
「オーバーヒートしませんか?」
夏の時期旧車に乗っていると良く聞かれる
旧車には路上でボンネットを開けて止まっている光景を連想させるのであろう
答えは
「少し気を使えば大丈夫」
ポイントは
1.ノーマルかつ正常であること
2.オイル管理
3.少しのいたわり
4.風を味方に
この4点に気を使えば、少なくとも自分の所有している
ビートル
チンク
2CV
ミニ
ホンダZ
は夏を乗り切ることができる
これらのクルマのオーバーヒートした事例の多くは、元々故障があった場合か、パワーアップしたクルマで大半である
大衆旧車でよくあるカスタムが高速道路の発達した現代の交通事情に合わせたパワーアップ
例えばビートルでのツインキャブ化は定番である。
1200から1600へのエンジンコンバートも珍しくない
自分のビートルもノーマルの1200から1600に載せ替えられている
1600のエンジン自体はノーマルでキャブもシングルのままである
実は購入当時、炎天下の渋滞路でパーコレーション(ガソリンが熱で泡立ち燃料の供給が不安定になる)の症状が出た。
ビートルはエンジンフードが1200と1600で異なる
本来1600用は排熱用のスリットが付く
自分のビートルは1200仕様のままでスリットが無い
この微妙なスリットが影響したと考えられる
そこでエンジンフードを3cmくらい浮かせるビレットを取り付けた
これでパーコレーションの症状が出無くなった
おそらくノーマルの1200のままではパーコレーションは起きなかったであろう
実際以前乗っていて1200STDはパーコレーションの兆候すらなかった
ちなみにオーバーヒートに至る熱ダレの経験は今の1600では無い
バイクとは違い空冷とはいえ冷却ファンを持つ強制空冷である
ファンの回転はエンジン回転数に比例して上下する
アイドリングでも冷却機能が働くのがオートバイと異なる
空冷のビックバイクは炎天下でアイドリングしているだけで熱ダレする
このイメージがありバイク乗りにも、空冷車は真夏に弱いというイメージがある
空冷はオーバーヒートしやすいというのは強制空冷であるクルマに関しては誤解である
確かに熱ダレは水冷車より早く起きるが、そこから粘るのが空冷エンジン、熱ダレしようと空冷ファンでの冷却は続く
水冷は熱ダレは遅いもののオーバーヒートしたら沸騰した冷却水に気泡が入り冷却機能自体失われエンジンを止めるしかない
空冷であればペースダウンするか、いざとなれば水をかけてしまえば一気に冷える(霧吹きぐらいネ)
過酷な状況になるほど空冷の方が強くなる
ビートルを祖に持つポルシェが、ピークパワーを捨ててでも長いあいだ耐久レースで空冷にこだわった理由である
(空冷はヘッドまわりの冷気に限界があり、高圧縮化が難しい。低圧縮で過給するターボを早くから選択した理由の一つでもある)
最後まで走りきるための選択として
2CVも構造的に熱には強い
フロントエンジンで空冷ファン+走行風の風も入る
しかもエンジンは各シリンダーが独立して冷却効率の高い水平対向2気筒エンジン
更にエンジンルームはスッカスカ(笑)
ビートルやチンクは2気筒が並ぶ分熱が溜まりやすく逃げにくい
2CVはパワーアップのチューニングパーツが流通していない
そのせいもあるが2CVでオーバーヒートしたとゆう事は聞いた事がない
ワイドなギアレシオが適切で高速でも回転が抑えら、低速トルクが太いので街中でもチンクのように回す必要がない
熱が原因で心配なトラブルは電気系くらいである
2CVはオーバーヒートより冬場のオーバークールの方に気を使うべきクルマである
そのため10度以下で使用を推奨されているフロントグリルを塞ぐカバーがある
2CVの弱点はミッションである
エンジンの後方に位置するためか熱でミッションの入りが悪くなる。
ミッションオイルは耐熱性の高い良いモノを使う事をお勧めする
実際のところ2CVの熱対策はクルマより人の熱中症対策の方が知恵を使う
これは後述する
チンクは空冷3台の中では熱に一番厳しい
最大の理由はエンジンのキャパシティがなく、一般の交通の流れに乗るのでも全開走行を強いられることにある
650ccにボアアップしている個体が多いことも大きい
排気量3割アップは熱量も3割アップ、トルクアップで回転を上げずに走れることを差し引いても2割は熱量が上がるだろう
とはいえ自分の先代のチンクもエンジンオーバーホール時に650に上げていたのだが
それでもオーバーヒートや熱ダレの症状は出ずに夏でもエンジンを回しまくっていた
油温計が付いていなかったので、どこまで油温が上昇していたかは不明である
油温計があるから気になるのであって、無ければ気にならない
実際熱ダレしないのだから問題ないとも言える
イタリア人もそんな事を気にして走らないだろう
ちなみにホンダビートも油温が上がる
回すとすぐに110℃を超えるという、しかし油温計が無いので油温で騒ぐユーザーは少ない
知らなければ問題とならないケースは国産でも多い
今のチンクはアバルト695なのでノーマルの4割増しの排気量となる
