2012年08月12日
262:シトロエンDS5(後編)
DS5の印象記の後編になります。試乗時間は20分程、クルマ専用道路+若干の山道、距離にして10km程度でしょうか、ごく普通に運転しました。いわゆる素人による「短期・絶対評価」になりますので、乗ってみての感想に過ぎない訳ですが、現愛車ボルボS60との比較を評価軸として取り入れて書いてみたいと思います。S60はシトロエンで言うところのC5と同クラスで、DS5のベースとなったC4より少し上のセグメントにはなりますが、DS5がC4よりも大型化してC5と同じクラスにまで位置づけが変わっているので違和感はないのではないかと思います。
まず最初にスペックから、Carviewのサイトより引用させていただきました。
全長×全幅×全高=4535×1870×1510mm
ホイールベース=2725mm
車重=1550kg
駆動方式=FF
エンジン=1.6リッター直4DOHC直噴ターボ
最高出力=115kW(156ps)/6000rpm
最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1400-3500rpm
トランスミッション=6速AT
ちなみにS60は以下のとおり。スペック的には酷似していると言って良いでしょう。
全長×全幅×全高=4630mm×1845mm×1480mm
ホイールベース=2775mm
車重=1540kg
駆動方式=FF
エンジン=1.6リッター直4DOHC・直噴ターボ
最高出力=132kW(180ps)/5700rpm
最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1600-5000rpm
トランスミッション=6速デュアルクラッチ
では始めましょう。
乗り込みシートに座ってみて:
見た目は変わっているが、シートの座り心地は良く、包み込まれるような感じ。ドイツ車より柔らかいが、かつてのフランス車のようではない。スタートは運転席左のボタンで行う。サイドブレーキはセンターコンソールのレバーで、ただし発進時は自動で解除される。インパネのメーター類はかなり派手、最近の流行に従い常時点灯照度自動調節式。表示様式などはまあ普通。センターコンソール上部にインフォメーションディスプレイが装備。ナビは装備されておらず、ディーラーオプションでこのインフォメーションディスプレイに置き換える(+20万円と聞きました)。各種スイッチ類のデザインは奇抜。当初は目をひくがそのうちに慣れる(飽きる)かも。長期間使ってみての勝手の良さは未知数。天井部中央には、証明+サンルーフの大型コントロールパネルがある。お店の人曰く、「航空機のコクピットの模してデザインした」。サンルーフは前後、左右に分割されており、従来の開け閉めだけの形式に比べて、選択肢が多く便利(かもしれない。実際は殆ど使わないような気も・・・)。ハンドル、サイドのドアパネル等にアルミパーツが所々装着されており、高級感を演出しているのだが、個人的には煩わしいし、おもちゃっぽく目的は達していないと感じられた。
(S60との比較)シートの出来は互角、S60がやや固め、座り心地は同等。ただしV70と比べると微妙に負け。V70のシートはホント最高です。インパネは機能的にもデザイン的にもS60に好感。DS5は少しデザインが浮いているように感じられ機能性の裏付けが希薄。ナビがない等も減点要素。個性的なのが好きな人にはDS5が良いと思います。アルミパーツはS60の高級グレードでも採用されていますが、これも自分は好きではありません。
エンジンを掛けてみて:
まずメーター前方にヘッドアップディスプレイ(ガラスのプレート)がせり上がってくることにびっくり(走行中には速度が表示される。表示設定は変更できる)。意外と見やすく邪魔にもならないがギミックの域は超えていない。エンジンは静か、振動等もアイドリングでは感じない。ドライビングポジションは、エクステリアデザインから想定されるように、セダンよりはやや高く少し見下ろすような感覚。なので前方、横方向の視界は良好。Aピラーも三角窓風の処理になっており視界確保に配慮。後方視界は良くはない。センターコンソールの後端に後席用のエアコンの吹き出し口あり。プジョー508にも装備されていたが、この辺り仏車の高級化志向の現れか?
