
2回目はオイルの話し
オイルの機能はいくつもあるが、大雑把に言うと
・潤滑
・洗浄
・冷却
旧車には100%化学合成ではなく鉱物油が良いとされる
その理由としは粒子が小さく浸透性の良い100%化学合成オイルはガスケットの隙間から漏れるからとされている
実はそれだけでない
古いクルマと新しいクルマでは潤滑の考え方が違うのである
古い工作機械ではシリンダーやピストンの表面を精度良く加工できない
寸法精度が悪いだけでなく金属表面にどうしても凸凹ができる
更に熱膨張を合わせる技術もない
それを見越してシリンダーとピストン(ピストンリング)のクリアランスも大きめとなる
そのクリアランスや凹に粒子の大きなオイルが入り込む
シリンダーとピストンは大小オイルのベアリングによって潤滑されているイメージである
粒子の小さな100%化学合成オイルはこのクリアランスや特に凹みを埋めることが出来ない
大小粒子の不揃いである鉱物油の方が相性が良くなる
一方、最新の工作機械で作られたシリンダーやピストン表面は滑らかである。
面接触となり表面張力敵にフローティング状態で微細な隙間のまま保持される(表面に意図的に溝をきってオイルを溜める方法もある)
この場合は粒子が小さくて均一であるオイル、つまり化学合成100%オイルとのマッチングが良くなる
古いクルマでもオーバーホール時にシリンダーやピストンを最新工作機械で加工したエンジンであれば100%化学合成オイルにすべきである(ガスケットも今時の素材にして)
そうでない場合は鉱物オイルの方がマッチングが良いケースが多くなる
ちなみに床が池になるようなオイル漏れはでなければ、多くの場合オイル漏れを気にする必要はない
先に記述したように昔と今とでは工作精度が異なるのだから少しばかりのオイルの漏れや滲みは当然である
ビートルは最もオイル依存が少ないように設計されている
オイル容量は3Lにも満たない
これは1.6Lのエンジンでも同じ
その理由は低回転型エンジンと重いフライホイール
エンジンの回転数を抑えて走れるようにすることで、オイルにかかる負荷を下げている
更に低圧縮でヘッド周りに発熱量自体を下げている
OHVエンジンであるのも効いている
エンジン最も熱を持つのがヘッドである
バルブ駆動形式は
SV→OHV →OHC→DOHC
の順で高回転となる
引き換えにヘッド周りの構造が複雑になり、空冷では冷却のフィンが付けにくくなり冷却には不利になる
SVがともかく、OHVとDOHCででは高回転以外ではパワー(トルク)差はほとんど出ない
ビートル、2CV、チンクがOHVを採用し続けたのは、OHCにする必然的がなかったからである
ちなみにポルシェですら空冷モデルはOHC止まりである理由でもある
ビートルで通常使うオイル粘度は20W-50
古いビートルはシングルグレード、メキシコビートルは10-40が指定だが
オイルの性能が上がっており、どの年式でも20W-50を通年で使うショップも多い。
自分は冬は10W-40を使うこともある
低回転域のレスポンスがやや良く程度の差である
重いフライホイールがオイル粘度の差を出しにくくしている
硬すぎオイルはエンジンに負荷をかけるだけである
体感上大した差でないにしろ夏冬でオイルの粘度を変える方が本来エンジンには優しい
オイル交換のインターバルは1500〜2000kmか半年に1回を目安にしている
容量が少なくオイルフィルターを持たないのであっと言う間に真っ暗
オイルの役目の第2は洗浄である
オイルフィルターを持たない年式のビートルではオイル交換で洗浄力を保つしかない
冷却機能に関してはビートルはオイルにあまり依存していない
冷却は基本空冷のファンが担う設計思想である
一方ポルシェが実質油冷エンジンと称されるように高回転まで使う場合は対策が必要である
ビートルでもボアアップやハイカム、ツインキャブ等でパワーアップした時にはオイルパンの容量アップとオイルクーラー増設が必要となる
2CVのオイル量もフィルター交換時で約3Lとビートルと同じで多くない
(オイルフィルター付きます)
それでもビートルに比べれば排気量が半分以下
ビートルより高回転域を多用するにしても
熱の逃げやすい構造、そしてオイルフィルター装着とオイルの劣化はビートルより遥かにしづらい
指定オイルは通年20W-50とビートルと同じ
自分はビートルと同じケンダルを入れているが、真夏はともかく冬場は硬く感じる
そこで冬場はケンダルの10W-40に粘度を下げている
これでも冬場はオイルの硬さを感じくらいである
納車時にショップ(旧車専門店ではない)は10W-30を入れていたらしい
正直、真冬はこの粘度がちょうど良かった
ただ柔らかすぎるせいかオイル滲みが多くなるようである
個人的にはケンダルのような耐熱性の強いオイルであれば通年10W-40で問題ないと考えている
今はテスト的に夏は20W-50と10W-40をブレンドして使っている
交換インターバルは半年に1回、距離を走らないのでどのくらい持つか不明だが
似た構造のバイクの感覚だとMAX3000〜3500kmくらいが目安だと思われる
チンクのオイルに対する考え方はビートルと同じである
10W-40の鉱物油が基本で、フィルターを持たないことから1500〜2000kmでのインターバルで交換(自分のチンクはビートルと共用のケンダル20W-50を使う)
但し、ノーマルであれば....
