
先日の
「韓国の歴史」に引き続き歴史関連図書の紹介です。今回は陳舜臣著の「中国の歴史」になります。韓国~は1巻ものでしたが、これは全7巻で各巻600頁前後の大著になります(写真は単行本の表紙です。自分の持っているコンパクト版のそれを探したのですが見つけられませんでした、残念)。
歴史関連の本の中でもこういった単独作者によって書かれた作品のメリットとして挙げられるのは、対象に対する姿勢や評価基準が一様になり項目ごとでのブレや偏りが少ないということだと思います。一方、作者自身の公正性や思想・思考は勿論大きな影響を与えますが、陳氏の書かれた本シリーズはその点でも評価が高い作品であると思います。私は20年くらい前に古本で一冊購入し、面白かったので新刊も交えて全冊揃え、その後も繰り返し読む愛読書の一冊(いや7冊)になりました。
本書を中心に中国の歴史を概観しての個人的な感想ですが、まず中国という国、いや正確には「中華文明」のスケールの大きさでしょうか?少し定量的な表現をすると、時間的な長さとその規模(人口)の掛け算したものになるのかもしれませんが、それが圧倒的に大きいということ。例えば西暦1世紀のころであれば、全世界の人口は2から3億人であるところで、中国は0.5億の人口を有していた訳でお隣のインドとともに歴史の殆どの期間に渡って、人類のGDPの30-40%を占める存在であったことを理解いただければ、その圧倒的な存在感をイメージできるのではないでしょうか?
話はやや横道に逸れますが、人類はアフリカ大陸の中南部の地域で誕生し、そこから全世界に複数回に渡り拡散していったと考えられています。人類のこの壮大なるエクソダスにおいて、中国は大森林に覆われたヨーロッパ、中央アジアの大草原と砂漠、チベットの高地を超えたところにある、まさに「約束の地」であったのではないかと勝手に考えています。爾来、中国大陸は人類の一大活動拠点になってきたのです。
もうひとつの感想は、中華文明の歴史とは、まさに何度も何度も繰り返される王朝の興亡そのものであるということです。20世紀以降に比して、人間の活動のスケールはそれ以前はずっと規模が小さく興味の対象も限られていたのではないかと思いますが、過去の人間にとっては歴史としてまず書き残す程に重要なものは、誰が支配者であったか、そしてどのような経緯で次の支配者に交代したか、であったのではないでしょうか?本書を通読すると、数多くの王朝が、まるで変奏曲のように、次々に経ち現れては最盛期を迎え、そして大抵は権力闘争の果てに弱体化して次のものに取って代わられて消滅していくのです。それこそ何回おんなじことを繰り返せばいいのかと読者をウンザリさせる程に。
まあ、時に浮き沈みがあったものの隔絶したスーパーパワー(超大国)であった中華文明も、19世紀前後に訪れた退潮期は以前のそれとは若干様相が異なっていました。ほぼ同時期に西欧文明が急速にその勢力を拡大していたからです。このため、以降の200年の間に世界史的にみて最大規模の地殻変動が人類社会に起こったのです。そして日本も変動にいやおうなしに巻き込まれることになり、近代化と一時的な破滅そして再生という波乱に満ちた道のりを歩くことになったのは皆さんご承知のとおりかと思います。
そしてこれも最近になって改めて認識されつつある事実かと思いますが、中国の19~20世紀の地盤沈下はやはり一時的なものであり、この国は21世紀に入ってから急速にかつての勢いを取り戻しつつあるようです。前回の中国の動き(退潮)は世界レベルでの激震をもたらしましたが、今回はどうなるのでしょうか?その影響の大きさを見るのは我々の子供か孫の世代になるのでしょうが心配ではあります。
ブログ一覧 |
本 | その他
Posted at
2012/03/18 00:05:10