(S60との比較)DS5が音振では僅かに静かで勝ち。ドライビングポジションは好みの問題ですが運転という行為の動的な面を重視するのであればS60が優位に立ちます。
走り出してみて:
エンジンと6速ATの組み合わせは非常にスムース。低速からなめらかに加速、言い換えればトルク等の盛り上がりや落ち込みなどメリハリは希薄。エンジン音も回転数相応で存在感を主張しないもの。ATはアイシン製とのことだが、以前のフランス車というかAL4程にはエンジンブレーキをきかせたりロックアップを維持しないような設定(お店の人曰く、それでもまだ他国車に比べると特徴を維持していると)。ブレーキもガチガチの踏力コントロールから、若干ストロークを効かせるような設定に。総じて普通のクルマに近づいたといえる。
ハンドリング(油圧+電動制御とのこと)は、軽めでやや粘りつくような感触、センター位置へ戻す力を常に感じる。なので、コーナーリングもスムースではあるが、ややスイッチ的な印象。乗り心地は総じて良し。サスペンションはバネであるが、柔らかく、かつ良く動くもの。特にダンパーの設定に優れているのか、道路の小さい不整や凹凸を上手くいなす。中速域でのフラットライド感にも優れる。このあたりは、ハイドラクティブにも通ずるシトロエンのサスセッティングの特長が良く出ていると思われる(依然ハイドロとは異なるが)。
(S60との比較)低速のマナーやスムースさでは、ATとDCTとの違いもあってDS5に軍配。ただし、パワー感やメリハリはS60の方が上と感じました。ステアリングはS60がよりスムースかつスポーティで明らかに優れている(実際、S60/V60のハンドリングはドイツ車にも負けてないと思います)。それに比べるとDS5は直進主体でゆったりと運転するロングツアラーの資質がより強く出ていると思います。乗り心地はDS5の勝ち。柔らかいのにフワフワしていないサスは、やっぱり良くできている。S60は、ボルボの特徴かもしれませんが、減衰力の強いダンパーと柔らかいバネの組み合わせで、一般道では路面の状態をDS5より強く伝えるような気がします。高速道路ではゆったり感が前面に出てきて両者近い乗り心地になりますが。
試乗を終えて、総合的な印象は:
見た目の奇抜さに比べると、とても乗りやすいクルマであるとの印象。いわゆるシトロエンらしさは、乗り味に関してはますます希薄化して、標準的なものへの変化している。振り回して乗るよりも、長距離をゆったりと乗るのに適している。シートのできの良さ、サンルーフの開放感、素晴らしい乗り心地は上記の用途をより心地よくさせてくれるに違いない。
(S60との比較)運転しての楽しさは、両者で互角でしょうか。S60はクルマとしての動的性能に優れ、DS5は快適性に優れると、明らかに方向性が異なります。なので、どちらを是とするかは乗る人によるのだと思います。私は、DS5との比較ではS60に軍配を上げますが、実は現行C5と比較するならば、「もしかして、そっちが一番かもしれん」、と心のどこかでは感じています(笑)。
* * *
以上、素人印象記、如何でしたでしょうか?DS5は、フランス車、いやシトロエン車として、「時代とともに進化し、ハードウェアとしての洗練度を増してきているな」、とまずは感じました。一方、かつてのシトロエンにあった唯一無二的なユニークさは希薄化しており、いまやデザインにのみそれを見出すことができますが、これは致し方がないことであり、私は否定的には捉えていません。むしろ標準化の名のもとに没個性化が進む中で他のメーカーに比べて、シトロエンは個性的であることに、非常に注意を払い、努力を傾けていると思うのです。シトロエンの姿勢に改めて敬意を表したいとも思います。
私自身がDS5に触れてみてどう思ったかというと、やはり少し自分の嗜好や考えるクルマのあるべき姿とは違うな、ということであり。そういう意味では乗り換え候補にはならないというのが結論です。シトロエンで選ぶのであれば、DS5よりもしろC5になるでしょうね。あとは、信頼性を含めての長期間使ってみてどうか、というところですが、その点についてはユーザーの皆さんのみんカラなどでの報告に期待したいと思います。
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Posted at
2012/08/12 09:56:14
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