先に述べたように、チンクでは650への排気量アップは定番である
当時オイルにかかる負荷が大きくなり劣化は早い
空冷ファンだけでは冷却が追いつかないケースも出てくる
そこでオイルの第3の役目である冷却機能を顧慮する
オイルの粘度を変えても正常使用時には、基本的に冷却性能は変わらない
10W-40の代わりに20W-60を入れてオイルの温度が下がるわけではない
硬いオイルは高温時の油膜切れを起こしにくく、焼き付き防止になるだけである
オイルによる潤滑性が良ければ発熱が抑えられるので、オイルの銘柄で多少の温度低下は期待できる
オイル添加剤には摩擦を減らす効果のあるものがある
発熱を緩和し少しパワーアップすることで回転を抑えられるので多少の効果は期待できる
最新の工作機械で加工し、きっちり組み直したエンジンであれば色々な添加剤の入る100%化学合成オイルの方が安心
多少のオイル漏れより耐熱性を重視する場合も100%化学合成が良い
冷却にもっとも効果の高いのはオイルを冷やす事である
オイルクーラーがベストであるが、コストもかかる
お手軽なのがオイルパンをフィン付きの大容量タイプへの変更
アバルトのオイルパンが有名であるが、フィンが同じように切ってあればウェットサンプなので(オイルクーラーでも付けないかぎり)効果は大きな差が出ないだろう
オイル劣化が早いので容量アップの恩恵も大き(自分のチンクでは5L弱入り、ノーマルの約2倍に相当する)
ただし、下に出っ張る関係でヒットしやすいなるので注意が必要である
車高を考慮してオイルパンを選ぶ必要がある
また、冷却が期待できるのは走行時のみ
渋滞時はあまり役に立たない
これはオイルクーラーでも同じ
出来れば電動ファンでも付けたいとこであるが、そこまでやっている人は自分の周りではいない
チューニングチンクで真夏の渋滞は極力避けべきだが、少しの気づかいである程度対処できる(次回記述)
ミニはチンクと並んでオイルにかかる負荷が大きい
(オイルフィルター付きます)
オイルの影響は一番感じやすい
ご存知の通りミニはオートバイと同じようにエンジンオイルとミッションオイルを共用で使う
ミッションのギアがオイルを切り刻んでいく
オイルには耐熱性と共に極圧性という特性がある
高い圧力をかけても油膜が保持される(切れない)指標である
ミッション専用オイルは、この極圧性をあげたオイルである
エンジンオイルとミッションオイルを共有することは、極圧性の高いオイルが使えないことを意味する
バイクも同じ構造のモデルが多いので、購入前はあまり気にしていなかった
ミニのオイルの依存度がバイク以上に高いのは最初のオイル交換に気がついた
交換前後でミッションの入り方が激変してのである
当初入れたオイルは、いつものケンダルの鉱物油
粘度は冬場であったので10W-40
それから春の間まで油圧計で劣化度合いを観察
驚いたのは外気温とは関係なく距離を重ねるほど最低油圧が下がっていくこと
予想以上にオイル劣化が早い
感覚的には2000kmが限界
ミッションフィールが悪くなった時には、かなり劣化が進んでいるので
その前に交換したい
ミニは高いオイルを使うより、交換インターバルを短くする方にコストをかけた方が良い
耐熱性に関しては水冷という事もありケンダルなら夏でも10W-40で十分な感じ
真冬だと20W-50は少し硬すぎ感じがする
最近お世話になり始めたミニのショップではGulfの15W-50を使っていた
通年同じオイルにするなら、この辺りがバランスが良さそうである
意外なことにミニは冷却にもオイルを活用するように設計されているようだ
5Lという排気量らしからぬ容量はミッションオイルと兼用しているだけが理由ではなさそうである
初期の1300キャブクーパー以外はオイルクーラーを持たないので、オイルの冷却はオイルパンが担っている
チンクのオイルパン同様に下に飛び出している理由でもある
オイルパンのガードは冷却の阻害要因となるので良し悪しである
ともかくミニのオイル交換は早ければ早いほどクルマに優しいのは間違いない
ホンダZのオイル依存度は他車に比べれば低い
(オイルフィルター付きます)
9000rpmまで回るエンジンがオイルに対する依存度が低いというのは普通ではない
当時のエンジンテクノロジーに関してホンダは間違いなく世界最高レベルであった
基本バイクと同じ2500〜3000kmくらいが交換の目安となる
当時のオイルの指定はシングルグレードであったらしい
トルクが無いので硬いオイルはパワーを食われレスポンスが落ちる
理想は高性能100%化学合成の10W-30
自分はオイル漏れを抑えるためと熱的なマージンをとって鉱物油のケンダル10W-40を通年使っている
またミッションオイルは別体にもかかわらず、エンジンオイルを使うのがバイクメーカーのホンダらしい
ミニで書いてようにエンジンオイルは極圧性が弱く劣化が早いので、5000〜6000kmで交換した方が安全である
過去の経験からすると、エンジンとオイルのマッチングは間違いなくある
自分は入手性からケンダルを多用するが、これが必ずしもベストではない
ちなみに2002年式の小カングー とケンダルとの相性は良くない
カングー はTotalの100%化学合成5W-40の方が良かった
古いクルマは仕様やヘタリ具合も各車一様ではない
自分のクルマに合うオイルを探して欲しい
自分がオイルのマッチングを見る方法はレスポンスと排気音である
トルク感と軽快性のバランスと
乾いた音と心地よい鼓動感のある銘柄を極力&粘性選ぶ(燃焼状態が良い時の音)
意外かもしれないがオイルの銘柄で排気音は変わる
粘度は同一銘柄ばらブレンドして調整することもある
最後にオイル添加剤
自分はミニ以外のクルマのオイルにはワコーズのEPSを入れている
オイル滲みにはこれでかなり抑える事が出来る(カングー も)
ただガスケットやパッキンの柔軟性を改善させる、この手の添加剤はパーツにダメージを与える可能性もある事をわかったうえで自己責任で使用してほしい
ミニへのオイル添加剤は現在研究中である(笑)
次回、真夏を楽しむ③では、これ以外の真夏の対処法を掲載する