【序】
China Energy Reserve and Chemicals Group という、シナの巨大企業が債務不履行に陥った。
China Energy Reserve and Chemicals Group・・・中国エネルギー備蓄化成品製造公社、とでも言えばいいのか・・・面倒だからやっぱりここでは、China Energy Reserve and Chemicals Group と呼ぼうか。
不渡り総額3億5000万ドル。
たかが1企業の倒産、と侮ること勿れ。
自分には関係ない、と思ったら大間違い。
シナが、
“国有企業”を見捨てた。
これは、新たな脅威の予兆なのかもしれない。
着目点はふたつ。
【おさらい~世界経済のなかのシナ~】
①現在の世界経済のけん引役
この数年、先進国が軒並み2パーセント前後の経済成長率で進むなか、世界全体の経済成長率は毎年向上している。IMFの予想では、今年も来年も3.9パーセントくらいまで回復するらしい。
2016年辺りまでの世界経済のけん引役は、先進国中央銀行主導の大規模経済緩和だった(アベノミクスもそのひとつ)。
それが2017年以降、新興国のファンダメンタルズに引っ張られるようになった。すなわち、昨年あたりから新興国の実体経済が勢いづいてきたのだ。
なかでもシナ経済の回復は著しい。2016年以来シナの経済成長率は、世界全体は勿論、発展著しい新興国の成長率を上回る6パーセント台を常にキープしている。
嘗ては盛りまくりの詐欺指標に固定資産と株式バブルをトッピングして、国ぐるみでグローバルな詐欺行為を展開したシナ。
それが2016年からの構造転換で、土地と株の完成バブルから、国内的には内需拡大とIT分野への産業構造転換、対外的には一帯一路を利用した在庫一層と失業者の殖民輸出・・・このような全体主義政策が、皮肉にも世界経済に大きく貢献した。
そう、悲しいかな現在の世界経済の主役は、諸氏ご存知のようにやはり、シナという巨大なマーケットなのだ。
もしここ、つまり
シナ経済に何かあれば・・・回復し始めた世界経済はけん引役を失い、モンスター級のスタグフレーションが到来するかもしれない。
②欠落したままのダメージコントロール
そのときが来たら・・・これの穴埋めは誰がするのか?
嘗ての主役、つまり先進国中央銀行に役を求めようにも、彼等は既にリーマン・ショックからの回復のため、金融緩和の原資を食らい尽くしてしまった。
各国政府は財政政策をやりたくても、既にやり尽した感のある国債の濫発を鑑みるに、議会はこれ以上の財政赤字拡大を認めることはしないだろう(認めたら第二の債務危機が世界中に飛び火するかもしれない)。
多少改善し始めたCPI指数は坂道を転がり落ち、アメリカは利上げを中止する。
しかし(先述と矛盾するようだが)不動産屋のオヤジ(だけ)は財政政策を拡大するだろう。
そうなると折からの政策で崖っぷちだったアメリカの財政収支は火達磨になり、ドルと債券は一気に値崩れし長期金利は上昇する。
世界的デフレで輸出先を失ったエネルギーセクターやITセクター、金融株を中心に、アメリカの株価は一気に値を下げ、先述とあいまって、ドル・債券・株のトリプル安を生むかもしれない。
年内にテーパリングを終了する筈のEUも前言撤回、国債の再買い上げでインフレ政策をとるが、主要輸出市場たるシナが購買力を失うなか、余剰生産力が仇となって失業率が上昇する。それは一旦沈静化した社会不安を再び呼び起こし、各国で移民排斥運動が起こるだろう。こうなると今まで、カネのチカラで周辺を纏め上げていたドイツ第四帝国ももたない。下手をすると、EUは本当に崩壊するかもしれない。
新興国はどうか?
