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浅間のホテルで安藤のおば様と佐藤と言ったホテルマンに見送られて出発する。
今度はポーターが先行し、みかんが後ろを走る。
調子の悪いポーターだが帰りは空身で基本下りだけである、いざとなればまた牽引すればよい。
やはり泰造が制御している時と違い煙が多く出ているが、泰造曰く麓まで位なら大丈夫とのこと。
こちらは煙まみれだが・・・・
走り出して数分もたたな内に煙の量が増えてくる。。大丈夫か・・・
いや、これは煙ではなく霧・・・
一面一気に真っ白くなる、前を走るポーターはライトをONにしているが古車のテールランプは小さくて暗く、みるみる霧の海に飲み込まれていく。
「これって・・やばくない?」
泰造に問いかける
『あのクルマで、あの娘では厳しいかもな・・・』
前方視界は数メーターまで下がりる
ポーターのペースがみるみる落ちてくる
箱根の雪と霧の下りの恐怖を思い出す
こちらは泰造という安全装置が居座っているので大丈夫だがポーターはそうはいくまい
『先行してやれ、このクルマにはバックフォグも装備してあるからのう』
そう、このクルマは見た目とは裏腹に泰造の手によって現代車並み・・いやレーシングカー並みの安全装備が施してある。
レーシングカーにバックフォグは無いが、霧の多い伊豆の山や箱根を走る上で必要な装備なので後付けしてある。
「ポーターの前に出て一旦止まるから指示して」
『前後クルマは無しじゃ、右側は5mは空いている』
「了解!」
言葉と同時に、シフトダウンし一気にポーターの前に出ると同時にハザードを付けて距離を保つ
『20先の左に空地がある・・そこに』
「了解」
ポーターの距離をライトの明るさでつかみながら、みかんのペースを下げハザードを左ウインカーに替える
リーシャも理解したようでポーターのウインカーを付ける
オレンジと黄緑のミニカーが並んで空地に入る。
ここは見晴台のようである
ポーターからリーシャが降りてくる
こちらも、みかんのドアを開ける
「助かったぁ・・・よくこの場所がわかった・・というか見えたわね・・地元の私でもわからなかった・・そもそも怖くて左に寄せられなかたのに・・」
みかんから降りると、あたり一面真っ白である。
目の前にいるリーシャはわかるが、3m位先のポーターの輪郭を認識出来ない位。
「このクルマはライト類が強化してあるし、強力なナビも積んであるんでね!」
まさかナビ替わりの幽霊が乗っているなんで言えないし・・
「しっかし、困ったわね・・・この霧じゃあ・・」
リーシャが回りを見回す
「まあ、無理してぶつけても合わないから、少し待ちましょう!!」
リーシャを、みかんの助手席に招き入れ、またまたお話タイムである
「このクルマってお爺さん・・タイゾーさんだっけ、の形見なんでしょう?」
「そうね、お爺さんが私の為に残してくれた形見であり、お爺さんの分身かな・・」
「同じ年式なのにポー君と大違い・・あっちは、ほんとボロボロだから」
ポー君というのはポーターの愛称らしい
「ポー君・・・も、お爺さんのクルマなんでしょう?」
「そう、まだ生きているから形見にはならないけどネ(笑)」
「ウチのジイサンは頑固というか、物持ちが良くて直せる限りは直し続けると言って手放さないのよ」
「長く愛着を持って使ったモノには精神が宿るって言うのよ・・・不思議よね、西洋にはあまりそういう無い考え方なのに(笑)」
「そうね、モノに意志や精神が宿るってのは日本独特の感覚と聞いたことがあるわ」
「そんなんで、ウチには古いモノばっかりで・・クルマも私より年上のクルマばっかり」
「それは、ウチも同じ・・みんな旧車」
まあビートを旧車と言うにはまだ早いが・・
「でもね・・自分で運転するようになって、最近やっぱしウチのクルマ達がイイナって思えてきて、昔はエアコン効くクルマ買ってって嘆願したこともあったのに(笑)」
「それも、我が家と同じ(笑)」
「やっぱし、一緒に育ってきたモノに愛が宿っているのかもね!」
お互いの旧車家族の苦労自慢を30分程しただろうか、霧がだいぶ薄くなってきた
「そろそろかな・・」
リーシャが切り出す
「そうね・・」
ポーターの暗いライトだとまだ厳しいかな・・・
「ここから霧が完全に晴れるまで、私が先行するわ」
「ここは、地元だし・・私が・・」
「霧は走り慣れているのよ・・私!、それに明るいライトとバックフォグがあるので大丈夫」
例によってバックフォグは泰造によって、今はさらに明るくコントロールされている。
「じゃあ、お願い!!、運転はミナの方が全然慣れているようだから」
後続車が当面来ないことを泰造に確認して2台はスタートする。
視界は20m位まで回復している、センターラインも見えるのでゆっくり走れば問題ないレベル。
ポーターも等距離で付いてきており問題なさそうである。
「おじいちゃん、さっきのモノに精神が宿るって話ってホント?」
『本当じゃよ、人と人とを繋ぐ糸が思い出と共に太くなると同じようにな』
「クルマが意志を持つって事?」
『少し違うがのう、モノが勝手に意志を持つことはないんじゃ』
『人の気持ちや精神がモノに移るんじゃ・・そうじゃな、鉄に磁石を長く付けておくと磁力が鉄に移るじゃろう・・あれと同じじゃ』
なんか良くわからないけど・・・なんとなくわかる
SFで出てくる残留思念のようなものだろうか・・
「愛情をもって接すると壊れるものが壊れないなんて事もあるの?」
『ああ、人の思いや願いは見えない力としてモノに作用するからのう、そうゆう事もありえる』
『他のクルマに気が移ると故障するという話は良く聞くだろう、それは思いを共有することいよって支えられていた力が無くなってしまうからじゃ』
「そうね、お爺ちゃんからもらった、このペンダントを持っているだけで、気持ち的に助けられた事が何度もあった」
『レースでも同じじゃ、メカニックが情熱をもって組んだエンジンとビジネスライクに組んだエンジン・・・ここぞって時に助けてくれるのは決まっておる』
モノに愛着を持って接する・・・やっぱりいいことあるんだ。。
「みかんにも宿っている?」
『たぶんな!!』
「あのポーターにも?」
『きっとな・・・あのポーター・・・おまえの父親に修理をお願いしておけ、あやつなら部品もどうにか手配できるじゃろう』
泰造も既にポーターにも愛着が湧いているのだろう
「そうね!、そうする」
後記
「あさま」編後半に入りました。
今回も、最後までお付き合い、感謝!、感謝!!です。
次回は、4/4頃アップ予定です。
尚、執筆に集中するためコメント機能は止めております。
物語の概要やINDEX(目次)は、
こちらをご覧ください(随時更新中)。
Posted at 2015/03/27 21:54:50 | |
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麦わら帽子とみかん | 日記