
今日の新舞子サンデー,いつもどおり普通の方々が解散するお昼前ぐらいに,三々五々集まってきた旧車でもなく新車でもない,中途半端車乗り集団.ええ,良いのですよ.こういう一見価値がないクルマは,実際市場価値はないんですが,そこに独特の価値観を見出して喜ぶのが我々いじめられっ子.
で,今回はそんな旧車としても名車としても価値がなく,輸出や解体されて消えていく運命の,将来のサニカリさんの立ち位置の候補の1台をご紹介.それがトップ画像の最終モデルのカペラワゴン.歴史のあるマツダのビッグネームの最後を飾った割には有終の美ともなんとも言ってもらえず,クロノス兄弟ほどのレアカー扱いもしてもらえず,なまじ頑丈なだけに業者オークションでもこぞって輸出に買われていく,そんな存在.
写真からもわかるように,後期型のなんというかくすんだ青のメタリック.ボンネットの色が違うのはご愛嬌.デザインは,前期型は随分と日産アベニールW11型に似ているデザインと言われますが,アベニールの方が後から登場しているので,マツダは濡れ衣.なのにアベニールの方が数は出たせいか,カペラはパチモン扱い…気の毒です.
これも写真の後期型になると,既にデザインが決まっていた初代アテンザに始まるZoom-Zoom世代のマツダ顔をもらい,初代デミオや最終ファミリアと同様の雰囲気を与えられました.
リヤ周りは特別目立つデザインではないもので,いい意味で個性が薄いです.これも後期になると,アテンザへのつなぎのイメージを強めるべく,横長の赤い部分の内側が丸く光るデザインに変更されています.
メカニズム的にも旧世代マツダの集大成.

うれしいワイヤー引きスロットル.
バッテリはマツダにしては珍しくストラット横ではない
エンジンは,2.0LがFS-ZE型170PSのハイパワー版とFS-DE型140PS通常仕様,1.8LがFP-DE型で125PSと特に目立つ性能ではないものの,フィーリングは日産SRのガラガラいう感じに比べれば,かなりスムーズなもので,三菱4G63のサイレントシャフト付きに近い感じです.あと,4WDのみV6 2.5Lもあるそうですが,なにぶんお目にかかったことがありません.(見分けるポイントは3ナンバー)なお,今回の試乗車はFS-ZE搭載車.こいつはファミリアSワゴン スポルト20なんかにも積まれた,この時代のマツダのハイパワーエンジンです.
ATは4速ながら,2.0Lはアクティブシフトマチック…要はマニュアルモード付きですが,マツダの場合はレブリミットに達しても勝手にギヤを変えないホールドモード相当です.ただし,ロックアップは自動でON/OFFしてしまうので,アクセル戻した時のダイレクト感は今ひとつ…ここのスムーズさはSKYACTIV-ATまで進化に時間がかかりました.
足回りは,普通のストラットですが,マツダらしくロールが少なく高速域での安定性が高く,低速域ではゴツゴツ感が強いドイツ風味.実家のアクセラほどではありませんが,トヨタのハイソカー的柔らかさとは,あきらかに方向性が違う味付けです.
インパネデザインは,これもいい意味で無個性.使い勝手に迷うことがなく,運転しやすい理想的な配置ですが,訴えてくるものがありません.セゾン系列ではない,本当の意味での無印良品.
メーターパネルも中央にスピード,右にタコ,左に燃料計と水温計とポジションインジケーター,このグレードはホワイトメーターと,偶然にもうちのラシーンftと同じレイアウトです.ブラックフェイスならサニカリさんと同じ.つまり,見やすいメーターを追求すると,どうやってもこの配置に行き着くんでしょうね.
センタークラスターは,上位に吹出口とハザードスイッチ,その下に3DIN分のオーディオとエアコンのパネル.エアコンパネルはオートエアコンですが,スイッチ式なので操作性はそんなに高くないです…がオートエアコンなので触る機会も少ないからコレでいいんでしょうね.
ATセレクターはゲート式.これは多分アクティブシフトマチックつきはこのタイプ,1.8Lの普通のATは普通のタイプでしょうね.自然な位置にシフトレバーがあり操作はしやすいのですが,マニュアルモードはDから助手席側に倒した左側にあり,さらにシフトアップが前,シフトダウンが手前と,近頃のマツダ様式と逆になっている違和感…手前に引いてシフトアップ,奥に押してシフトダウンのほうが,MTの3-4のシフトパターンと一致してわかりやすいんですけど…
その他の内装についてのポイントは,助手席の裏面がトレー形状になっており,助手席シートバックを前に倒すとトレーが現れるギミック.ここにドライブスルーで買った食べ物を置くと食べやすいですね.特に,ハンバーガー系ではなく牛丼系のドライブスルーでは重宝することまちがいなし.ちゃんと卵や味噌汁のカップを受ける部分もついています(違)
このカペラが発売された当時には牛丼のドライブスルーはまだ登場していなかったと思いますが,マツダの先見の明には感(ry

牛丼ドライブスルーに便利そうな
シートバックテーブル
そのかわり,使用頻度の低い部分はコストダウンの対象にもされており,リヤ席のパワーウインドゥスイッチなぞ,この時代には軽自動車ですらあまり使われない壁面縦型のスイッチです.(前席は引上・引下型)

明らかに使いにくい後席のパワーウインドゥスイッチ
使用頻度少ないからいいんでしょうかね?
最後に,荷室の使い勝手チェック.この車のテールゲート,なんとガラスハッチとバックドアの2段開き.でもガラスハッチは車外から開けられず,結局荷物積むならバックドアごと開けるだろうから,使用頻度は低そう…案の定,アテンザでは廃止.


