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イイね!
2020年08月09日

戦争の悲惨さを語り継ぎたい

父親の実体験を本人が文章にしたものです。読み込みをするため字起こしします。よろしかったら読んでください。

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戦争の悲惨さを語り継ぎたい

 最近領土問題をめぐり近隣二国との関係がギクシャクし、戦争の危機さえ叫ばれるようになってきた。しかし決して不幸な過去の歴史を繰り返してはならない。
 それにつけて思い出すのは、敗戦の年のあの暑い夏である。当時八歳、国民学校三年生であった私は、両親とすぐ上の兄との四人で、和歌山城の直ぐ下に住み、米軍機B-29襲来の警戒警報に脅かされる毎日であった。
 そんな中で運命の時、七月九日の夜がやってきた。
   シュルシュル!バーン! シュルシュル!バーン!
 焼夷弾が雨あられのように落下する音と、その爆発音が不気味に響く。
 木と紙でできた家々はことごとく焼かれ、和歌山市の中心部は火の海と化した。私達一家は、離れ屋敷に掘ってあった防空壕の中で、近所の人たち数名と震えながら空襲を避け、息をつめて潜んでいた。
   シュルシュル!バーン!
 防空壕の扉に火が付いた。壕の中は阿鼻叫喚。全く地獄の中に放り込まれた状態。誰もが死ぬかもしれないと恐怖のどん底で叫び声が渦巻く。
   わー!わー! ナムアミダブツ!ナムアミダブツ!・・・・・・・!
 家族四人はやっと焼ける防空壕を出た。父の咄嗟の判断で、父と私、母と兄の二手に分かれ、爆撃の続く中を安全な場所を求めて必死に逃げ回った。
   ゴー ゴー ゴー 恐ろしい炎の音が迫ってくる。
 大火の熱風が吹きまくり、私は防空頭巾を吹き飛ばされた。その私をかばった父は、飛来してきた得体の知れぬ固いものによって大怪我を負い、大量の出血が止まらない。傷を縛る余裕もなく、二人は付近で唯一の鉄筋の建物に逃げ込んだ。その直後、先ほどまでいた広場で大きな竜巻が起こり、人はもちろん消防車までが空高く放り上げられ城のお堀に落ちたのである。そして多くの人々が尊い命を失った。
 私たちは何とか生き延びた。長い一夜が開け、町中の家屋がすべて焼け落ちたのを呆然と眺めた。我が家の焼け跡にも沢山の焼夷弾が落とされ礎石だけが残っていた。焼け跡や道路など至る所に死体がころがり、まるで魚市場に並べられたマグロのようだった。中でもうつ伏せに死んだ母親らしい人の背中に、丸くチョコンと乗っていた赤子の遺体が今でも瞼の裏に焼きついている。この凄惨な修羅場は一生心に焼き付いていて離れないと思う。
 私達一家四人は、父が大怪我をしたものの、辛うじて生き延びることができた。これも一つの運命であろう。今生きていられる事は亡くなった方々にはすまないが幸せと言えるのだろう。
 その後、母の実家への緊急避難、大怪我をした父の長い療養、さらには田舎での疎開生活、衣食住の極端な不足、さまざまな不自由さ、兄二人の戦死など、幼かった私には飛び飛びの記憶しかないが、父母にとっては耐えがたい悲しみと、生活を支える辛さの連続であっただろう。敗戦後の惨めな生活は、現在の生活では想像もつかぬものであったと思う。
 日本を再び悲劇の一九四〇年代に引き戻してはならない。もちろん隣国を侵略することがあってはならないし、隣国から攻められ、自分の国が滅亡することになってはならない。疑心暗鬼で際限ない軍拡競争を重ね恐怖の均衡で平和を保つような関係であってはならない。万一大国同士が戦争を始めれば、今度は原子爆弾の応酬になり勝ち負けのない人類の滅亡にも繋がりかねない。
 隣人との小さな境界線争いでも経験するように、お互いの信頼感がなければ反目はエスカレートする。まして相手は被害者としての立場を主張する隣国。少しの行き違いでも相手のナショナリズムに火をつける危険もある。国と国との関係は互いに相手を気遣い、政府同士ないし国民同士が粘り強く信頼関係を構築する以外に解決の道はないだろう。ここには難しい国際問題も横たわるけど何とか好転できるようにしたい。
 時は移り戦後ほぼ七〇年、戦争の悲劇を体験した人は減り、当然被災体験から平和の尊さを語れる人も数少なくなってしまった。これからの世代には戦争体験が全くないから、意識して過去に学んでほしいと思うし、私たちも戦争体験をできるだけ長く語り継ぎ、新しい時代に即した望ましい国際関係を築いて行かねばならないと思う。  (二〇一三年九月「ふみの会」寄稿)
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Posted at 2020/08/09 08:28:10

