WRX STIに搭載される電子制御。もともとWRXは「車体の素性の良さを生かして走る」というのが、コンセプトだったのですが、やはり4WDに電子制御は不可欠です。しかしこの電子制御というのはブラックボックスで車が何を考えてどう制御しているか謎です。しかもあまり情報がないのです。そこでそのアルゴリズムを少しずつまとめていきたいというのが本ブログの趣旨です。
<検証条件>
車体: GRBーA型(車の性状が変わるような大幅な変更はなし)
走行: ワインディング(片側1車線 or 交互通行1.5車線)※栃木の田舎
コンセプト: 走行時間の9割を占める一般道でいかに楽しく気持ち良く走ることができるか、と言う着眼点で記載しています。決して暴走行為を推奨するわけでなく、自分の思った速度、ライン、姿勢をいかに作り上げていくかについて考えています。一般道はサーキットのような道路幅がありませんので(無論1車線分)、姿勢作りやラインのコントロールについてはむしろシビアと言えます。そのシチュエーションで如何にWRXを転がすかについて哲学すれば、普段の街乗りも楽しい物になると思います。
間違っているかもしれないので都度、改定・加筆します。
(新規18年11月10日)(改定 19年10月27日)

センサーのフィードバック情報
<DCCD ドライバーズ コントロール センター デフ>
情報元: ヨーレイトセンサー、Gセンサー、アクセル開度、ブレーキスイッチ、サイドブレーキスイッチ
出力先: センターデフの電磁クラッチ結束力
作動の仕組み
4WDの命題はタイトコーナーブレーキング現象を始めとする、前後輪の回転差をいかに料理するかです。
そのために前輪と後輪の間にセンターデフが入っていて、このデフの締結力をいつどのように変化させるかが、4WDの運動性能のキモです。
しかし、ここの理解が一番むずかしい。
そもそもセンターデフは前後輪に生じる回転差を許容するシステムです。いわゆるLOCK状態だとコーナーで弧の外側に膨らんで回転数が高い前輪と弧の内側で回転数が低い後輪が同期してしまいタイヤが引きずられます。これが太古の4WDです。では回転差を許容するオープンデフが良いかというと、オープンは前後のタイヤに均等なグリップがかかるようにするため、前か後ろのトラクションが抜けるとそれにつられてもう片方へのトルクも弱くなってしまいます。これでは車を前に進められません。
ということでオープンでもロックでもない「ある程度スリップできるデフ」LSDの登場です。なかでもDCCDは時と場合によってオープンよりだったりロックよりだったり都合の良いLSD(機械式+電磁式クラッチ)です。
前後のトルク配分は41:59であり、後輪が優勢。情報元からのアウトプットを受けデフの締結力をフリーからロックまで変化させています。ただ、おそらく完全フリーと完全ロックではないと思います。おそらく前後1割くらい残していると思いますが、情報がなく、分かりません。
ロックにはなっているかも??

動作の基本的な特徴
①基本的に横Gが強いときはフリー方向へ
②アクセルオンでロック方向へ
③ブレーキオンでフリー方向へ
④サイドブレーキランプと連動して強制フリー
⑤+とーでイニシャルトルクも増減する(たぶん)
使い方の例
AUTO−、AUTO、AUTO+が選択できます。
AUTOー:結束力が弱め。つまり回頭性優先
得意なシチュエーションは速度の加減速が少なく、Rの大きいコーナーが続くような道に適しています。全体的なロック率とイニシャルトルクの低さのためだと思われます(特徴⑤)。
苦手なシチュエーションは上りのタイトコーナー。トラクションがかからず、加速していきません。また、Rの大きいコーナーでも出口に向けて加速すると、FRの様な旋回の後にプッシングアンダーの様な挙動が続くため、個人的にはあまり好みではありません。
路面μが低い状態でも操舵感がふわふわしてやや不安。道が混んでいるときには楽チン。
AUTO+:結束力が強め。安定性とトラクション優先
得意なシチュエーションは加減速が大きいタイトコーナー及び、高速走行。アップダウンが多く、いわゆる峠道と呼ばれる道に適しています。これはブレーキングやロールを利用した荷重移動とセットにして初めて真価を発揮します(特徴①②)。後輪にヨーを与えて作ってやれば立ち上がりではアクセルをベタ踏みできるほどの安定感を得られます。
一方で、苦手なシチュエーションは狭く長いロングコーナーで、コーナー入口で作った姿勢が出口まで維持できないような場合です。上りの場合では、フロントが外側へ引っ張れて行くためもどかしさを感じます。下りの場合も同様ですが、アクセルオフでもイニシャルトルクが効いて(たぶん)、アンダーステア傾向が強くなり速度が乗せられません。さらに雨で橋の繋ぎ目などがあるとけっこう怖い。
DCCDを騙す小技
③を利用した小技
ブレーキを踏んでいるうちはデフフリーで回頭性があるため、Rが小さく90°のコーナー(交差点みたいなやつ)ではブレーキに左足を載せたまま進入し、アクセルオン(右足)すると、極小回転半径で旋回できます。いわゆる左足ブレーキ(ターボラグ防止やFF車特有のアンダー消し)とは少し意味合いが異なりますが、WRXならではの使い方ではないでしょうか?