脅威の2段開き!
(そっくりさんと言われるアベニールも同様)
さて,いよいよ走り出します.今回の試乗車.最上級グレードで装備満載.エアロ・フォグ・そして極めつけのサンルーフ.安全装備も現代の標準装備となっているものを先取りしており,トラクションコントロールシステム(TRC),スタビリティコントロールシステム(VSC),サイドエアバッグなどがてんこ盛り.ただし,これらのハイテク装備は耐久性に問題があるのか,メーター内にきらびやかなイルミネーションを輝かせていました.ま,通常走る分には特に不要なので,電球が切れていないことのアピールと考えておけばよいでしょうか?
加速を初めて思うのは,これ本当にワイヤ引きスロットル?というレスポンスのズレ…VSCやTRCが付いている関係かもしれませんが,いかにも初期の頃の電スロ感が強く,軽くペダルを蹴ると,少し遅れてアクセルは戻りっきていてもブオンと空ぶかしが起こってしまいます.これが,TRCやVSC部分での制御の影響なのか,それともエンジン本体の影響なのかはわかりませんが,右足とエンジン反応にズレがあるのは否めない感覚.もしかするとワイヤーがたるんでるだけかもしれませんが,ワイヤーがたるんでるだけでは,軽く踏んですぐ戻すをした時に,遅れて回転が上がるような反応は起こりえないんですが…このせいで,停止状態や極低速からの加速は,若干飛び出し気味の反応になります.
ただし,トルコンATが,この過剰な反応をセーブしてくれている感じで,実際には回転が上がり過ぎることはなく,ヌルヌルっと発進〜加速が始まります.この辺は昔ながらのATの感覚.40km/hを過ぎると,ロックアップを使える低負荷域では3・4速では加速時にロックアップが働くようです.(もしかしたら2速も?)この時の加速はすべり感がなく気持ち良いのですが,少し踏み足すとロックアップが外れ,エンジン回転が少し上がって2500r/min以上になると猛然とダッシュします.この反応は若干速すぎる感じを受けますが,これは吸気管圧力が一定以上になると過負荷と判断してロックアップを外している雰囲気です.そして,アクセルを戻すとロックアップも解除されてズルズルと滑っていく感じ.昔ながらのトルコンの滑りを利用したATそのままの感覚です.シフトショックはほとんどなく,比較的スムーズです.このATの感じは,アイシンAW製のトヨタフレックスロックアップに今一歩及ばない感じ.ここを克服したのが,多段化とロックアップ領域拡大+減速時もロックアップを外さなくしたSKYACTIV-ATですから,その前段階としてみれば,標準的なものでしょうね.
自動車専用道路に入って,アクティブシフトマチック…いわゆるマニュアルモードを試してみます.合流レーンの加速で2速に設定してアクセルをガバッと開くと,ロックアップされて滑りがない状態でダッシュして,レッドゾーンまで一直線!そしてレッドゾーンに達するとパパパパパン!とレブリミッターが作動…自動でシフトアップする機能はないんですね〜これはこれで,勝手にギヤ変えてしまわないので,山道なんかで元気に走りたい時には使いやすいでしょうね.3→4とシフトアップすると,一気に回転数は下がってクルーズモードになれます.ただし,ここでもアクセルを戻したり大きめにアクセルを踏むと,ロックアップは外れてしまうようで,回転数が急に上がります.どうやらポジションや回転数・負圧などを複雑に見ながらロックアップON/OFFの制御が行われているようです.このような状態なので,アクセルペダルのみでの速度調整のしやすさは,前述のアクセル操作に対する反応の遅れと併せて若干不自然ですが,近頃のCVT車と比べたらましな部類です.
ハンドリングは,マツダらしくロールはかなり少ない締まった足回りです.継ぎ目を乗り越えるとドンという振動は来ますが,不快な揺れが無いのですぐに収まり,運転は楽です.80km/h以上が,特に安定性が上がるいい速度域です.また,油圧パワステはかなりの軽さですが,不安な感じはありません.ただ,重ステのサニカリさんに比べれば路面からの情報が少ないですが,電動パワステの出来が悪い不自然な重さを付け足されたものに比べれば,よっぽどスムーズで,不安なく高速を流せます.
なかなかの実力と思わせてくれるのは,80km/hからの追い越し加速で,軽くアクセルを踏み込むと,ギヤを落とすことなくスルスルと回転数が上がっていきます.これは,電スロで過剰にアクセルを開けている感じとは違い,2500r/min以上からトルクが盛り上がってくる感じ…といえばよいでしょうか?可変バルブタイミング機構がついていないエンジンなので,低速域のトルクが盛られていない分,加速感はより自然です.このあたりの速度はかなりのスムーズさと快適さで,高速道路を流すのにはとてもよいセッティングですね.
ブレーキも特に可もなく不可もなく,踏んだ分だけ止まるという感じ.イルミネーションがきらびやかな各種制御装置は,結局仕事をするのかしないのか,試す場面がないままでした.ABS・VSC・TRCと,これらの制御装置は,すべて各車輪のハブに付けられた車輪速度センサの出力を受けて仕事をするので,4輪のセンサーのうちどれか1つでも壊れていると,これらの警告灯が点くようですね.
総じて感じたことは,渋い高速ツアラーという感じ.決して外れではないのですが,この車を選ぶ理由にも困るというか,この車じゃないと得られないとっておきがあるかと言われると特にない.でもこの心地よさは,なかなかレベルの高いものですので,勝手損はしない.なんというか,長く乗ってこそ,この味が染み出してくる,昆布のような,だしの中でも一番上品で味わい深い…そんな感じです.
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2014/04/21 00:44:49