
桜がいい感じに満開になってきていますね.
こんな季節,本当はクルマの窓を全開にして走りたいんですが,どうにも花粉症持ちにはつらい季節です.
日中などはソコソコ暑く感じるようになって来まして,もうじきエアコンが必要になる季節がやってきます.
うちのクルマは,サニカリさんは購入時点ではガスが抜けきっており,さらにエキパンも詰まった状態でした.こちらは一昨年息子が生まれたのを機に,車両価格の倍近くをかけて修理して,ワンオフのエバポレータを装備&リビルドのコンプレッサを装備して復活しました…が修理をしたのが今頃の春先だったので,実際に必要となる真夏になると冷房能力不足になっています.ガスは当然134aを使っていますが,レトロフィットするとエアコンの効きは悪くなる…というパターンですね.
この原因が何かと考えてネット検索しますと,なかなかに良い試料がありましたのでご紹介.
デンソーテクニカルレビュー Vol.4 No.2 (1999) P22-P29
若干古い資料ですが,エアコンシステムの進化,特に熱交換器の進化がわかりやすく並べられています.ここで重要なことは,エバポレータの進化の所で『1970年代に主流だったフィンアンドチューブタイプは,その後サーペンタインタイプに置き換わり,最近の主流はプレートフィンタイプである.このプレートフィンタイプも更に改良されて現在に至っており,過去20年の間に
性能同一ベースの体積は1/3まで減少した.』と,コンデンサの項目の冒頭にある『過去20年の間に
同一正面面積当たりの性能は1.8倍にも向上した.』のこと.ついでにヒータコアについても見てみると『ヒータコアは,1975年に比べ現在までに同一性能当たりの体積が40%まで小型化された.』とのこと.(表記が一定しない書き方なのが技術論文としてどうかという感じはしますが,%換算するとエバポレータは300%,コンデンサは180%,ヒータコアは250%の性能向上ですね.)
このエアコンシステムを売っているデンソーが書いていることなので,多少の誇張はあるかもしれませんが,最近のクルマでの空調がやたらと快適になっている理由は,これらの性能向上によるところが大きいでしょうね.
さらにコンデンサについて言えば,サブクール式にすることで,条件次第だが,上記よりさらに5%の性能向上が図れるということらしい.(上記のうちエバポ側は300%で性能改善著しいが,コンデンサは180%で足を引っ張っているので,システム全体での効率向上には,コンデンサの効率改善が効果大といえる.コンデンサが設置できるのは風通しが良い車両全面に限られるが,近頃の低燃費化の要求からすれば開口部は小さくしたいので,やはりコンデンサ側の改善はエバポ側より要求が強いと思われる.)
で,本題に戻ってサニカリさんの夏にダレる冷房.これはR12の冷凍サイクルにR134aを使うと冷房能力が下がるから…と言われることのとおりなのだが,もうちょっと詳しく考えて見ることにする.具体的には,何で夏場になると生ぬるい風になってしまうのかということのメカニズム推定と,その対策である.
【ガス】
冷凍サイクルの冷媒…室内側の熱を奪って社外に放出するべく,細いパイプの中を巡り続けてくれる,健気なありがたいヤツ.R12はもはや入手不可能で,元から抜けていたこともあって,R134aが入っている.R134aはR12に比べて能力が低いと言われるが,比較データは
こちらにあるのでご参考.R12とR134aのエンタルピー比はR134aの方が大きい=同じ冷媒重量ではR134aの方が熱を移動させる能力は優れている…のに,何でR134aの方が冷えないかというと,コンプレッサは容積で仕事をする機械なので,おなじ圧縮量で比較すると,移動させている流量が減りますから,能力が下がる…ということ.R134aが能力悪いのではなく,性能に合わせた使い方しないから冷えないんですね.
【エバポレータ】
上記の通りエバポはワンオフ化により,デンソーの論文で言うサーペンタインタイプになっている(純正も同様).エバポの空調能力は,そもそも車室の大きさによるので,ワンオフになっているとはいえ,純正相当の能力は確保できているんだと思う.即ち,熱交換器としての性能が不足している…という事はないはず.
【コンプレッサ】エアコン修理の際にサンデンのリビルド品に交換済.ベーン式圧縮機.
問題はガスの所でも述べたように,ベーン式圧縮機は容積で仕事をする機械なので,ガスが何であれ,入ってきた体積を決まった体積に圧縮して排出するだけ…熱をどれだけ移動させられるかは,移動したガスの重量によるので,コンプレッサの動作時間自体は,R12からR134aにすることで,長くなる.デューティー比(電磁クラッチのON/OFF比)で冷媒の流量は調整可能だが,一応真夏でもコンプレッサがOFFするので,流量が絶対的不足しているという事はないだろう.
【コンデンサ】
デンソーテクニカルレビューの通り,ここも性能向上著しい部分.特に,R12からR134aに変わった時に,エバポの性能向上も同時に取り込まれているのは,あまり知られていない事実かもしれない.R12は圧縮後冷媒の単位体積あたりの重量が重い(圧縮後冷媒の比重が重い)ので,流量の少ないコンデンサでも十分な熱交換が行えた(即ちコンデンサ温度が高くなって,たくさんの熱を車外に放出していた)が,R134aは圧縮後冷媒の単位堆積あたりの重量が軽い(圧縮後冷媒の比重が軽い)ため,たくさんの冷媒を流してやらないと十分な排熱が行えない.
サニカリさんの場合,ここはR12のものをそのまま使っているため,排熱が追いついていないのだろう.実際,コンデンサに水をかけてやると,一時的に冷房能力が回復するので,この線は濃厚.熱交換器は温度差が大きいほど放熱量も大きくなるので,ここを改善すれば,室内側エバポをガンガン冷やしまくれるはず…
ということで,真夏に冷えない原因は,ガスとコンデンサが濃厚になってきました.
余談ですが,ラシーンは購入時点ではエアコンは電磁クラッチの故障を抱えており,無理やりでかいヒューズを入れていたら,なんとハーネスが炎上…それでも無理やり車載していたハサミで切れたヒューズを短絡してエンジンがかかり,自走して帰れたのだから大したものです.(その後ハーネスは自作で引き直しました)
で,その後コンプレッサを中古品と交換したら,ちゃんと現代のクルマとして必要なレベルで冷えるんですよね.だから,R134aはR134a用にできたシステムで使う分には,十分な能力を持っているという事です.
ここまで書いて眠くなったので,続きはそのうち…ガスとコンデンサを両面で対策検討していきます.
Posted at 2014/04/02 00:37:57 | |
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サニカリさん | 日記