40代~50代の方であれば、おそらく同意いただけると思うのですが、子供の頃には、「輸入車」、いや当時は「外車」と呼んでましたが、は今とは全く違う存在でした。日本が今よりずっと貧しかった時代であり、外車は庶民には所有することが想像の埒外にある高級品かつ希少品であり、街中で見かけることは滅多にありませんでした。外車は単に「外国のクルマ」という意味だけでなく、存在するだけで強く注意を惹きつける、日常における非日常性を象徴するモノでもあったのです。特に小学生あたりの子供にとってはです。
現代でいうところのフェラーリのように普段目にしない輸入車ではありましたが、このクルマ、フォルクスワーゲンのビートルは例外的に多くの個体が市井に存在しており、しばしば、その空冷水平対向エンジン特有の排気音を響かせながら道路を活発に走り回っているのを通学途上に目撃することができました。
当時としてもクラシカルな外見ではありましたが、よくよく観察してみると各部の作り込みやパーツの品質なんかは、国産車よりも随分と優れていることが分かりましたし、パッケージング(そんな言葉や概念は、子供の知識のなかには勿論なかったですが、今にして思うと)的にもまだまだ一線級といって良い実用車であったと思います。wikipediaより引用した写真は青色ですが、個人的な記憶としては、クリーム色に近い白いボディカラーのビートルが懐かしく思い出されます。
おそらくその頃国産車としてはこのあたりのクルマ(2代目カローラ:写真)が巷を走っていたはずですが、勿論、乗ったことも詳しく触れたこともないので想像にしか過ぎませんが、カローラなどと比べてもビートルはクルマとしての性能はなかなかのものであったのではないでしょうか(もし、実際のところをご存知の方がいらっしゃたら是非ご教授ください)。
先日、ビートルがモデルチェンジしたとのニュースに触れて、初代のビートルの記憶が蘇ってきた次第です。メディアでの評価を見るに、ゴルフのシャーシを利用したこの新型ビートルの性能は評判が良いようですが、如何に優れた機械であっても、所詮は企画物というか趣味のクルマの域を出るものではありません。実用車としての本筋はあくまでベースとなったゴルフであり、加えてポロやパサートいったフォルクスワーゲンのラインナップを形成する製品群にあるのですから。
そこのところが、新旧のビートルで決定的に違う点であり、旧ビートルが記録にも記憶にも残る傑作車であり、新ビートルがそうでない理由だと思うのです。そして、過去の傑作車のイメージを下敷きにしているのは同じであっても、BMWのミニやフィアットのチンクエチェントと新ビートルとの間で異なる部分でもあると言えるでしょう。
まあ、屁理屈をいうような問題ではなく好きな人が買って乗ればいいだけの話なんでしょうがね。
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ドイツ車 | クルマ
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2012/08/14 00:08:57