※年式によって同時踏み(1秒くらい??)は燃料カットが入るらしい。A型は同時踏みでもカットは入らない。
要領を得れば、減速のためのブレーキではなくセンターデフフリーのためのブレーキが使えるようになり、[+]だ[ー]だと悩まなくてよくなります。
④を利用した小技。
[+]の苦手なロングコーナーで、コーナー進入前に1ノッチだけ引いておきます(Pランプ点灯)。前後輪の締結が強制解除され、イニシャルトルクも消えるため、アンダーが出ず、アクセルはパーシャルでも曲がることができます。雨の日で、コーナーのアウト側に向かって水切り勾配がついた下り坂などでは、結構安心感が増します。
ヘアピン後半でイニシャルトルクが邪魔した場合でもチョン引きが有効です。
ちなみにこのdccdのネガはVABのD型で機械式LSDが取り除かれた際に解消されました。知人に貸してもらい確認しましたが、この差がかなり大きいです(トルクベクタリングもあるので一概にこれだけではないですが)。
※サイドランプオンでVDCの介入がキャンセルになるかは未確認です。
<SIドライブ>
情報元: ダイヤル
出力先: アクチュエーター ソレノイドバルブ スロットル開度
作動の仕組み
I、S、S#の3種類が選べるダイヤル。アクセルレスポンスと過給圧が変わります。
Iモードでは上限の過給圧が0.5 ×100kPaになり、同じアクセル開度でも過給圧の値は他よりも低くなります。結果燃費が10%いい。らしい。
S、S#は上限が1.5 になる。過給圧の立ち上がりは当然S#のほうが早いです。
使い方
目的が明確なので迷うことはなく、特に難しいことありません。
疑問: SIのモードがDCCD、VDCへ与える影響があるかは不明
<VDC ビークル ダイナミクス コントロール>
減速によって車の姿勢を安定方向に持っていくシステムです。STIはマルチモードで、ノーマル(無灯)、スポーツ(緑)、オフ(黃)が選択できます。
情報元: 車載のステアリング舵角、ヨーレイトセンサー、Gセンサー、車速、ブレーキなど
出力先: スロットル開度(出力マイナス方向制御) ブレーキ圧力(4輪個別 強める方向制御)
作動の仕組み:
・ノーマル: 出力制御 + ブレーキ制御
・スポーツ: ブレーキ制御
・オフ: カット(極限状態ではやや効くとの話)
出力制御は燃料を絞ることで回転の上昇を抑えます。おもにコーナーエンドの巻き込み防止かと思いますが、FFベースのAWDではまず作動しません。作動するとメーターのスリップマークが黄色く光ります。
ブレーキ制御はアンダー、オーバーを検知すると車体を4輪のブレーキどれか一つに強いブレーキをかけてドライバーが思っているであろうラインへ戻します。
アンダー → 後輪のコーナー内側 オーバー → 前輪の外側
ここで車がこのシステムを作動させる情報元はステアリング舵角なので、当然、キレ角が足らなければ無意味です。
(これ以上切るとアンダー出るなーと思ってスリップアングルを大きくしないようにしていると助けてくれません)
後輪がスライド状態だと期待通り作動できません。(いろはの下りのようなヘヤピン続きだとただの邪魔)
また出力制御と異なり、マークが点灯しなくてもこっそり介入しています。
タイトコーナーのある峠でオンとオフを切り替えると違いがわかります。
使い方
私は左足ブレーキを多用しますが、クリップ手前までブレーキを薄く残す走り方をするとアンダー方向に修正されます。というかハンドルを切っていてもまっすぐ止まるように誘導します。
ということで夏タイヤではオフにしています。荷重移動とスライドコントロールができるならば必要性は低いです。
疑問: ノーマルとスポーツでブレーキ制御の大小が変わるか否か