
【はじめに】
マクロ経済政策というものは、政府目線で言えば結局、歳入を増やすためにとる戦略のひとつである。
そしてそれはもう、膨大な数の実績と統計から導き出される、細かい政策の積み重ねで構成されている。
我々は、政府が施すマクロ経済政策が如何なるメリットを生むのか―それを巡って、時の政権を選んでいる。
で、このマクロ経済政策だが、これを研究していると、“面白いこと”に気がつくことがある。
まあ、つまらない経済のハナシだから、睡眠薬の代わりに読んでくれ。
【知っとくといいこと】
今回も、前回に続いてアメリカ経済と日本の安全保障のハナシ。
アメリカという国について―
共和党は保守だから、<小さな政府>
民主党はリベラルだから、<大きな政府>
―コレ、間違い。
アメリカ共和党は、<大きな政府>
アメリカ民主党は、<小さな政府>
…意外でしょ?
まあアノ国はロビイングも合法だし、大きな会社や大金持ち投資家が要求すれば、政府が動かすカネも莫大になる。従って“共和党は大きな政府”になる道理も理解できる。
というか、シナの国営企業もアメリカの金持ちも大企業も、同じ穴のムジナなんだな。
改めて―
共和党は保守で、“神の見えざる手”原理に従い、小さな政府を志向する
民主党はリベラルで、“マルクス的二元論”世界観のもと、大きな政府を志向する
―こういう思い込みは、ステレオタイプだ。
それはまあいいとして、歴史を紐解くと―
〝アメリカでは、民主党政権時よりも共和党政権時の方が、財政出動の規模が大きい〟
―これは紛れも無い事実である。
で、これと日本の安全保障を結びつける。
…世のなか、何をするにもカネが要る。
安全保障も同様、防衛装備品の購入やら、人材教育やら、これらの維持メンテには、沢山のカネが要る。
安全保障のカネの出処は、租税だ。
租税は、一般会計で言えば、所得税・法人税・消費税が3本柱だ。
これらはいずれもが、景気がよくなれば増えるタイプのものだ。
で、日本のGDPは内需が6割以上、というのは間違いではないのだが―
〝アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく〟―これも事実だ。
外需頼みの景気(経済ではない)―租税。
これはつまり、最大の市場たるアメリカの景気が拡大すると、日本の税収がよくなることを意味する。
↓のグラフ『Propotion of expenditures to GDP』を見て欲しい。
1987年から1992年、レーガン政権末期からブッシュ政権にかけて、アメリカは共和党政権。1985年プラザ合意からのドル大幅切り下げはじめ、所謂、三つ子の赤字(財政・貿易・家計)華やかかりし頃のことだ。
共和党政権は選挙に勝つため、景気浮揚策を徹底した。
財政赤字無視して、戦争とマクロ経済政策をやりたい放題だった。
これは日本の輸出=外貨獲得を大いに鼓舞するところとなった。
下のグラフ『対世界輸出入額及び差引額の推移』にあるように、日本は内需拡大を強いられたとはいえ、輸出はどんどん増えていった。
アメリカ政府がばら撒いたカネはソニーやトヨタに飲み込まれ、それがトリクルダウンされ、国内消費にまわった。
その先はバブルとなったわけだが、ともかくその結果、グラフ『日本の一般会計税収』にあるように、所得税が激増した。
そして2001年から2008年、息子ブッシュの時代。
アメリカは新自由主義を唱え、金融・ITというフロンティアの拡充に向けて、クリントン政権で一旦縮小した公的支出を、再び拡大する。
再びグラフ『対世界輸出入額及び差引額の推移』。
財政政策でアメリカ人が儲けたカネは、日本から輸入した資本財や生産財の購入に使われ、日本の輸出は再び鰻上りとなった。
トヨタの経常利益が1兆円を突破したのも、この頃だ。
輸出で儲かったカネは、日本国内の個人には回らなかった(所得税は減った)ものの、グラフ『日本の一般会計税収』にあるように、それを上回る法人税収入が、第一次安部政権の懐をこれまでになく慰めた(相変わらず歳入の半分はソブリン債)。
これが、庁から〝省〟に昇格した防衛省の財源として、大きく寄与することとなった。
そしてほぼ同時期に海洋基本法も成立、日本は自身の領海をより堅固に守ることが可能になったのであるが、勿論、その財源にもこの税収は貢献している。
…もうお解かりだろう。
中央地方問わず、アメリカの政府が放出したカネは、まわりまわって日本の税収に大きく寄与するのだ。
このこと、よく覚えておいて欲しい。
【財政の崖】
再びアメリカの話。
8月2日付 Bloombergより―
『米連邦債務上限を巡る根強い懸念を背景に、この日は10月12日償還の財務省短期証券(TB)レートが上昇し、償還期限が1-2週間先のTBを下回るパフォーマンスとなった。マコネル共和党上院院内総務は記者団に対し、私とシューマー民主党上院院内総務、ムニューシン財務長官は、債務上限を確実に引き上げ「断じてデフォルト(債務不履行)に陥らないようにする方策を探している」と話した。』
『断じてデフォルトに陥らないようにする』www
―で、不動産屋のオヤジがつくった政情不安からのドル安は、テーパリング観測の再進行で、1円近くのドル高に転じたのだが・・・為替トレーダーの連中、勘違いしてないか?
