
360ccの軽自動車
日本におけるクルマの大衆化はこのサブロクから始まった
大きさは
・全長3m以下
・幅1.3m以下
2代目チンクエチェントの大きさは
・全長2.97m
・幅1.32m
当時のサブロクはチンクとほぼ同じサイズである
規格を作るときにチンクが参考にされたのかと思いきや
日本の軽規格の方が早かった
逆にイタリアが極東の規格を参考にする必然性もなく
ミニマム4人乗車できるサイズを選んだ結果、ほぼ同じサイズに落ち着いたのであろう
余談になるがチンクを軽登録できるか⁉︎
自分もそう思った
これは出来ないこともないが、コストがかかって現実的でない
軽自動車登録はその車体が製造された年式の法規制が適応される
チンクのボディサイズは実測では1300mmを切るのでOK
だが、排気量を360cc以下にする必然がある
これを実現するコストを考えると割に合わない
さて、サブロクの大衆車の代表はスバル360である。
特徴は軽量モノコックボディと、それを実現するためのボディデザイン。
チンクエチェントも軽量高剛性を狙って丸いデザインとなった。
似たようなデザインになった必然だろう。
航空技術を応用した、そのボディ設計はチンクエチェントより更に革新的だった。
時代時代でのサブロクのヒット作は、マツダキャロル、ホンダN360/ライフがあげられる。
ヒットには至らずとも各社から個性的なクルマが多数発売された。
自由な発想で自由なクルマ作り競い合う、今からみればフロンティアである。
その名を課したクルマも存在したくらいに。
サブロクの魅力とは、このフロンティア精神。単に小さくて安いだけでない造り手の夢の工業作品である。
残念ながらスバル360は所有した事がない。
あるのは水冷のホンダZ
通称は水中メガネ
ホンダZへの憧れは小学生時代にさかのぼる
やっと白黒テレビが普及した時代
父が免許を取らなかったこともあり、いつしかマイカーを持つことすら思ってもいなかった
そんな中、子供ながらにいつかは買えるかも!と憧れたのがホンダZであった
ジャンボーグエース(実際には9)で走るZに、ジャンボーグエース以上の魅力を感じていた
そんな子供の頃の記憶は失われたいた
あるビートルのイベントで、ホンダZの整備書なる本を見つける
当時はメーカー以外からも整備書が発売されることも多かった
手にして当時の記憶がよみがえる
それなりの値段に価格交渉をしてみる
レアな本らしく、少ししぶりながらも交渉成立
この時、価格交渉が成立していなければ、ホンダZを買うことはなかった
その本をナナメ読みして棚に収める
そして、とある旧車ショップの下取り車を購入する機会がやってくる
この時、手を上げたのは3番手だったが、最初の方はお店にあった別の旧車を、2番手の方は予算が確保できないとの事で自分に声がかかる。
外観は一見綺麗だがニコイチでレストアされた個体。調子もイマイチ。
低回転ではバラつくエンジンも高回転でひと伸びする気持ち良さはホンダエンジンそのもの。
雰囲気的にキャブと点火系で低速のバラツキもなんとかなるだろう。価格が安さに自分なりの言い訳をこじ付けて購入決意。
ホンダZの代わりに出されたのはランチアデルタインテグラーレ16v
普通ありえない入れ替えであるが、買い替えに後悔はなかった
高速以外ではホンダZの方が全然楽しかったからである
その後インテグラーレは超高騰し売ったタイミングの後悔はあるが(笑)
多くの人はインテグラーレの方が面白いと感じるだろう。
速く走る事に興味がなくなっていた自分にとって、インテグラーレの1/5のパワーを使い切って走る方が楽しかった
ちなみにインテグラーレの次のオーナーはフィアットパンダを下取りにしたそうだが、やはり一年でインテグラーレを手放したらしい
ホンダZの魅力は
・エンジン
・デザイン
その2点に尽きる
自分のZは最後期型の水冷
グレードはGTでツインキャブ
N360がバイクのエンジンをベースにしていたのに対し、クルマ専用に再設計されたもの
とはいえホンダは市販4輪のエンジンノウハウがあるわけでなく、水冷化された以外はほぼ2輪用の設計思想を踏襲する
目新しさは静粛性のためにタイミングベルトを採用したくらい
なんの変哲もない360度クランクのOHCツインエンジンである
しかしそこはホンダのエンジンである。
9000回転のレッドゾーンまでキッチリ回り、更に上まで回ろうとする。
そこで発するエンジン音はバイクそのもの