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この記事へのコメント

2020年8月9日 10:06
興味深く読ませていただきました。
うちの父方の叔父も毎日新聞の記者でしたが自費出版で子供の頃の戦争体験を本にしていました。
また、母方の祖母に聞いた話では、ちょうど食事支度中に空襲があり、逃げて戻ったところ、お釜にセットした米が長けていたという嘘のような話を聞きました。
残念ながら祖母はすでにおらず、叔父も体が弱っています。
母はまだ終戦時2歳なのでほとんど記憶は無いでしょうから、こういった生の声を教えてもらえる機会は少なくなっているのは仕方ありません。
でも、今の世界情勢見ていると怖いですよね…。
日本の上を飛び交うミサイルは当たり前のようにあるでしょうし、標的にされたら対抗できないでしょうし。
キリキリしている今の状況は不安です。
とても貴重な文章ありがとうございました。
コメントへの返答
2020年8月9日 13:34
こんにちは
読んでいただきましてありがとうございます。
少しでも世の中が平和に向かうように願いながら書き込みさせていただきました。父親も当時のことは辛いようでめったに話してくれないです。平和ボケしないように気をつけたいと思います。
2020年8月9日 18:48
こんばんは!
初投稿させて頂きます。御父上の実体験を残して伝えられる...素晴らしいことです。
私の両親(家族)ですが、この5年で3人(嫁の両親と自身の父親)亡くしました。
嫁の父親は中国で終戦を迎え、武装解除後シベリアで5年抑留になりましたが、亡くなるまで何も語る事はありませんでした。
自分の父親は、学徒動員で当時高等学校生は勤労奉仕として、北海道で畑仕事をしていた様ですがやはり当時について語る事はありませんでした。
最近まで、当時の父親の滞在先から野菜が届いていました。
母親達は当時小学生(高等小学)で、戦闘機の機銃掃射に遭った事をよく話してくれました。
只々、食べる物が無く何時もお腹を空かしていた。
伝える事を拒絶する。何が彼らを変えてしまったのか? 今、父親の世代を生きている自分に大きな問いかけになっています。
コメントへの返答
2020年8月9日 19:50
こんばんは
ありがとうございます。
本当に辛かったことを語ること自体が苦しみのようでして、父親もめったに話してくれません。
最近の政治家には当時のことの教育が不足していたり、そもそも戦争犯罪者の子孫が危険な思想をこっそり受け継いでいたりするそうです。
苦行であっても戦争体験を伝えることが新しい世代の方々に良いことだと思っているそうで、真剣にお願いすれば伝えていただけると思います。
2020年8月10日 0:41
こんばんは!

母が戦争経験してるのですが、何分幼い頃で記憶がほぼ無いらしいです。
ただ空襲の火の粉が飛んできて軽い火傷したとかで、今も痕が残っています。

母の母(祖母)は間もなく他界したそうで、祖父が再婚して今に至ると聞いています。

戦争の悲惨さは忘れてはいけない事ですね。

コメントへの返答
2020年8月10日 5:07
おはようございます。
正直私は命の危険を感じて逃げ回った経験はありません。戦った経験もありません。
お年寄りの実体験に基づく教訓は貴重なものだと心から思います。戦争を起こすような愚行は生涯してはならないです。隣人はお友達、仲間にしたいと思います。
2020年8月20日 8:51
自分の祖父母は、戦争の話は一切しませんでした。
多分 祖父母は、言うのも辛いのを見てきたのだと思います。祖父母は他界していますが言うのも辛かったのだと思います。
コメントへの返答
2020年8月20日 9:04
おはようございます。
私の父親もめったに話してくれません。書かせていただいた文面は気持ちがこもっていたのでそのままの文面を載せさせていただきました。
辛い思いをされた方がきっとたくさんおられるのだと思います。
2020年9月12日 0:40
大変貴重な文章、ありがとうございます。
ただ、どうしても解せないのが、焼夷弾って、日本の木や紙の家屋をよく燃やすための、軍事目標向けじゃない、非戦闘員の家屋の攻撃用ですよね。チェ・ゲバラが広島の原爆記念館をみて、どうしてアメリカに仕返ししようと思わないんだって言いましたが、民間人向けの攻撃ですよね。アメリカの攻撃が非人道的で酷いんですよね。
侵略戦争を日本が始めたから?
今、元アメリカ大統領のフーバーの「裏切られた自由」を読んでいますが、ルーズベルト大統領が、ABCD包囲陣で日本を経済的に追い込んで、ハルノートで最後通牒とし、近衛首相の戦争を避ける首相会談を拒否してますので、日本がアメリカに攻めざるを得ないように追い込んでる。そんな政治の裏側をえぐった本なんかを読んでると。いかに平和・共存共栄が難しいかって思います。
植民地支配を何百年ってやってきた欧米が日本を侵略戦争って、国と国とが覇権を争ってるだけで、おなじ穴のむじなでしょって笑えます。
マッカーサーが、茶番の東京裁判で「だから戦争は勝たなきゃいけないんだ!」ってその通りかなって。
アメリカみたく、ずっと戦争してる国もどうかと思いますが。
いろんな話の通らない、領土を広げたい隣国とのお付き合いの中で、戦争しないで、平和・共存共栄ってどうしたら?
経済・文化、人との交流でつながって、Win×Winの関係でうまくやっていけば、戦争って避けられるのかな?
コメントへの返答
2020年9月12日 6:40
おはようございます。
ヒトは競争しながら成長してきたことは事実です。本能的な行動に頭脳が成長してきたら武器を取って殺し合う。昔も今も何も変わりません。殺し合は多くなりすぎた動物が採る行動で人間は多くなりすぎたのかもしれません。
例えばですけど、私は自動車を運転するときに周囲の人たち(自動車、自転車、歩行者)を全て自分の肉親だと思って運転しています。そうしたら余程のことでも許容できます。相手のうっかりも許容できるよう努力します。
割り込みとか先を急ぐとかやりたい方には道をお譲りしてやっていただきます。別に腹は立たないです。きっと日常生活で要らぬストレスを受けているのだろうと同情します。
たまに高速道路の料金所合流で後ろから煽ってくる四角い大きなファミリーカーがありますけど、WRXの全力加速を見せてあげると気持ちが折れるようで大人しくなります。人の気持ちなんてそれぐらいのことですので人種が少し違ってもヒトという仲間なんですから絶滅の道を歩かず仲良く共存共栄したいと思います。

プロフィール

「またリアクターの電極を編み始めました。
この時間が結構好きです。」
何シテル?   08/18 22:53
トムイグです。よろしくお願いします。 おやじです。 スキーばかです。 ここ10年ほどアルミテープチューンにハマっています(笑)
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