Saabブランドの消滅は決定的なのでしょうか?以前にブログで新型9-5を話題にした際(
こちら)も心配していたのですが、事態は悪い方向へ向かっているようです。破産申請の後も具体的な救済措置は未だに明らかにはなっていませんし、国内でも販売開始直後であった9-5が投げ売り状態になっているとのニュースも流れています。

(写真は新型ではなく自分のお気に入りの旧9-5)
結構知名度が高い自動車ブランドであるSaabが消滅するとなると、自分の記憶としては2005年のローバー以来のことではないかと思います。ローバー消滅の時も感じましたが、クルマの歴史的な発展の経緯を系統樹的なイメージで捉えた場合、結構な太さといってもよい(Saabという)幹が折れるのは、多様性の維持の観点からは残念な気持ちを抱かざるを得ません。彼らの作ってきたクルマの出来栄えの程や、あるいはSaabという車の市場での受容度といった問題に係わらず、です。
生物の世界においても、生物種の誕生と消滅(絶滅)は日常茶飯事です。特に微小な生物世界においては人間の把握していないところで、数多くの生物が種分化と絶滅を繰り返しているのだと思います。地球史的な視点でも、過去においてその時代に存在した生物種の95%以上が死滅するような破滅的な出来事(大量絶滅と呼ばれます)が繰り返し起こったことが知られています。
こういった生物の絶滅は、勿論、ある意味で悲劇的であることを否定はできません。しかし一方で、ある存在の退場が新しい存在の参入と発展に繋がるという別の側面、むしろ積極的な価値を持ちうる出来事であるのも事実です。白亜紀末の隕石落下により前時代の覇者である恐竜が絶滅し、その後に哺乳類の拡散と発展の時代が訪れたことは、生物相の変遷の著名な例として取り上げることができます。
とはいえ大型の生物種に限られるのかもしれませんが、生物の絶滅は避けるべきでありマクロには生物多様性はできる限り保持すべきであるというのが、現在の人類の視点からみた環境保護の考え方になります。ではSaabブランドの消滅という事実を生物とのアナロジーの視点で捉えた場合、我々はそのことを悲しむべきなのでしょうか?
その答えはやはり「Yes」だと思います。Saab車はいずれ実体から人々の記憶へと変化し、そして独特の特徴の数々は完全に消え去ってしまうでしょう。それは残念なことです。しかし、ある自動車メーカーの消滅はもしかしたら、新たな存在の登場の契機となるのかもしれません。先に触れたローバーのクルマの一部は中国の自動車メーカーに引き継がれ、新たなクルマとして販売されている(いた)とのことです。かつては個性的なクルマづくりで知られたSaabの退場を悲しみつつ、欧州の自立した自動車ブランドとしての復活が叶わないのであれば、わずかな可能性ではあるものの、急速な勢いで成長する中国車やインド車の系統樹の幹の一部として新たな発展を遂げてくれることを密かに願ってやみません。

(写真はブログの内容とは直接関係しません)
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Posted at
2012/05/16 22:32:31