さらにエアクリーナーボックスを持たない大きなキャブを持つ
先の650時とは比較にならないくらい熱の影響を受ける
特にキャブレターの熱に対する影響は大きく熱対策はまだまだ不十分である
キャブはエアクリーナーを持つノーマル形状で径を2〜4mm上げる程度が熱対策とパワーのバランスが良いようだ
そしてリアのエンジンフードを開ける対策も良し悪しということがわかってきた
自分のチンクでは上開けは高速では冷却効果が上がるが、一般道では熱がファンに循環し逆に温度が上がる
それぞれ目盛りで3〜5℃の差といったところであった
エンジンフードの下開けも話を聞く限りには効果はほとんど無いらしい
色々書いたがノーマル排気量の500でトコトコ走る限り、日本の酷暑でもまず問題ないというのが結論である
唯一厳しいのは燃料ポンプ
ノーマルでは機械式の燃料ポンプがエンジンルーム内に配置される
ここがヒートしてパーコレーション(ガソリンが気化し泡になって燃料が送れなくなる)が起きることがある
燃料ポンプは電磁ポンプにしてフロントのガソリンタンク側に配置すべきだろ(自分のチンクはノーマルのまま)
それと高回転を多用すると空冷ファンが壊れることもある
各部位の溶接の強度が弱いうえに軸の精度も悪い
溶接に関しては強化品が出ているが精度は個々に合わせこむしかない
チンクは似た構造のビートルでは起こりえないトラブルが発生する
これも想定しているスピードレンジがアウトバーンへ対応するビートルや
現代の交通事情と異なるのが原因だろう
しつこいようだが、ゆっくり走れば問題ない(笑)
次はミニ
ノーマル状態で一番熱に厳しいのはミニである
設計当初850だった排気量は、最後は1300になる
更にエアコンまで装備するに至りエンジンルームはパンパンである
それを見ると850時代のエンジンルームがガラガラに思えてくる
ラジエータが前面になくエンジンサイドにくる
走行風での冷却はパンパンに詰め込んだエンジンルームでは抜けないので期待できない
またエンジン後方に排気と吸気が並ぶように配置される
縦置きならいざ知らず横置きでは熱の逃げ場がない
熱対策は風を多く取り入れる対策より、空気を抜く経路を作る対策の方が効果的である
ミニが構造的に熱に厳しいのは明らかである
そこでローバーミニの後期1300は電動ファンが追加された
それでも現代の酷暑では排熱の容量ギリギリである
冷却系のメンテナンスを怠ると直ぐにオーバーヒートするリスクとなる
我が家の旧車ではミニが最も新しい個体(93年式)であるが、メンテナンスは一番気を使う
但し、リスクは豊富なアフターパーツで補うことが出来るのがミニのメリットである
ラジエターの容量アップ、ファンの風量アップ、クーラー(エアコン)の配置移設等
夏でもオーバーヒートしないエアコン快適仕様にすることは可能である
ただし、かなりのコストがかかることが二の足を踏ませることになる
そして、ミニの熱のこもるエンジンルームは補機類の劣化も早める
電極の接点、プラスチックやゴミ系のパーツの消耗がオーバーヒートにつながることを理解しておく必要がある
最後はホンダZ
チンクより小さな360ccの排気量であるが9000rpmまで回るエンジンがチンクと同等以上の速さを持つ(ドングリの背比べ状態ではあるが)
一般道でも5000rpm、高速では普通に8000rpm以上が当たり前
当然熱的には厳しいはずだが、意外と水温計は安定している
排気量に対してエンジンルームの余裕があり、2輪のノウハウを投入したエンジン自体のフリクションが小さく発熱自体が少なくようだ
そしてミニより長いボンネットでエンジンルームには余裕があり熱害の影響を受けにくい
ラジエータ容量も十分でサーモスタットやキャップが正常であれば通常の走りでオーバーヒートはしない
エンジンの冷却は問題なくともキャブへの熱の影響は避けられない
ここも負圧による可変ベンチュリーを持つノーマルのCVキャブであれば、ドライバーのアクセルスキルでカバー出来る範囲である
ちなみにバイクで鍛えらた純正のケイヒンのCVキャブは、かなりの高性能キャブである
逆に当時のCRキャブのような強制開閉式のレーシングキャブでは夏場用セッティングが必要となるし、中低速でのアクセルワークがシビアになるので、慣れないと街乗りでは遅くなる可能性がある
ホンダZの熱の問題は上り坂で起きる
排気量の小ささはトルクの小ささにつながる
チンクよりピークパワーは出ているものの、絶対的なトルク不足が坂道で顕著化する
複数人乗車の箱根などでは2速どころか1速で全開走行になる
十分な風量がラジエータに当たらない1速ではさすがに厳しい
ここで渋滞にはまったら....正直諦めるしかない
逆に高速走行では、どんなに回してもオーバーヒートはしないので、迂回路で高速が使えるならそちらを選ぶのが懸命
つまり道と時間を選んで走る必要はある
実際のところホンダZを実用車として何にでも使う人は稀であり、あまり問題となりそうにないが
次回、夏を楽しむ②に続く‼️