2005年03月24日
ラジエター水チューンとは
ラジエターに入れると、燃焼室内の燃料のクラスターを細分化し、理想的な燃焼をするというオカルトグッズがあります。
まあ、オカルトグッズの説明と言うのは、化学的、物理学的、電磁気学的に成立していないし、日本語としても意味不明なんですが、良く使われるキーワードに「マイナスイオン」「クラスター」「遠赤外線」「電磁波」などがあります。
なので、こうしたクッズを検証するには、こうした言葉自体を理解していなければ、文系の人などは「何だか分からないけど良さそう」と言う印象を持つことになります。
まあ、冷静に考えて燃費が10%も20%も向上する物を、メーカーがほっておくわけは無いのですが、お金を車に使いたくてウズウズしている人には素晴らしい物に映ってしまうようです。
まず、マイナスイオン・・・もう信じている人もいないのでしょうが、一時期あるある大辞典などで、きっとここには書けないような経緯があって、取り上げたために流行った言葉は、化学で習ったマイナスイオンとは別物なので、まず製品説明ではマイナスイオンをどのように使っているかを判断する必要があります。
テレビでも結局最後まで、マイナスイオンとは?について説明しなかった(出来なかった)ようですが、当時マイナスイオン測定器としてテレビに登場していた物を見て、単なる湿度センサを使った物だとか、酸素センサを使った物だと憶測が飛びました。
当時、家電メーカーで開発を行う友人は、バリバリの理系なのでマイナスイオンなどというバカげた物は否定していましたが、会社からマイナスイオンを出す物を作れと言われ、会社の理不尽さとサラリーマンの辛さを感じながらも、せめてもの良心によって他社の多くの製品と同じく、グロー放電による空気のプラズマ化によってオゾンが出るものを設計しました。
ラジエターグッズに出てくる説明では、超プラスイオン(超って何??)なので、冷却水路にプラス電荷が現れ、空気中の酸素はマイナスイオンだからシリンダー壁にマイナス電荷が出て電流が流れると・・・??
空気中の酸素はマイナスイオンなんですか??初めて聞きましたよそんなこと。
そして、電気が流れて燃焼室の混合ガスに高速振動を与えると、もう無茶苦茶(^^;
それに、これも学校で習ったように、例えば硫酸ならば水に溶けて、2H(+)とSO4(2-)に別れると言うように、もう片割れが存在し、超プラスイオンがあるならば超マイナスイオンもあるはずです。
そして、超プラスイオンが電子をもらって還元されるならば、何かの物質に戻るはずですがそれって何でしょう? その時にはマイナスイオンも釣り合うように、電子を放出するはずですがそれはどうなるのでしょう? そうすると、それぞれの物質になって現れるはずですが何が出来るのでしょう? このラジエター水は長いこと使えるそうですが、書かれているとおりならプラスイオンだけでどれだけの電荷があるのでしょう? そんな物質ってどんな状態か説明を聞いてみたいです...と疑問は尽きません。
さらに、このガスの高速振動によってクラスターが小さくなるから燃焼効率が高まると・・・魔邪なら「はぁ? クラスター?」とぶったぎるところでしょう。
液体のクラスターも測定は出来ないので、細かくなるなんて書いてある商品は?です。
このクラスターの話の発端は、元日本電子の松下和弘氏がNMRの測定結果をもとに、1989年1月に発表した論文(36.44MHzの17O-NMRスペクトルを27℃で測定した結果、水の酸素核の共鳴吸収線の線が変化すると言うような研究内容)に端を発するのですが、その後の研究会でNMRで測定できるのは、T1やT2であってクラスターサイズそのものを測定しているのではないと言う報告がされ、研究者の間では記憶から消えました。
しかし、いまだに浄水器などではこの最初の論文から引用したと思われる事がかかれ、どのような白昼夢を見たのか知らないが、水道水のクラスターは何個で、美味しい水は何個なんて書かれている所まであります。
いや、仮に測定なんて出来なくても、電磁波でも磁石でも遠赤外線でも放射線でもガソリンに当てて燃費が良くなるならば自動車メーカーは採用します。
まあ、このクラスターの話は、ネット上で検索してもほとんどが根拠の無い事がそれらしく書かれているので、一般の人には正確な情報を掴むのは難しいかもしれません。
まだ、食品関係、化粧品関係ではクラスターについておいしさや、効能と関連付けて研究をしている人たちがいます。ノーベル賞を受賞した田中さんの開発した質量分析法などをもとに、特定の物質についての分子の固まり具合を測定する方法はあるのですが、水、ガソリンなどのクラスターに関する記述は、現在のところ根拠無しと見て間違いありません。
遠赤外線は、ガソリンに当たると暖まりますねぇ。でも、美味しくなったりクラスター小さくなんてことは無いです。ガソリンの温度が上がれば、気化し易くなりますが、それほどのエネルギーは遠赤外線に無いですし、ガソリンはパーコレーションを抑えるために、わざわざ冷やすくらいだからメーカーもそんなことやらないですね。
仮に、冷却水路から遠赤外線が出たとして、エンジンは熱くなっていて、冷却水はエンジンを冷やすために流れているのに、燃焼室のガソリンを暖めるって発想が...
電磁波は、悪者にされたり良いと言われたり大変です。
こうしたグッズの説明では、何気なく使われるのでしょうが、電磁波とは電界と磁界が振動して波として伝わるもので、例えば交流電流が流れた際に発生しまするものです。波長によって、γ線、x線、紫外線、可視光線、赤外線、電波などになりますが、どんな波がでているのでしょうか?
そもそも、このラジエター水でどこで電磁波が発生するのかが疑問です?
仮に説明の通りに冷却水路とシリンダー間で電流が流れても、エンジンブロックである、鉄やアルミの中では電界、磁界がどうなるかなんて高校生の時に習いましたが、この商品説明を書いている人はそんなことも忘れているのでしょうか。
こうした言葉を理解して説明を読むと、もう、何を言っているのかさっぱり分かりません。
ラジエターには、変な物を入れないで、ちゃんと2年毎に交換してあげるようにしましょう。昔のラジエター液は、かなり毒性の強い、防錆剤などが入っていましたが、今の物はそうした強力なものは使われていませんので、多少冷却効果は落ちますが50%濃度の物を定期的に交換するのが、エンジンを長持ちさせる秘訣でしょう。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/03/24 11:55:32
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