まとめ記事(コンテンツ)

2015/02/04

マツダコネクト物語:第九章

※この物語はフィクションです。登場する人物、企業、製品、団体等は実在するものとは全く関係ありませんww

第九章:難題

役員A:ところで、デミオはどうしましょう?

口を開いたのは販売担当の役員である。開発担当の役員が応じる。

役員B:今日の話で国産ナビの市場投入は11月以降になる以上、6月発売を予定しているデミオには間に合わない。リコール対応※1したマツダコネクトで行かざるを得ないでしょう。

※1:実際はリコールでは無くサービスキャンペーンとなる。

役員A:そこですよ。果たして我々として、それで良いのか?と。

CEO:先程我々は、多大なご迷惑を掛けているお客様に対して誠意ある対応を取ると決めました。ただ残念ながらここ1~2ヶ月中に実施を決めたリコール
※1でも、お客様に100%ご納得頂くレベルに達するかは判りません。そうと知りながら、間もなく発売するデミオでもマツダコネクトのみというのは、お客様から見て誠意ある会社と写るのか?ということです。

役員A:アクセラのお客様からは他の選択肢が用意されない事への不満がありますし、お金なら払っても良いいう声も多い。どうでしょう?なんとかディーラーオプションに国産ナビを用意出来ませんか?

役員B:いや、そりゃ無理です!今から国産ナビを搭載可能にするなんて不可能です。

役員C:今から設計変更となると、生産計画の見直しも必要になりますな。現実的にはどうも、、、


開発担当が即座に応じ、製造担当も同調した。デミオに2DINのナビ搭載スペースは無いのだ。

CEO:二人とも慌てないで。誰も既製品の2DINナビをデミオに載せろなどとは言っていませんよ。国産ナビを載せる別のアイディアは無いかという話です。

開発、製造の二人の役員はややバツが悪そうな表情を浮かべた。少し間を置いて開発の役員が口を開く。

役員B:デミオの設計は基本的に変えずに、搭載可能な専用品を供給してくれるサプライヤを探さないといけないですね。

CEO:それが出来れば、不安を感じているお客様に別の選択肢を用意したことになります。 マツダコネクトの改善に努めるのは勿論ですが、 アクセラを通じて寄せられた不満に対する会社の姿勢を示すものです。無理難題なのは百も承知ですが、検討してくれませんか?販売の方も需要予測があるわけではない。厳しい決断をしなければならないだろうが、ここまでお客様から不満を頂いていて、無策と言うのでは次の株主総会でも説明がつきません。

役員B:わかりました。早急に検討します。


大幅に予定時間を過ぎて役員会が終了した後、松本は役員からこの宿題に関する協力を依頼された。ナビメーカー各社とのパイプに期待されたためだ。デミオ向けの専用ナビを短期間で開発し、提供してくれるナビメーカーを見つけなければならない。しかも時間が限られている。デミオの国内向けの発売は、何もなければ6月に予定されていて後3ケ月足らずだ。普通なら無理な話である。通常ならこういった無理難題は、開発部門からの「実現不可能」という回答で終わるケースである。逆立ちしても出来ないものは出来ないのだ。しかし今回ばかりはそうもいかない。なんとか実現する方法を見つけなければ。

先ずデミオの開発チームが急遽、搭載可能となる社外品ナビの仕様を策定した。国内向けのグレード展開も粗方決まっており、もうタイミング的には白紙に戻せない。マツダコネクトが標準装備でないグレードのマルチインフォメーションディスプレイを外してナビモニターを取り付ける事、CMUを搭載するスペースにナビ本体となる基盤などを収める事。ステアリングスイッチとのI/Fを持つことなどの仕様を策定する。

デミオを、そしてマツダコネクトを開発してきたチームからすれば不本意な仕事である。もともと既製品のナビの使い難さを解消し、ドライビングに集中しつつ、ドライバーが求める様々な情報に簡易な操作でアクセスを可能とする、視線を手前に落とす必要が無いコックピット「ヘッヅアップコックピット」というコンセプトがマツダコネクトのシステムの根底にあるからだ。