アメリカのいう〝デフォルト回避〟って、〝債務上限を積み増し〟することだぞ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、“時間稼ぎ”だぞ?
オバマ・バーナンキの政策が息切れし始めて、経済指標が斑になっていくなか、共和党は、大きなテーパリングなんて求めないぞ?
もう一度言う。
不動産屋のオヤジがどう思ってるかは知らないが、この数ヶ月で既に市場は、〝実はここまでの米景気はオバマとバーナンキの置き土産だった〟ってことを解りはじめてる。
アメリカという国を考えると絶対に愚かなハナシだが、確かに“感傷的には”オヤジの言いたい事もわかる。
しかし、正しい理想も、それを実現するための論理的な政略戦略がなければ、絵に描いた餅に過ぎない。
本質的には、お花畑思想と同じ。ノリは、「キュウジョウ守れば平和がくる」ってヤツと一緒。
それでも、トランプノミクスの実現可能性なんて白昼夢に過ぎないと判っていても、このゲームから降りられないトレーダーたち…度し難いわ。
で、そんな連中を横目に、為政者たちは〝権威の正統性〟つまり、〝優秀な経済指標〟という成績表を〝作文〟するために、テーパリング論を押さえ込む。
いつか確実に、副作用はやってくる。
オバマケア代替、2度目の頓挫。
税収、どうすんの?
メッキが剥がれた今、幾らあがこうと残ってるのは〝財政の崖〟。
だから、『断じてデフォルトに陥らないように』、という対処療法は、今回のようにまた、幅をきかせる。
コレ、基軸通貨で世界最強の軍隊持ってるから何とかなってるけど、その他の国だともう、お金に翼が生えて逃げ出してる状態。
中期的に見たら、
黒電話粛清→中東の武器市場、仕入先失う→軍産複合体、新規開拓で取って代わる→税収増
ってシナリオもあるが、時間がかかりすぎる。
現在のアメリカ、正直いうと他国に軍事費出してる余裕無し。
【形振り構っていられない】
それでも、現在の世界のためには、アメリカの政権与党は共和党でなくてはならない。
秩序が混沌へ向かうにしても、その加速度は非線形であってはならない。
アメリカよ、カネを出せ…もとい、使え。
景気対策やれ、インフラ投資やれ、軍事支出増やせ!
アメリカ共和党よ、世界…いや〝日本のために〟、どうか歳出増やしてくれ。
財政の崖?…そんなもの気にせず、どんどん先延ばししろ!
私は日本人だ、知ったことではない!
デフォルト回避…先延ばし法案、財政出動、是非やってくれ!…細かいことは気にせず、やれ!
そして大切なのは、選挙のため保身のため、アメリカ共和党が作ってくれる、この〝時間とお金〟―我々日本は、コレを活かさない手は無い!!
今のうちに、アメリカ与党と大統領が共和党であるうちに、カネをもらおう。
そして国防予算増やそう!―敵基地攻撃能力・継戦能力を増やし、単独でも生き残る国を作ろう!
アメリカが共和党政権でいてくれる限り、先延ばしは続く! 時間はまだある!!
アメリカ共和党政権の諸氏よ、我々日本の安全保障…〝時間と税収〟は、君達に、君達の手にかかっているのだ!!
おしまい
【追記】
但し、世界のため、大将は―不動産屋のオヤジでなくて、マイク・ペンス―アンタがやれ!!!!
…金美齢さんの話、次こそ書きます。