この価格でどんなレベルの出来なのか、確認してみたいと思い、試乗してみました。
試乗車 VW move up! 4ドア 価格168万円(税込)
試乗車オプション 16インチアルミホイール&タイヤ
ナビゲーション
●外観デザイン
写真はhigh up!のもの。フロントのフローティング処理したバンパーは個人的には好きではありません。でも、写真では少し下からのアングルでわかりづらいですが、立った姿勢からの眺めだと、けっこうカタマリ感があってタイヤが4隅でふんばっている感じに見えて、とても気に入りました。
全長3545mm×全幅1650mm×全高1495mm、ホイールベース2420mm
車重920kg
この価格でもワイパーはフラットワイパーでした。
リアドアウィンドウは国産車にはないポップアップ開閉式で、どこに価値を置くかという視点の違いを感じさせます。
こんな四角い形ですが、空気抵抗係数cd=0.32とゴルフと遜色ないレベルです。
●エンジン
1リッター直列3気筒DOHC、55kW(75ps)/6200rpm、95Nm(9.7kgm)/3000-4300rpm
ビックリしたのがエンジンです。
マニュアルモードで引っ張れば1リッターとは思えない加速をします。レッドゾーンの6000rpmちょっとまでキレイに回ります。
そして、音は低回転では3気筒とは思えない静かさで、回すと3気筒なりの音はしますが、その音質に雑な感じがなくて、不快になることがありませんでした。
さらに振動がよく抑えられているのに感動しました。バランサーシャフトはついていませんが、高回転までまで回してもフロアが振動することはないし、ステアリングやシフトノブあたり振動が伝わってくることはありませんでした。
それにしても軽量化を考えてかアイドリングストップもエネルギー回生システムもついていないのに、燃費がJC08モードで23.1km/ℓというのは脅威k的です。ディーラーマンは実燃費でも18km/ℓを割ることはないと言っていました。
●ミッション
5速ASGと呼ばれるもので、皆さんご存知だとは思いますが、こちらはDSGのツインクラッチとは違いシングルクラッチです。
Dレンジだと早めにシフトアップして、DSGと同じように低い回転を保とうとしますが、1リッターということもあり、もっさりした加速感です。一回スピードを落としてから再加速しようとすると、ダウンシフトに時間がかかり、かったるさを感じます。
マニュアルモードにすると、低い回転で走っている分にはあまり変速ショックは気になりませんが、高回転まで引っ張るとかなりショックは大きくなります。それでも高回転まで引っ張って走ったほうが、活発に走れて楽しいです。
ディーラーの方もおっしゃっていましたが、このクルマはマニュアルモードを使って、マニュアル車だと思って乗るのがいいとのことで、自分も体感上そのように思いました。
AT限定免許の方には運転しづらいかもしれません。
●ハンドリング
VW初のコラムアシストタイプの電動パワーステアリングです。さすがにGTI並とはいきませんが、センターからの反応がしっかりあって、切り込んでいったときもイメージどおり素直に曲がっていきます。
直進安定性もあるのに、キビキビした感じもあって、とても楽しかったです。
最小回転半径は4.6m。
●足回り
フロントがストラット、リアがトレーリングアームです。
タイヤはコンチネンタルContiPremiumContact2で、試乗車のサイズは前後とも185/50R16 81T、
展示車のhigh up!は185/55R15 82Tでした。
乗り心地が非常にいいです。単にやわらかいのではなく、車体をフラットに保ちつつ、突き上げるような衝撃は一切伝えてこないのです。歩道から道路に出るときの段差のいなし方など、とても1リッターカーとは思えないショックの吸収のしかたです。
●ブレーキ
フロントがベンチレーテッドディスクで、リアはドラムです。
特に違和感もなく、効きに問題はありませんでした。
●静粛性
エンジンのところでも書きましたが、音や振動がよく抑えられていて、かなり質感が高いと思いました。
●シート
フロントシートはヘッドレスト一体式で見た目には安っぽいですが、座ってみたらやっぱりVWでした。
座面には厚みがあって、背もたれも適度にホールドしてくれるし、背中の支持のしかたも絶妙なので、
試乗していて疲れる感じがまったくありませんでした。
VWでは初でしょうか!?、リクライニングがレバー式となっていました。
リアシートは静止状態で座っただけですが、ポロのように座面に体が不自然な姿勢をせまられるような角度はつけられていなくて、こちらのほうが自然に座れていいと思いました。
●内装(インパネ)
鉄板むき出しのところはけっこうありますが、ダッシュボードのパネルをボディ同色にするなど、ポップな感じを演出して安っぽさを払拭しています。
エアコンはマニュアルエアコンのみ。
写真はhigh up!のもので、move up!ではステアリングは革巻ではなく、スイッチ類にメッキの加飾はありません。それでも自分はあまり気になりませんでした。
メーターは写真がなくてすみません。
インパネ写真でも見られますが、非常にシンプルなデザインで見やすいです。走りのクルマではないですが、タコメーターはさすがにもうちょい大きいほうがいいと思いました。
●ラゲッジスペース
251リッターと、ポロの280リッターと比べるとちょっと少ないくらいですが、さすがに見た目としては小さく感じます。
フロアボードは2段階に高さを変えられます。
シートバックを起こした状態では、ボードを下の位置にして深く使えます。
シートバックを倒した状態のときは、ボードを上の位置にすると、平らな荷室ができます。
●気になる装備
シティエマージェンシーブレーキ
速度30km/h未満で、障害物を検知すると自動ブレーキをかけるものです。
この価格でグレード問わず全車標準というのもすごいです。
残念ながら、自動ブレーキの効きを確認することはできませんでした。
スペック的には取り立ててみるべきものはありませんが、1つ1つの要素を磨きこめば、クルマとしてここまでいいものができるんだというお手本のようなクルマです。なんの変哲もない1リッターのエンジンで燃費も妥協せず、ここまで走りが楽しいなんて、ほんとに衝撃的でした。「GTI買わなくたって、これで十分楽しめるじゃん!」と決してお世辞ではなく言えるクルマでした。
この価格でこの走りの質感。個人的にはこういうクルマがたくさん売れて、国産コンパクトカーに脅威を与えてくれるとうれしいです。私ほどのクルマ好きでない人たちが、国産車の枝葉末節な便利装備に踊らされることなく、どれだけこのクルマの本質的なよさをわかってくれるのか。外車ディーラーは敷居が高いなどと思わずに、ぜひ国産コンパクトカーと乗り比べてみることをオススメします。
自分は乗るまではそれほど興味を抱いていませんでしたが、ベースモデルがこれだけいいと、「GT up!」や「CROSS up!」などの派生車種が出てくれないかと、自分にとってほんとうに楽しみで気になる存在になってきました。