彼等は生産年齢人口がまだ若く、内需拡大も期待できる。アメリカが利上げを中止すれば、債務負担も和らぎ、投資も活性化する。
しかし、過剰生産された世界中の財を吸収するには、彼等の多くはいまだ貧しすぎる。対中輸出に沸いた国内工場には在庫の山ができ、新規設備投資は滞る。
政治的安定性も低いなか、各国に出稼ぎして外貨を稼いでいた働き手も出先で職を失い、帰国して路頭に迷う。
自国だけで完結できない不完全さから、新興国は成長の糧を失う。
③日本の対中貿易
日本も例外ではない。昨年、日本からシナに向けた輸出額は、米国に対するそれを6年ぶりに上回った。額面ベースで言えば、日本にとってシナとの貿易量は、既に世界のどこよりも多くなっている。
巨大すぎる13.8億人のマーケット・・・グローバル化した世界でこれが癌を患うということは、(エネルギーから食糧まで自己完結できるアメリカと違い)日本には死活問題を提起される、ということだ。
まあ何が言いたいのかというと、いまや世界は、
シナがこけると脊椎骨折する、というくらいシナ経済に依存してしまっている、ということだ。
【シナという癌細胞】
①ジレンマ
現在の世界にとって、シナという国は、言うなれば心臓に出来た癌みたいなものだ。
それも、大きく肥大して浸潤を極めた癌。
安全保障のためには癌は切除しなければならないが、それを失くしたら、経済と言う血液は枯渇し、世界は大混乱になる。
そして重要なことは、今回のことでもしも経済のパニッシュメントが起きたら、それは我々が嘗て経験したことのない危機になる、ということだ。
②異質性
前回のリーマン・ショックは、“グローバル化した資本主義”という、拡大政策のなかで発生した。
それはあくまで、資本主義という枠内で発生したものだ。
これに対する各国中央銀行の協調緩和は、言うなればブレトン・ウッズ体制の焼き直しだった。
IMF出動、各国中央銀行の協調大規模緩和、金融投資規制からその後のバブル潰しまで、各国には、世界的な恐慌に対する集団安全保障の下地ノウハウがあったのだ。
しかし、今回のリスクは違う。
今回のリスクは、
シナという統制経済国がグローバル経済にもぐりこみ、国策でそのファンダメンタルズの中枢を掌握するなか、突如掌返しをしたことで発生したものだ。
③何故の掌返しか!?
「中国2035」―
先の共産党大会で、キンペーは言った。
シナ共産党は2035年から2050年までに、
「中国を豊かで、強大で、民主的で、調和のとれた、文明的で、近代化された社会主義国家にする」
「2035年までに国防と軍の近代化を基本的に完了させる」
私器《Utsuwa》は、ずっと「綴る綴る」と言って、サボってきたことがある。
それはシナ、いいやキンペーが目指すものは何か、ということだ。
今回は詳細までは述べないが、上記第19回中国共産党大会の中身が、それに該当する。
シナ、いいやキンペーが目指すもの―
それは、
“アジアから中欧に至るまでの、新たな文明圏の構築”
である。
それは、
“原子力が生む電気エネルギーを礎とした、I.C.T.とA.I.で構成された”文明。
そう、蒙古文明の復活、世界中心の華の復活。
そこには、
アメリカ・キリスト教・石油文明の干渉はない。
思い返すがいい。
4隻に及ぶ空母建艦(うち2隻は原子力空母だ)推進。
海警組織の軍への帰属。
シナ本土沿海に集中した原子力発電所の異常な多さ。
産油国を包囲するかのような、周辺国へのインフラ投資。
一帯一路地域に向け、急ピッチで進む原発輸出。
原油決済への人民元導入。
電気自動車社会への急速な転換と、ガソリン車の締め出し(こういう大事なことを、このSNSは絶対に触れない)。
アメリカ、つまり石油文明の圧力に左右されない原子力を以てライフラインを掌握し、電気エネルギーに基づくI.O.T.社会を構築・統治し、全ての情報を手の内にするなかで経済活動を展開させる。
産業構造転換であぶれた人的資源を植民政策で輸出し、A.I.I.B.を使った札束外交で周辺国のマネーの流れをすべて操る。
これにより、新たな中華文明が完成する。
永代独裁者、習近平のねらいは、まさにここにある。
キンペーの目指す新文明圏の構築。
その目的のためには、不用となったものはすべて切り捨てられる。
China Energy Reserve and Chemicals Group―アメリカ石油文明の申し子。
その債務不履行は、その嚆矢。
これを掌返し、と言わず何というのか!?
④慌てふためく世界
潰れずはずのない国有企業であっても、不用となれば例外ではない。
China Energy Reserve and Chemicals Groupを、シナは潰すかもしれない。
繰り返し言うが、当社は、“石油文明の申し子”だ。
〝China Energy Reserve and Chemicals Group Company Limited explores, produces, and transports oil and gas in China. The company is based in Beijing, China.(Bloombergより)〟
曰く、China Energy Reserve and Chemicals Group Companyは、石油の精製、天然ガスや石油の輸送を生業とする“国営企業”。
しかし、世間は思う。
キンペーの野望からはほど遠いどころか相反するとはいえ、当社は“国営企業”である、と。
ソイツを潰すのか!?
まさか・・・否!!