マツダコネクトを搭載せず、既製品のナビを搭載するというのは言わば自己否定であり苦渋の選択なのだが、開発部門としては自らが巻いた種である。

仕様確定を待たずにナビメーカー各社とのコンタクトを開始した松本だが、反応は思わしく無い。ポータブル機をラインナップする数社をあたるが、ディーラーオプションとして既製品をそのまま提供するなら何の問題もないものの、それをベースに専用品を起こすとなると途端に反応が変わる。特に短納期となればなおさらで、電話口で断られるケースが大半だった。
「これはなかなか厄介な話だな。」覚悟はしていた松本ではあったが、事の困難さを実感せずにはいられない。さてどうしたものか?思案を巡らせていると、A社の課長から電話が入った。A社にも当然今回の話は打診していたが、自社ブランドを掲げた最終製品を市場に出していない彼らから供給を受けられるとは思っていなかった。A社にお願いしたのは、今回の話に食付いてくれそうなナビメーカーの担当を紹介してもらえないか?という点であった。

A社課長:どうですか?例の件の首尾は。

松本:お察しかとは思いますが、苦戦中です(苦笑)。

A社課長:松本さんも次から次へと大変ですね(苦笑)。もしよろしければ、K社のこれから申し上げる担当に連絡して頂けませんか?


K社はナビでは中堅のメーカーである。ナビのみならず、カーオーディオも扱う有数のブランドだ。

A社課長:機密保持の義務がありますから、わたくしから詳細をお話しすることは出来ないのですが、松本さんから伺ったお話は概ね伝えてあります。

松本:ありがとうございます。本当に先日の件といい今回の件といい、もう静岡に足を向けて眠れませんね。



早速紹介されたK社の担当に連絡を取り、デミオの開発担当の一名と購買部門の職員一名を伴ってK社を訪問するアポを取った。


K社を訪れて今回の件の詳細を説明し、デミオの開発担当から搭載可能となるナビの要求仕様をざっと説明する。K社からは秋口に発売を予定しているメモリーナビの主要部品を活用し、要求仕様に沿って主要基盤を搭載する専用シャシーと、モニターや地図用のメモリースロットを収める専用筐体を用意すれば、比較的短時間で専用ナビを用意可能と思われると提案された。
ベースが開発中の2DINナビであることから、ステアリングスイッチとの連携と言った基本機能はそのまま流用可能である。
また、正式なものでなくあくまで概算と断わった上で、提供価格も提示された。参考となるベースの2DINナビの予定提供価格よりは若干割高になるが、専用筐体や専用シャシー、部品同士を繋ぐ専用のI/Fケーブルなどを考えれば、十分に妥当な価格と思われた。

K社担当:如何でしょうか?

松本:はい。我々の要求仕様をほとんど満たしていますし、価格的にも十分に妥当だと思います。提供可能時期の見通しはいつ頃になりそうですか?

K社担当:弊社製品の発売スケジュールの関係もありますが、今月(4月)末までにご契約頂けたとして、最初の納品は8月末くらいかと思います。


8月か・・・と松本は思った。恐らく依頼内容を考えれば最短なのだろうというのは理解するものの、デミオが6月に発売されたら間に合わない。K社担当が続けた。

K社担当:それから今回の場合、御社向けの専用品という事になりますので、ご契約にあたっては納品数量については合意頂くことになります。市販品を提供する場合にはこういった縛りはないのですが、専用品の場合には御社以外には販売できませんので。

松本:それは、そうでしょうね。大体どのくらいになりそうですか。

K社担当:これも概算ですが、大体XXXXXセットくらいになろうかと。


XXXXXセット?」同席したデミオの技術者が思わず声を上げた。松本が一瞥すると技術者はバツが悪そうに黙る。

松本:持ち帰って検討し、出来るだけ速やかに返答致します。今日はありがとうございました。

K社を退出して新幹線の車上、技術者が思わずつぶやいた。

技術者:最低XXXXXセットかぁ。参りましたねぇ、松本さん。

松本:専用品だからな。或る程度の数が売れなければ彼らだって困る。君も製造業に身を置く以上、常識だぞ。

技術者:す、すみません(汗。

購買担当:基本的には悪く無い話だと思いますよ。多少は割高ですが、十分リーズナブルな範囲です。問題はそれだけの数を仕入れて売れるかどうか?ですが、、、。どうします?

