
馴染みの店で待ち合わせをした知人が見知らぬ男と入ってきた。連れてきたのは、いわゆる「高利貸し」をやっているヤツだという。
その利息ってのはホントにトイチどころか、その日の気分で利幅が変わるのだそうで、とんでもなく外道な野郎かと思ったら、高利貸しは高利貸しで大変なのだそうだ。
ナゼかというと、普通に銀行や消費者金融で借りれる人はそういうトコで借りるから、ほとんどの顧客はかなりの曲者。「借りたら返す」という義務を理解できないとか、返済の計画性がない人だから、取り立てが大変だという。
そういう人ってのは、それなりの貧しい生活をしているかというとそうでもなく、多重債務者とは思えないような高級外車に乗っていたり、ブランドモノの服で現れることも少なくないという。昔は年収数千万あった人とか、バブルの頃には土地や株で大儲けした人、何不自由ない額の仕送りをもらっている学生など、年齢・職業はいろいろだけど、人間、一度贅沢をするとレベルを落とせないことを実感するそうだ。
最後の最後にはそういうモノを差し押さえればいいのだが、すでに他の業者に目を付けられているし、利息分にもならない。自腹で遠方の親族のトコまで出向いて取り立てに行っても、アチラも慣れたモノでキッパリ断られ、ゴネれば手際よく警察や弁護士まで呼ばれてしまう。裁判にもできないし、モタモタしていると、みかじめ料の催促もやってくるので、カネも借りてないのにヒドイ目に会う時もあるのだという。
ちょっとでも回収できるのはいい方で、最悪なのはトコトン借りて、返せなければ死ねばいいとヤケになってる高齢者だそうだ。若くてしかも女性なら、風呂に沈めることもできるが、老人ではそれは無理。生保もかけられないし、脅しで痛めつけたら死んでしまいそうなほど衰弱しているので、どうしようもないという。「さぁ殺せ、覚悟はできとるワ!」と開き直られるとコッチが死にたくなるらしい。
「やってらんないっス。」
と、彼は言う。では辞めればいいじゃんと聞くのだが、金持ちの息子みたいなカモを見つければ大金が転がり込むし、不良債権をきっちり回収した上でうまく辞めないと、そのツケを回され、いろんなトコから嫌がらせもされるのだとか。
それでもマトモな商売ではないよね、と誰かが言うと、マトモな金貸しとはナンゾや?と。きちんと同意のもとに現金を貸しているわけで、オレオレみたいに善良で呑気な人をダマしてるワケではない。銀行がマトモだと言うのなら、さんざん貸しておいて、いきなり剥がすし、機械の操作で小銭を巻き上げ、最近は資産運用などという名前のギャンブルまでやらせるじゃないか、と言う。「今は消費者金融も犬やオネイちゃんを使ってイメージアップしてるが、ありゃサラ金だよ?サラ金。」と。
サラ金やカードもそうだけど、今と昔じゃずいぶん違う。昔は人生捨ててるオッサンがやってたようなイメージだった「バクチ」がオシャレになり、勤め人や主婦が株をやる時代だ。私の後輩も「いくらでもリボルビングで借りられるんですヨ」と、完全にマヒして1000万円の借金を親に肩代わりさせた。さらには、パチンコで勝っていると豪語していたので、他の連中に聞いたところ、「あの人はポジティブシンキングなんで、負けた時の記憶がないんでしょう。一緒に行くといつも負けてますよ。」
「確かに、昔は彼女が馬とかパチンコやってたりしたらドン引きでしたけど、今じゃ普通ですもんねェ。困った世の中だ。」と言ったのは、その高利貸し。
ホントに馬やパチンコが好きなら、見るだけとかゲーム機でいいじゃん、と言う。やっぱり汗水垂らさずにカネが欲しい、という下心があるからやるんでしょ?と。それならば、「カネのためにやるのだ」、と開き直る方が儲かる可能性は高いけど、こういう抜け目のない客よりも、ムダ金を落としてくれる素人がいっぱい来る方が都合がいい。だから、ギャンブルはオシャレで健全、株はインテリなイメージ戦略をしてるんだよ、と言ったのは、元パチンコ店経営者。
そんな話をしていると、銀行の人間がやってきた。
「これからは資産運用の時代ですから、ぜひともお願いしたく…。」
ほらほら、言ってるそばから来たよ、俺よりも恐ろしい連中が。と笑う高利貸し。
「おう、兄さん、今いくら持ってる?俺、パチンコ上手いんだ。あとで倍にして返すから、資産運用してみないかい?」
Posted at 2006/04/07 18:21:22 | |
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悪徳商法見聞録 | 日記