
昨今、車の個性が希薄化しているのではないかとの意見が多く聞かれます。理由としては、低コスト化の追求、CADなどのIT技術が進歩したためみな似たり寄ったりのデザインしかできなくなった、才能の枯渇など、様々議論されたりしています。この問題については個人的にも興味があり、少し別の角度から考えてみたので、今回から2回に分けて書いてみたいと思います。ご興味持っていただける方はお付き合いいただけますと幸いです。
* * *
まずクルマではなく、生き物の個性化ともいえる進化の話から始めます。生物進化は個体レベルでの遺伝子の突然変異と、環境への適応のレベルによって決まる自然淘汰の連続したステップにより進行しますが、生物学のレベルで現象として捉えられる進化は、いわゆる種分化、すなわち、ひとつの種が上記のプロセスにより二つに分かれて、最後には繁殖(生殖)できなくなることにより別の種になることであると考えることができます。
種の分化が起こるにあたっては、遺伝子的に均一性を保持した母集団から少数の集団が分離され、その中で遺伝的な変異が固定されることが重要になります。そうでなければ個体レベルで生じる遺伝的な変異(による有利な性質)が、変異を持たないほかの個体との交雑により希釈化されてしまうからです。こういった部分集団の隔離が生じる原因として一番知られているのは、いわゆる地理的隔離で、例えば島や山、河などで隔絶されて交流ができなることで隔離された小集団の中で個体レベルで生じた有利な性質がその集団の共通の性質として定着しやすくなるのです。それ以外にも食性が異なったり、あるいは生殖行動の差異といったものも集団隔離を生み出す要因になると言われています。
つい最近では、1月に英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに京都大学の研究チームが、”カブトムシやテントウムシなどの甲虫類では、飛べない種の方が、飛べる種よりも種の分化の速度が速い”ことを報告したとニュースになっていましたが、これも上記の現象の検証事例の一つと考えることができます。
さて、上の話を踏まえたうえでクルマの話題に移っていく訳ですが、現在の車が無個性になっているとの認識が仮に事実であるとすると、逆に昔の車は個性的であったということもまた事実ということになります。では何故、昔は個性的な車が数多く存在し、今はそんな特長のある車たちがいなくなってしまったのでしょうか?
それに対する(ある種の)答えはクルマの歴史を振り返ってみれば見えてくるのではないかと考えるのです。
(つづく)
ブログ一覧 |
クルマの話題 | クルマ
Posted at
2012/03/10 12:36:44