自分はCS92という古いホンダの125ツインを持っている
そのエンジンと音だけでなく、振動やその伸びキリ感までそっくりである
イタ車のような刺激的な快音とはまた違う、ホンダミュージックが楽しめる
自分のZの中味はノーマルではないらしい
そのエンジンのピークパワーはアバルト695を超えているだろう
ノーマルのチンクのレッドゾーンは4500回転程度、それも4000回転以上で高速巡航するとベアリングが焼きつく可能性があるという
ホンダの360は9000回転の全開走行でも高速巡航は問題ないという(自分は巡航時はMAX8500回転でセーブするが)
チンクを引き合いに出すまでもなく、こんな高回転で巡航可能で、街中でも普通に走れるエンジンなんて、当時他には無かった
世界的にみても第一級のエンジン設計技術をこの時点でホンダは持っていた
もう一つで魅力のデザイン
フロントはラジエターグリルを独立させてスポーティに
ボンネットの縦長のプレスを含め、どこかフェアレディZに似ているのは、まったくの偶然ではないだろう
最も特徴的なのは黒枠のリアハッチ
水中メガネと比喩されるデザインが最大の特徴となる
当時ハッチバックは、商用車のバンをイメージされることから、自家用車に採用されるケースは稀だった
パッケージにこだわったBMCミニですら、ハッチバックでなく独自のトランクを持つ
独立のトランクが自家用車の証だったのである
そんな時代にロングルーフと組み合わせたハッチバック
リア席の頭上空間とクーペの格好良さとハッチバックの使い勝手を持つ
今時でいえばシューティングブレイクである
ホンダZのデザイン凄いのは、このシューティングブレイクデザインを世界に先駆けて採用したことにある
問題は、デザインを構成するボディ
その剛性である
ユルユルのボディはコーナーでボディが変形するのがわかる
今履いているブリジストンのスニーカーですら当時のタイヤからすればハイグリップ
それにミューの高い最近の舗装にボディが耐えられない
コーナーでドアの隙間が拡大し路面が見えることもある
そんなボディではサスは機能しない
サスペンションの構造以前の問題である
エンジンを買ったらボディが付いてきた
ホンダ車でよく言われる笑い話しは本当である
ほぼ同じ大き、重さのチンクエチェントの方がボディ剛性は圧倒的に高い
エンジンとは逆にボディ設計のノウハウは当時のヨーロッパ車に遠く及ばない
とはいえ走り始めてしまえば、そんなことどうでもよくなる
チンクがタイヤにかかるGを感じながら曲がるのに対して
ホンダZは行きたい方向にハンドルを切ってエンジン全開(笑)
駆動力で強引に引っ張られ曲がっていく
舗装路でも未舗装ラリーのような走り方となる
速く走るとギャップで飛ばされて綱渡り的になる
これはこれで楽しいのも事実
完璧なクルマが必ずしも楽しいわけではない
とはいえホンダZのエンジンをチンクに積んだら楽しいだろうなぁ〜なんて妄想もわく
ホンダZに限らずサブロクは全開走行を日常スピードで楽しめる
それを操る楽しさはトヨタ2000GTでもフェラーリでも味わえない
そして、そんな走りはみんなの笑顔を誘う
サブロクは日本の誇るべきファンカーである
◯部品供給
サブロクに限らず日本車の旧車のネックは部品供給である。
メーカーからに部品供給がないのは当然として、日本でしか販売されなかったモデルはサードベンダーが作る部品も限定的である。
アメリカやヨーロッパ(特にイギリス)はDIYでクルマをイジる文化がある。
個人向けにそれなりに大きなマーケットが存在する。
そんなマーケットに向けてサードベンダーから部品が供給される。
最近は中国製の部品が多く品質が落ちたとしても無ければ話しにならない。
サブロクの中で部品が確保しやすいのは、スバル360とホンダN360&ライフである。
この3台は元々販売台数が多かったことが幸いして現存数もそこそこある。
小ロット生産でギリギリ採算のあうマーケットになっている。
サブロクは維持費が安く小さいので納屋に眠ってる固体があり、まとめて中古部品が出てくるケースもある。
それでもヨーロッパの4台に比べれば悲劇的なくらい部品の確保が難しい。
国産系の旧車ショップではユーザー自身で部品を持ち込めば修理します.....っというところもある。
なので、サブロクを買うなら完動品で欠品の少ない個体を選ぶのが絶対となる。
買ってからレストアしようとすると部品が揃うのに何年かかるかわからない。
このシリーズは、まだまだ続きますd(^_^o)