確実な作業は却って面倒を引き起こしかねない。
結局はマニホールドからキャブレターごと外して作業した。急いては事を仕損じる。
※キャブレターを取り外した際は、マニホールド(=燃焼室)内部に異物を落下させないよう、すぐにフタをしておくこと。運よく異物落下に気付いたとして、磁石で取り出せなければシリンダーヘッド取り外し、Vバンク側ならエンジンを降ろしての作業になりかねない。
異物落下に気が付かずエンジン始動した場合、燃焼室全損も起こり得るので、「たぶん大丈夫だろう」と甘く考えてはいけない。
引き側のスロットルケーブルがキャブから外れてしまったが、慣れもあり今回は比較的容易に復元。とはいえ、屋外の照明下作業では作業開始から完了まで1時間強を要した。
時間に追われている時や、体調・気分がすぐれない時などは無理に手を付けないほうがよいだろう。
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ジェット変更の都度、キャブレター脱着は非常に面倒なので、ついでにジェットニードルのクリップ位置変更なども試してみたくなるが、仮に調子が出てもどの部分が影響しているのかわからなくなってしまうので、あえてパイロットジェット変更だけにとどめる。
暖かい晩だったのがまだ幸いだった(手がかじかんでしまうと細かい作業がしにくく、燃料系はガソリンの気化熱でさらに手が冷えるので)。
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【試運転でのパイロットスクリュー再調整】
詳しい設定の手順は別の記事にまとめたいが、考え方としてはジェット変更で流量が増えている分、パイロットスクリューの絞り加減で燃料吐出量を決定する。
今回は、奥まで締め込んだところから、2回転戻しからスタート。
もしチョーク(スターター)を戻してファストアイドルさえできないようなら、もう1/4~半回転程度戻してアイドリングできる程度にする。
●状況・環境によるが、筆者は目安として30秒~1分間くらいアイドリングさせ、負荷を掛けないように暖機しながら走らせて様子を観察。
明らかな不調や、スロットル操作への反応など気付いたことがあれば、安全で支障のなさそうな場所を見つけて停車、プラグの焼けを参考にスクリュー開度を調整する。
方向性としては、燃料吐出を徐々に絞っていった。
標準のミクニBDSTキャブレターは加速ポンプがない分、スロットル操作への反応とプラグの焼けによる判断はし易い。
異常や不具合なく作動していないと正しい見極めもできず、調整への反応もわかりづらいので、整備の煮詰めが進んできたことを実感できる(ここまで試行錯誤を続けていたのは記した通り)。
大きな外れはないようだが、何度か調整を繰り返す。
徐々に調子が上がってくると、つい「こんなもんかな♪」と自己満足から妥協したくなるが、プロ曰く「行き過ぎて悪くなるところを見極めて最適値を探る」のが正しい方法。
●長い下り坂で先行車両に追いつきかけ、3速5000rpmあたりの速度からスロットルオフを続けていると、赤信号停止手前でエンジンストール再発。
即座に再始動は可能で、スロットルを開け気味にすればアイドリング可能。吹け上がりも悪くなく、走行継続には問題なし。
(パイロットスクリュー調整も兼ねた試運転のため、フロートチャンバー底面防風板を装着せず)
恐らくは低温下、ある程度以上の速度域ではパイロット系ノズルが軽く?氷結して、停止直前のパイロット系領域で燃料又はブリードエアが来なくなるものと思われ、メインノズル系は問題ないと思われる。
●実走での調整は、徐々にパイロットスクリューを締めこむ方向になり、
ひとまず現状は、全締め込みから1回転弱。 15/16回転戻しとなった。
点火プラグの焼けは、写真に写っている側は焼けているが、反対側は黒っぽいねずみ色に見える(カメラのレンズにごみが入り、うまくピントが合わない。ご容赦願います)パイロット系はやや濃いめの方がストールしづらく、トルク感があるので好みだが、まだ薄過ぎて不調になるまでは攻めていないので、さらに締めこむ可能性あり。
とはいえ、1回転戻し以下というのは適正範囲から外れているようにも思えるので、パイロットジェットは前回までと今回の中間の#50が適切なのかもしれない。
一応おおよその低速域の調子は出たので、そろそろ高回転域も視野に入れてオイル交換とタイミングベルト交換を準備中。
オイルを抜くついでに、各部フタなど、少しエンジン周りの化粧直しをしてみたいところ。