松本:作るにせよ買うにせよ、商品を準備するのが我々の責務だが、売るのは本分じゃない。売れるかどうかは、売るのが本分の販売部門に聞こうじゃないか。



広島に戻ると、松本は早速、開発担当の役員に事情を説明すると、販売担当役員との打ち合わせの場をセットして貰った。ディーラーオプションの国産ナビ調達の目途はついたが、問題が2点。最低XXXXXセットを売れるか?という点と、調達が8月末になる点である。

販売担当の役員Aは部下をひとり連れて会議室に現れた。松本からK社の提案と条件を説明する。

役員A:お話は良くわかりました。デミオの社外品ナビの件、実は役員会の前からCEOには相談していたんです。販売の現場もお客様からの突き上げは厳しくてね。デミオはアクセラ以上の量販車で運転に自信のない若い方や高齢のオーナーも多い。アクセラの件もあってなんとか国産ナビが搭載できないかとね。デミオでもマツダコネクト一本となると、販売の現場の士気にも影響しかねないという危機感もあってね。

役員B:その点は我々開発の責任を痛感していますよ。

役員A:いやいや、松本さんはじめご苦労は理解しているつもりです。CEOに相談したときに、この前の役員会で国産ナビ開発に関する見通しがハッキリするまで様子を見ようという事になって、事前の相談も出来なかったんですが、まさかあの場で検討指示になるとは私も思っていなくてね。本当に申し訳なかった。

役員B:そうは言ってもデミオの発売予定までもう間がありませんからね。生産準備は若干遅れているようですが、、、

役員A:で、本題のオプションナビですが最低限の仕入れ数量がXXXXXセットですか。どうかね?山崎君。


山崎はレンタカーやカーシェアリングの会社など、法人営業の担当をしていた。

山崎:ご存じだと思いますが、デミオはレンタカーやカーシェアの需要が相当数あります。車両毎に更新時期が異なりますから、クルマが新型に切り替わったからと言ってワッと需要が膨らむことはないんですが、コンスタントに一定の台数は出ています。
実はデミオの新型がそろそろ、という話で各社からはいくつか問い合わせを受けてましてね。アクセラと同じナビが載るのか?とか。


松本は十分に予想できたこととはいえ、密かに落胆せずにはいられない。マツダコネクトの評判がこんなところにも影を落としていたとは。山崎が続ける。

山崎:ネットなどの評判を聞きつけて不安を感じたんでしょうね。「まだ未定です」と答えていますが、我々もナビを理由に他社にお客を奪われたら困りますからね。内心ドキドキしていました。ただ、、、

松本:ただ、、?

山崎:意外にそういった事情をご存じないお客様も多くてね。新型車にナビが標準搭載と聞いて喜んでくれるお客様も居ます。
ですから我々としても、マツダコネクトとオプションの国産ナビと、両方揃えて頂けるのなら大変ありがたい。

役員A:お願いをしておいて申し訳ない話ですが、一般顧客向けにそのナビがどれだけ出そうか、我々にも需要予測は立っていないんです。ただ、法人向けまで含めれば、仕入れたナビは十分に捌けると思っています。元は我々サイドからリクエストしたナビですからね。我々の責任でなんとかしましょう。

役員B:となると、後は時期的な問題だけですね。最初の納品が8月末ですから実質的に販売できるのは9月以降になります。

役員A:デミオの発売時期を6月から9月にズラすか。これは流石に私の一存で決められる話じゃありません。CEOに相談しなければいけませんし、新型車の発売時期の変更は今期の業績にも影響します。役員会で決めることになりますね。

役員B:開発はほぼ終わっていますが最後の詰めが残ってますし、生産準備は若干遅れていると聞いています。このナビの話もありますから、思い切って9月にズラすという事になるのかな?

役員A:役員会の決定を待ちましょう。



結局、デミオの発売は9月に決定された。

そして5月に準備が整い次第、マツダコネクトのサービスキャンペーンを実施するのだが、デミオの9月発売までに、更にもう一段の品質向上に努めることになった。
Posted at 2015/02/04 18:20:37

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