キンペー=中国共産党は、“国営企業を見殺しに”しつつある。
その意味は大きい。
“国策に合わないとなれば、シナは今後も国営企業を潰し続ける”
経済心理に対するその余波は、見た目以上に大きくなるだろう。
キャッシュ・フローにしろバランス・シートにしろ、共産党というヴェール越しにしか垣間見ることの出来ないシナ国有企業。
そんなのが彼の国では、巨大な経済主体として幾つも蠢動している。
普通の感覚で言えば、(カネにしろモノにしろ)よほど見返りに目が眩まない限り、シナ人であろうとなかろうと、こんな国に投資するのはできれば避けたいところだ。
それでも対中投資が盛んだったのは
“潰さない”から。
売れなくてカネがなくなっても、国営企業には
“国が燃料投下”する。
だから潰れない。
つまりカネをつぎこんでも、財を売り込んでも、潰れなければ投資回収ができる―それがこの国の金回りを担保してきたのだ。
それがいま、裏切られようとしている。
「新文明構築という国策に適わない以上、見捨てるアル!」と。
回収はどうする!?
そもそも売っていいのか?
今更投資引き上げなんて・・・!
シナ国内外問わず、売り手も(関連にカネを出した)投資家も、「頼むから潰さないでくれ!」と言いたいだろう。
【パラダイム・シフト】
①究極のマキャベリズム
今回の件は、資本主義経済に生きる我々にとって、資本主義が
“内部から社会主義経済の脅威に晒される”
初めてのケースだ。
シナ=キンペーは、国策に合わなければ身内でも潰す。
この件、つまりシナの“国有企業”の破綻を、北京が見捨てたとすれば・・・これは今後の世界経済、つまりシナに過度に依存する風潮に対する、神様の警告なのかもしれない。
曰く「与信管理なき対中投資は、水着美女をひとり南トンスルランドに送り込むのと同義だ」
神様は言う。
「だから独裁統制国家を、グローバル自由主義に組み込むな、とあれほど・・・!!」
・・・心ある識者はみな反対した。
経済は、民を潤すもの。
経済は、民のためにあるもの。
民主主義国家はこれを担保するもの。
だから自由主義経済と民主主義体制は、普遍性をもった。
経済がただの国力争いの道具に過ぎないというなら、その覇者は間違いなく、統制経済国となる。
当たり前だ。
②変わりゆく世界
民のための筈の経済が、国家のためにあるのが、統制経済国の特色だ。
そこでは、民の暮らしは、民のための社会は、独裁者たちのエゴに蹂躙されることを是とする。
すべての民の暮らしを破壊しても、国土全ての環境を汚染させても、経済が輝くのならばそれは正義である。それが統制経済国の大義だ。
残念ながら民主主義国家に、その大義はない。
従って、
すべてを切り捨て、経済効率を最大限にまで追求する国家が、経済における競争で覇者となるのは自明の理である。
だから、シナ国内外問わず、マネーと財は、シナという
“最大限に効率化された成長市場”に投下されたのだ。
それが今、とんでもない掌返しに遭っている。
シナは、「改革解放」という大義のため、国有企業を最大限に活用した。
そしてキンペーは、「中国2035」という大義のため、過去の遺物・・・国策から外れた国有企業を切り捨てようとしている。
それに自ら巻き込まれた我々自由主義陣営・民主国家の民たちは、未だ為す術もない。
2018年6月7日現在、世界はこのこと、あまり騒いではいないけど・・・
ブラックスワンかもね。
一刻も早いダメージ・コントロール戦略を立案しなければならない。
【追記:大事なこと】
たとえ今回が大事にならなくても、キンペーは“新中華文明”で西太平洋からアジア・ユーラシアで覇権を握ろうとしていることは変わりない。
繰り返すがシナは、国策のためなら国有企業も尻尾切りをする。
換言すれば、シナは経済規模拡張のためなら、何でも犠牲にすることができる。
そして思い出して欲しい、昨年9月、シナはシャドーバンクへの規制強化を始めたことを。
同年10月の第19回共産党全国代表大会で、本格的にシャドーバンクを徹底修正すると宣言したことを!
シナにおいて国営の銀行は、前述China Energy Reserve and Chemicals Groupはじめ、国有企業をメインに融資をしている。
一方で民間の運転資金や投資資金は、シャドーバンクから融通されている。
シナ経済は実質、このシャドーバンクからの融資がなければ成り立たない。
そしてシナ国内経済主体のシャドーバンクへの負債は、2016年末で実にGDPの370%に及んでいる。
ここに“国策”として大幅な規制が入るとどうなるか?
シナの民間企業は、資金源を断たれる。
倒産が続発する。
倒産するのは、“国策に適わぬ民間部門”、つまり繊維、不動産、建設、パクリ型家電産業などだ。
国有企業でさえ見捨てるシナが、資金ショートする民間に向け、一体どれだけの情けをかけるだろうか?
原子力・I.C.T.・A.I.・自動運転・重工業・・・こういった国策から零れ落ちた、消え行く民間部門。
地雷原はここにも広がっている。