
一昨日のこと。午後からクルマで外出した際、世間を騒がせているマンション業者の参考人質疑を思い出した。運転中は何も聴かない私だが、今日は珍しくNHKにラジオを合わせてみる。
内容は後日のニュースとワイドショー通りだが、「不規則発言」なるものも飛び出し、現場の荒れ具合が音声のみでも伝わってきた。
そんな帰り道、藤沢にある店へ。
「アレよ、アレ!」
店からすぐに見えた噂のグランドステージ藤沢は、今回発覚した中でも28%という最低の耐震強度しか持たない10階建。
建築という業界なだけに、これは氷山の一角かと思ったが、メカの知人である1級建築士の話では、確かに業界で過剰なコストダウンが存在するものの、この数値は「狂気沙汰」であり、販売・施工・設計が揃いも揃って、なぜこんなに危ないモノを建てたのか全く理解できないという。
首都圏に大地震が来ることを想定してか、ハナから売り切った後に計画倒産するつもりだったのか、または、建築屋のくせに危険性を感じなかったのか。
具体的に何が28%なのかと聞いたら、簡単に言えば横からの力で、例えば壁面から100トンで押されて耐えなければならないとすると、28トンでダメになるという。
震度5強で倒壊の恐れどころか、いつ何が起こるか想像もできない状態で、多分に最下層の駐車場がダルマ落とし式に潰れ、最悪はNYのツインタワーみたいに崩れる恐れもあるそうだ。
グランドステージ藤沢はわずか2ヶ月前に完成し、30戸中18世帯が契約締結、残りはローンの審議中だったらしい。すでに入居した方は、長年のローンと引き替えに念願のマイホームを購入、引っ越しの荷物も片づいたところで事件発覚・退去命令という気の毒な話だが、被害者は彼らだけにとどまらない。近隣には数メートルしか離れていない場所に、古い平屋建てを含めた多くの家屋が存在している。
また、この危険な建物を処分するにしても、通常の解体方法では何が起きるかもわからないようで、誰が解体し、誰が費用負担するのかという問題が残っている。ラジオを聞く限りでは、呼ばれた連中は、それどころか売り主への補償もできない、というか自社でやるつもりはなさそうだ。
ある番組では、買い主の「自己責任」を指摘するコメンテーターもいたが、誰が見ても危険とわかる国にノコノコ行った連中とは違う。朝から晩まで一生懸命働いて、家族のために長年のローンを抱える決心をしたお父さんに「ダマされたアンタの自己責任だよ」とどうして言えようか。何でもかんでも自己責任にするならば、法も国家もいらない。この事件は危険な建物を次々に完成してしまったという「歪んだ業界の構造」も焦点ではあるが、善良な人が企業実績やらAWARDやらで飾り立てられた「広告」にダマされたいう点も問題とすべきだ。
私は仕事柄、コウコクというものをほとんど信じない。売る側、買う側も「いいモノを安く」と言うが、そんなモノは滅多にないと思っている。「安かろう悪かろう」か、「高額でボッタクリ」のどちらかだ。
わざわざ電話や訪問と手間をかけ「今回だけ、あなただけ、今だけのチャンスです」などと煽って売ろうとするモノは間違いなく「搾取」の類だと思う。莫大な利益が出る商品ほど、カネと手間をかけてでもシツコク売りつけようとするのだ。それを掴まされたとしても、一ヶ月の禁酒で取り返せるようなモノなら笑い話で済むが、一生の半分ものローンを組む商品ではたまらない。
大のオトナが吸うタバコの箱に「ガンや脳梗塞になっちゃうかもヨ」や「お酒は20歳になってから」などと書かせるよりも、真面目な人の人生をハンコひとつで台無しにするようなリスクを取り除けないものか。一般消費者向けの高額商品ほど、広告の校閲規制は厳しくすべきだと私は思う。バブル崩壊後、クライアントとの立場が逆転し、甘くなってきているのが気がかりでならない。
3時間以上をかけた質疑中、「私の命をかけてでも」とか「今後、このような事が無いよう徹底究明をすべきだ」などのご立派な言葉が飛び交うが、買い主が一番聞きたい言葉はどこからも聞こえてこなかった。
Posted at 2005/12/02 05:38:49 | |
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低性能CPUで考える | 日記